最も散見される髄膜炎の症状は頭痛、項部硬直であり、発熱や錯乱、変性意識状態、嘔吐、光を嫌がる(羞明)、騒音に耐えられなくなる(音恐怖)などといった症状を伴う。また、ビオー呼吸と呼ばれる、間欠的に無呼吸の時間が現れる特殊な呼吸の状態が一時的に見られる場合もある。小児例では不機嫌や傾眠などの非特異的症状が目立つものの、大泉門が閉鎖していない場合は膨らむことがある。
皮疹がみられる場合、髄膜炎の特定の病因を示唆している場合がある。例えば髄膜炎菌性髄膜炎には特徴的な皮疹がみられる[1][4]。
脊柱管に針を刺入し、脳および脊髄を包む脳脊髄液(CSF)のサンプルを採取する腰椎穿刺によって髄膜炎が陽性か陰性かを診断する。CSF検査は医療研究機関で実施されている[3]。
急性髄膜炎の一次治療は抗生物質を速やかに投与することであり、抗ウイルス薬を用いることもある。炎症の悪化から合併症を併発するのを予防するため、副腎皮質ホルモンを投与してもよい[3][4]。髄膜炎は、とりわけ治療が遅れた場合に難聴、てんかん、水頭症、認知障害等の長期的な後遺症を遺すことがある[1][4]。髄膜炎のタイプによっては(髄膜炎菌、インフルエンザ菌b型、肺炎レンサ球菌、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ウイルス感染に起因するものなど)予防接種によって予防できるものがある[1]。
徴候と症状
臨床像項部硬直 テキサスで発生した髄膜炎の流行(1911?12)
成人の髄膜炎に最も多い症状は重度の頭痛であり、細菌性髄膜炎の90%近くに認められる。次いで項部硬直(首の筋緊張、硬直により首を他動的に前へ曲げられなくなる)がみられる[5]。項部硬直、急な高熱、意識障害を髄膜炎の3徴というが、この3徴が全てみられるのは細菌性髄膜炎患者の44 - 46%程度に過ぎない[5][6]。この3徴のいずれもみられない場合、髄膜炎の可能性は極めて低い[6]。これ以外の徴候としては、羞明(明るい光を嫌がる)や音恐怖(大きな音に耐えられない)が挙げられる。
ただし、乳幼児では先に挙げたような症状がみられないことが多く、不機嫌な様子や、具合が悪そうな様子を見せるにとどまることがある[1]。6か月までの乳児の場合、泉門(乳児の頭頂部にある柔らかい部分)に膨隆がみられることがある。これより重症度の低い乳幼児の髄膜炎を診断する際には、脚の痛みや末端部の冷え、肌の色の異常などが手掛かりとなる[7][8]。
項部硬直は成人の細菌性髄膜炎患者の70%にみられる[6]。このほか、ケルニッヒ徴候やブルジンスキー徴候も髄膜症を示す徴候である。ケルニッヒ徴候を評価する際には、患者を仰臥位に寝かせ、股関節および膝関節をそれぞれ90度に曲げる。膝関節を他動的に伸展させようとすると痛みのため伸展制限が出る場合、ケルニッヒ徴候陽性である。また、首を前屈させると膝関節と股関節が自然に屈曲する場合、ブルジンスキー徴候陽性である。いずれも髄膜炎のスクリーニングによく用いられるが、感度は限定的である[6][9]。一方で髄膜炎に対して非常に高い特異度を示し、別の疾患ではほとんどみられない[6]。
これ以外にも、発熱と頭痛を訴える患者にはjolt accentuation(ジョルトサイン)と呼ばれる手技が髄膜炎の有無を判断する助けになる。患者に「イヤイヤをする」ように頭部を左右に水平方向にすばやく回旋・往復させたときに頭痛が増悪しなければ、髄膜炎の可能性は低い[6]。これは感度90%、特異度60%ともいわれ、除外診断に極めて有用である[10](髄膜炎での感度 97%, 特異度 60%との報告もある[11])。
Neisseria meningitidis (髄膜炎菌)という細菌によって惹き起こされる髄膜炎(髄膜炎菌性髄膜炎)は、初期に急速に広がる点状出血性皮疹によってこれ以外の髄膜炎と区別できる[7]。この皮疹は、胴、脚、粘膜、結膜、(時に掌や足の裏)にみられ、多数の小さく不定形な紫色ないし赤色の点(点状出血)である。一般的に紫斑であり、指やガラスのコップで押さえても赤みは消失しない。