四肢、背中に大きな白斑が認められ、頭部に着色があるもの。白斑と有色毛の境目はなめらか。背中の白斑の大きさは個体差が大きく、頭部を除く体のほとんどに達するものもある。KIT遺伝子のレギュレーター領域に生じた異常[注 7]に原因があると考えられている[9]。単純な優性遺伝で伝わる。
フレームオベロ(Frame overo)
大きな白い顔と、下腹部から体側面を中心とした乱雑な白斑が特徴。エンドセリン受容体B(EDNRB)I118K変異型遺伝子(オベロ遺伝子)が原因で発生する[7]。この遺伝子は優性遺伝でフレームオベロを発現させるが、同時に劣性遺伝で致死作用を伝える。フレームオベロ同士を交配すると、1/4の確率でO/Oホモ個体が生まれる。これはEDNRBの活性の不足によりほぼ全身のメラニン細胞の欠損と、腸神経系の形成不全が特徴で、糞便が排せつできない障害により疝痛を起こし、長くても数日で死亡する[7]。これを致死性白子馬症候群という。
スプラッシュホワイト (Splash white)またはスプラッシュオベロ (Splash Overo)
フレームオベロに似ていて、頭部と脚部、腹部に目立つ白斑がある。尻尾にも白い刺毛が入る。フレームオベロと異なり、体幹部の白斑は通常腹部に限定され、背中にまでは達しない。原因となる遺伝子はKITではないということ以外は不明[10]。
トベロ (Tovero)
トビアノとフレームオベロが両方とも出たもの。両者の白斑を合わせたような模様が特徴。個体差が激しくかなりの広範囲を白斑が覆うこともあるが、頭部に着色部を残す。
レオパルド・コンプレックス (Leopard Complex)
いわゆる豹紋とそれに関係する複数の毛色の総称。標準的なものでは、豹またはダルメシアンのような斑点が特徴だが、体の一部にのみ豹紋が見られるものから、白い体に細かい斑点が散らばるもの、粕毛の様に見えるもの、白毛に近いものまで多様。それぞれブランケット(blanket)、スノーフレーク(snowflake)、フロスト(frost)、モットルド(Mottled)などという。機能不明の遺伝子、MLSN1の変異が原因とされている[11]。
注釈^ ここでいう白斑は体幹部や頭部にある物のみを指す。星や作といった顔面の白斑や、脚部の白だけでは駁毛とはみなされない
^ サラブレッドにおいて、白斑を持つ馬も鹿毛や栗毛と言った原毛色で登録され、白斑は白徴の項に記載されるのみである。甚だ大規模な白斑を持つものは白毛として登録される。これは、ジョッキークラブ、日本軽種牡馬協会[2]、米ジョッキークラブ[3]ともに同じである。ちなみに、アメリカンペイントホースに登録されるサラブレッドも存在する
^ いわゆる虎毛。複数の胚に由来するため毛色がモザイク状になる
^ エンドセリン系の受容体。これも主に神経堤由来細胞に発現し、メラニン細胞他多数の細胞の移動、分化、定着に必須
^ 内耳の正常な形成には、メラニン細胞の定着が必要である。頭部の白斑は稀に内耳メラニン細胞の欠損を引き起こし、難聴の原因となることがある。青い目とも関連する
^ KITの第16イントロンに生じた点突然変異(c.2350-13T>A)が原因。これによりスプライス異常が起こり、第17エクソン(23アミノ酸残基)がスキップされている
^ KITの存在する3番染色体に逆位が生じている
参考文献^ 社団法人 日本馬事協会. 「馬の毛色及び特徴の記載要領(第6版)」 昭和51年2月1日 設定 平成22年12月1日 改訂
^ ⇒馬の毛色と特徴・毛色 - ジャパン・スタッドブック・インターナショナル