髄膜炎
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

この3徴のいずれもみられない場合、髄膜炎の可能性は極めて低い[6]。これ以外の徴候としては、羞明(明るい光を嫌がる)や音恐怖(大きな音に耐えられない)が挙げられる。

ただし、乳幼児では先に挙げたような症状がみられないことが多く、不機嫌な様子や、具合が悪そうな様子を見せるにとどまることがある[1]。6か月までの乳児の場合、泉門(乳児の頭頂部にある柔らかい部分)に膨隆がみられることがある。これより重症度の低い乳幼児の髄膜炎を診断する際には、脚の痛みや末端部の冷え、肌の色の異常などが手掛かりとなる[7][8]

項部硬直は成人の細菌性髄膜炎患者の70%にみられる[6]。このほか、ケルニッヒ徴候ブルジンスキー徴候も髄膜症を示す徴候である。ケルニッヒ徴候を評価する際には、患者を仰臥位に寝かせ、股関節および膝関節をそれぞれ90度に曲げる。膝関節を他動的に伸展させようとすると痛みのため伸展制限が出る場合、ケルニッヒ徴候陽性である。また、首を前屈させると膝関節と股関節が自然に屈曲する場合、ブルジンスキー徴候陽性である。いずれも髄膜炎のスクリーニングによく用いられるが、感度は限定的である[6][9]。一方で髄膜炎に対して非常に高い特異度を示し、別の疾患ではほとんどみられない[6]

これ以外にも、発熱と頭痛を訴える患者にはjolt accentuation(ジョルトサイン)と呼ばれる手技が髄膜炎の有無を判断する助けになる。患者に「イヤイヤをする」ように頭部を左右に水平方向にすばやく回旋・往復させたときに頭痛が増悪しなければ、髄膜炎の可能性は低い[6]。これは感度90%、特異度60%ともいわれ、除外診断に極めて有用である[10](髄膜炎での感度 97%, 特異度 60%との報告もある[11])。

Neisseria meningitidis (髄膜炎菌)という細菌によって惹き起こされる髄膜炎(髄膜炎菌性髄膜炎)は、初期に急速に広がる点状出血性皮疹によってこれ以外の髄膜炎と区別できる[7]。この皮疹は、胴、、粘膜、結膜、(時に掌や足の裏)にみられ、多数の小さく不定形な紫色ないし赤色の点(点状出血)である。一般的に紫斑であり、指やガラスのコップで押さえても赤みは消失しない。この皮疹は髄膜炎菌性髄膜炎に必ずみられるものではないものの、比較的特異的といえる。ただし、時に他の細菌による髄膜炎にも発現することがある[1]

髄膜炎の原因を探る手掛かりとしては、この他に手足口病性器ヘルペスにみられるような皮膚の徴候が挙げられ、いずれもさまざまなウイルス性髄膜炎に認められる[12]
初期の合併症Charlotte Cleverley-Bisman 重度の髄膜炎菌性髄膜炎を発症した乳児。点状出血性皮疹が悪化して壊疽に至り、四肢切断を余儀なくされた。その後回復し、ニュージーランドで行われた髄膜炎予防ワクチンキャンペーンのポスターチャイルドとなった。

髄膜炎の初期段階で、別の問題が生じることがある。これには個別の治療を必要とし、重症化したり予後が悪化したりする場合もある。感染が敗血症全身性炎症反応症候群血圧低下、頻脈、高熱や低体温、呼吸促拍等を惹き起こす場合がある。初期段階に過度の低血圧がみられることがあり、他臓器に充分な血液を供給できなくなる。特に髄膜炎菌性髄膜炎に多いが、これに限られない[1]播種性血管内凝固症候群に陥ると血液凝固が過度に活性化され、臓器への血流が阻害されると同時に出血リスクが増大する。髄膜炎菌性疾患では時に四肢の壊疽に至ることもある[1]。重度の髄膜炎菌および肺炎球菌感染では副腎から大量出血してウォーターハウス・フリードリヒセン症候群を発症することがあり、多くは致死的である[13]

脳組織が増大頭蓋骨内部の圧力が亢進して、膨張した脳が頭蓋底から押し出され脳ヘルニアになる場合があり、意識レベルの低下、対光反射の消失、異常肢位によって気づくことが多い[4]。また、脳組織の炎症によって脳周囲のCSFの正常な流れが阻害される場合がある(水頭症) [4]

小児ではさまざまな原因からてんかん発作を来たす。てんかん発作は髄膜炎の初期段階によくみられ(全症例の30%)、必ずしも根本的な原因を示すものではなく[3]、頭蓋内圧亢進や脳組織の炎症から生じる[4]。部分発作(腕や脚、体の一部分に生じるてんかん発作)、持続性発作、遅発性発作などの投薬によるコントロールの難しい発作があると長期転帰が不良になりやすい[1]

また、髄膜の炎症により脳神経 (脳幹から頭部および頸部に分布し眼球の動きや顔面筋、聴覚をコントロールする神経群)が異常を来たすことがある[1][6]。視覚系の諸症状および難聴は髄膜炎の症状発現後しばらく持続する[1]。脳の炎症 (脳炎)や脳血管の炎症(脳血管炎)があると、静脈内の血栓の形成 (脳静脈洞血栓症)と同様に脱力感や感覚の麻痺、損傷を受けた脳の部位に応じた身体の異常運動や機能異常がみられるようになる[1][4]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:155 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef