髄膜炎
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髄膜炎が疑われる場合、血液培養と同時に血液検査を実施し、C反応性蛋白全血球計算等を炎症マーカーとして利用する[3][26]

髄膜炎の診断と除外に最も重要とされるのは、腰椎穿刺(LP、spinal tap)による脳脊髄液の分析である[27]。ただし、脳内に占拠性病変(脳腫瘍や膿瘍など)があるか頭蓋内圧(ICP)が高値を示す場合、脳ヘルニアの恐れがあるため腰椎穿刺は禁忌である。患者に占拠性病変かICP亢進のリスクがある場合 (最近頭部に怪我をした、免疫系に問題がある、神経系の徴候がみられる、ICP亢進のエビデンスがある等)、腰椎穿刺の前にCTまたはMRI撮影が推奨される[3][26][28]。これは成人患者の45%に該当する[4]

なおガイドラインによれば、LP前にCTまたはMRIが必要な場合やLPが困難である場合、治療の遅れを防ぐためまず抗生物質を投与すべきであり[3]、特に30分以上治療が遅れる場合は強く推奨される[26][28]。また、のちに髄膜炎合併症を評価するためCTまたはMRIスキャンを実施することが多い[1]

頭部MRIでは髄膜の異常増強効果で髄膜炎の診断の手がかりになるとされている。異常増強効果は硬膜、硬膜下、くも膜が主体のDA型(dura-arachnoid pattern)とくも膜下、軟膜が主体のPS型(pia-subarachnoid space pattern)が知られ、それぞれびまん性と限局性が知られている。
DA型限局性
髄膜腫などのdual tail signや悪性腫瘍の硬膜転移、開頭術やシャント術後、サルコイドーシス、関節リウマチ、肥厚性硬膜炎、脳出血や脳梗塞や脳静脈瘻近傍の硬膜、頭蓋の腫瘍や炎症周囲の硬膜などで認められる。
DAびまん型
開頭術やシャント術後、くも膜下出血後、がん性髄膜炎を含む髄膜炎や特発性低髄液圧症候群などで認められる。
PS限局型
サルコイドーシス、sturge-weber症候群やリウマチ性髄膜炎(軟膜炎)などで認められる。
PSびまん型
くも膜下出血後、各種薬剤の髄注、がん性髄膜炎を含む髄膜炎、サルコイドーシスなどで認められる。

重度の髄膜炎では、血中電解質のモニタリングが重要であるとされる。例えば細菌性髄膜炎では脱水や抗利尿ホルモン (SIADH)の不適合分泌、過度な点滴静脈注射などのいくつかの要因が絡んで低ナトリウム血症を来たす例が多い[4][29]
腰椎穿刺培養した髄膜炎菌のグラム染色 グラム陰性(ピンク)を示し、対になっているものが多い

腰椎穿刺では患者を横向きに寝かせ、局所麻酔後、脳脊髄液(CSF)を採取するため針を硬膜嚢(脊髄を包む嚢)に挿入する。針を差し込んだらまずマノメータを用いてCSF初圧を測定する。初圧は通常6?18 cm water (cmH2O)で、[27]細菌性髄膜炎ではこれより高値を示すことが多い[3][26]クリプトコッカス髄膜炎では頭蓋内圧が著明に亢進する[30]

髄液の外観によって感染の性質を確認することができる。白っぽく濁っている場合、蛋白や白血球および赤血球、細菌数の高値を表し、細菌性髄膜炎を示唆する[3]

このCSFサンプルを用いて白血球赤血球の存在および種類、蛋白量およびグルコース 濃度を調べる[3]。細菌性髄膜炎の場合グラム染色を実施する場合もあるが、細菌が確認されないからといって細菌性髄膜炎を除外できるわけではない。なぜなら細菌が確認されるのは細菌性髄膜炎の60%にとどまるためであり、サンプル採取前に抗生物質を投与している場合、この数値はさらに20%下がる。グラム染色はリステリア症をはじめとする特定の感染に対しても信頼性が低い。サンプルの微生物培養はこれより感度が高い(症例の70?85%で微生物を確認できる)が、結果が出るまで48時間かかる[3]。優勢な白血球の種類によって細菌性(通常、好中球優勢)であるかウイルス性(通常、リンパ球優勢)であるかがわかる(表を参照)[3]。ただし感染の初期段階では、これは必ずしも信頼に足る指標とは言えない。さほど一般的ではないが、好酸球が優勢だと寄生虫や真菌等が原因であることを示している[21]

脳脊髄液中グルコース濃度は正常値だと血中濃度の40%を超えるが、細菌性髄膜炎では典型的に低くなる。そこで脳脊髄液中グルコース濃度を血中グルコース濃度で割って表す(脳脊髄液中グルコース濃度:血清中グルコース濃度)。この比が?0.4であると細菌性髄膜炎であることを示す[27]。新生児では通常脳脊髄液中グルコース濃度が成人より高いため、この比が0.6 (60%)より小さい場合を異常とする[3]

脳脊髄液中乳酸が高値を占めす場合、白血球数の高値と同じく細菌性髄膜炎の可能性が高い[27]。乳酸値が35 mg/dlより低く、検査前に抗生物質を投与していない場合、細菌性髄膜炎を除外できる[31]

さまざまな種類の髄膜炎を鑑別するため、これ以外にもさまざまな試験法が使用される。肺炎レンサ球菌髄膜炎菌インフルエンザ菌Escherichia coliB群レンサ球菌を原因とする髄膜炎ではラテックス凝集試験陽性となる。その結果によって治療法が変わるようなものではないためルーチン使用は推奨されていないが、他の試験では診断ができない場合に使用することができる。

同じように、グラム陰性細菌による髄膜炎ではリムルス試験が陽性となるが、これも他の試験法が有用でないような場合に限り実施される類のものである[3]


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