脳脊髄液中グルコース濃度は正常値だと血中濃度の40%を超えるが、細菌性髄膜炎では典型的に低くなる。そこで脳脊髄液中グルコース濃度を血中グルコース濃度で割って表す(脳脊髄液中グルコース濃度:血清中グルコース濃度)。この比が?0.4であると細菌性髄膜炎であることを示す[27]。新生児では通常脳脊髄液中グルコース濃度が成人より高いため、この比が0.6 (60%)より小さい場合を異常とする[3]。
脳脊髄液中乳酸が高値を占めす場合、白血球数の高値と同じく細菌性髄膜炎の可能性が高い[27]。乳酸値が35 mg/dlより低く、検査前に抗生物質を投与していない場合、細菌性髄膜炎を除外できる[31]。
さまざまな種類の髄膜炎を鑑別するため、これ以外にもさまざまな試験法が使用される。肺炎レンサ球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、Escherichia coli、B群レンサ球菌を原因とする髄膜炎ではラテックス凝集試験陽性となる。その結果によって治療法が変わるようなものではないためルーチン使用は推奨されていないが、他の試験では診断ができない場合に使用することができる。
同じように、グラム陰性細菌による髄膜炎ではリムルス試験が陽性となるが、これも他の試験法が有用でないような場合に限り実施される類のものである[3]。
ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)は、脳脊髄液中に細菌またはウイルスのDNAが存在するかどうかを確認するため、細菌のDNA断片を増幅させる手法である。病原体のDNAのほんの断片さえあれば確認できるため、感度、特異度ともに高く、細菌性髄膜炎の細菌を特定し、ウイルス性髄膜炎のさまざまな原因(エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス2型、ワクチン未接種の場合の流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)等)を識別する助けとなる[12]。
ウイルス性髄膜炎には血清学(ウイルスに対する抗体の特定)も有用である[12]。結核性髄膜炎が疑われる場合、サンプルは感度の低いチール・ネールゼン法および非常に時間がかかる結核菌培養に回されることになるが、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が広く用いられるようになってきている。[32]
クリプトコッカス髄膜炎の診断にはCSFの墨汁染色が低コストで使用できるが、血液またはCSFのクリプトコッカス抗体検査の方が感度が高く、特にAIDS患者には顕著である[33][34]。
診断、治療ともに困難となるのが、抗生物質投与後(推定副鼻腔炎の加療によるものなど)に髄膜炎の症状がみられる髄膜炎の「不完全治癒」状態である。この場合、CSF所見はウイルス性髄膜炎に似るが、ウイルス性であると断定できるエビデンス(PCRによるエンテロウイルス陽性等)が得られるまでは抗生物質による治療を続ける必要がある[12]。
剖検細菌性髄膜炎の病理組織学:肺炎球菌性髄膜炎患者の剖検例。多数の好中性顆粒球を認める炎症が軟膜に浸潤している。
患者の死後に髄膜炎が診断される場合もある。剖検では通常、髄膜の軟膜層およびクモ膜層に広範囲に及ぶ炎症が認められる。好中性顆粒球が脳神経および脊髄のほか脳脊髄液および脳底部にも広がっていることが多く、膿に包まれていることもある。これは髄膜の血管にも認められる[35]。 髄膜炎の原因のいくつかに対しては、予防接種による長期的な予防や抗生物質による短期的な予防が可能である。行動による予防も効果的である。 細菌性髄膜炎およびウイルス性髄膜炎は感染性であるが、いずれも風邪やインフルエンザほど強い感染性はない[36]。キスや至近距離でのくしゃみ、咳などの密接な接触があった時に気道分泌物の飛沫から感染することはあるが、髄膜炎患者と同じ空間にいただけで空気感染することはない[36]。ウイルス性髄膜炎はエンテロウイルス感染によることが多く、糞便が感染源となることが非常に多い[36]。感染につながるような行動を避けるだけで感染リスクを減少させることが可能である。 1980代から多くの国々で子供の定期予防接種プログラムにインフルエンザ菌b型ワクチン 同じように、流行性耳下腺炎ワクチンによってムンプス髄膜炎の発症数が大幅に減少している。ワクチン未接種時は、おたふくかぜ患者全体の15%がムンプス髄膜炎を発症していた[12]。 髄膜炎菌A、C、W135およびY群に対しては髄膜炎菌ワクチンが存在する[39]。髄膜炎菌C群に対する予防接種を実施している国では、この細菌による症例数が大幅に減少している[37]。また、現在は4種を混合した4価ワクチンが存在する。ハッジ(イスラム世界におけるメッカ巡礼)に参加する際には髄膜炎菌4価ワクチン(ACW135Y)接種がビザ取得の要件とされている。[40]
予防
予防行動
予防接種