馬術
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

以上の流れとは少し異なるが、イタリアの騎兵大尉フェデリコ・カプリッリ(Federico Caprilli、1868-1907)は、障害飛越や野外騎乗に即した自然馬術方式を考案し、近代スポーツ馬術を創始した[2]

以上を別の角度から要約しつつ情報を補足すると次のようになる。

ヨーロッパの馬術は古代ギリシアで発達したものを継承したもので[4]、古代ギリシアのクセノポンの馬術に関する著作があり[4]、近代馬術はルネサンス期のイタリアにおいてクセノポンの再評価から始まった[4]18世紀フランスのド・ラ・ゲリニエール en:Francois Robichon de La Gueriniere)は、この流れを集大成し「近代馬術の父」と呼ばれている。また、19世紀ドイツのシュタインブレヒト(Gustav Steinbrecht)は現在のドイツ馬術全盛の基礎を築いた馬術家として知られている。ゲリニエールやシュタインブレフトの騎乗法・調教法が今日の馬場馬術の基礎をなしている。
日本での馬術

日本には4世紀末ころに中国大陸より騎馬の風習が伝わり[3]6世紀には広まることになった[3]。その後、武芸の一つとして「弓馬の術」が、とくに鎌倉時代室町時代以降に盛んになり諸流派を生んだ[3]

明治時代明治政府は兵制の改革を行い、洋式馬術が行われるようになった[3]。これにより日本の古くからの馬術はほぼ廃れ、現在、一部の研究家が実践するにとどまっている[注釈 1]

明治政府が洋式馬術を導入し模倣したものの日本騎兵は西欧の騎兵と比べて軍馬の能力に劣っていた。秋山好古(1859-1930)は騎兵科将校として陸軍大学校にも入学、欧州各地を視察し日本騎兵の改良を試み(当時、騎兵隊と言えばそれのみの編成であったが)騎兵以外の歩兵、砲兵、工兵などとの複合編成を編みだすことで弱点を補い、日露戦争秋山支隊を率いコサック騎兵隊の大軍と戦いこれを打ち破った。西竹一(通称「バロン西」。1902-1945。男爵。陸軍軍人)は1932年ロサンゼルスオリンピック馬術障害飛越競技で金メダルを得た[5]

第二次世界大戦敗戦により、日本では兵科としての騎兵科は廃止され、馬術の拠点の一つが失われた。また、当時は既に世界中で騎兵そのものが廃れつつあり、それに代わって自動車化歩兵機械化歩兵)や戦車が急速に台頭する時代に突入しており、国防組織として警察予備隊保安隊陸上自衛隊が発足しても、騎兵は復活しなかった。

馬術には、馬匹と馬場・厩舎等の設備が不可欠であり、戦後期には(乗馬クラブも平成時代以降ほどには普及していなかったので)学生馬術が馬術競技を行う主体として重要であった。現在でも日本では、乗馬、特に馬術競技を始めるきっかけとして、大学体育会馬術部の存在は大きい。大学体育会馬術部の競技会として、1928年(昭和3年)に第1回全日本学生馬術選手権大会が開催された。1957年(昭和32年)には、日本馬術連盟の傘下団体として、全日本学生馬術連盟が組織された。全日本学生馬術連盟は、全日本学生馬術大会(全日本学生賞典障害馬術競技大会・馬場馬術大会・総合馬術大会)および全日本学生馬術選手権大会・女子選手権大会を主催している。

平成期以降の日本には乗馬クラブが多数あり、ブリティシュ馬術やウェスタン馬術を習得することが可能となっている。また、ほそぼそとではあるが流鏑馬犬追物が伝統文化として継承されている。
現代の馬術

現代における馬術を大きく分類すると「ブリティッシュ馬術」と「ウェスタン馬術」の2つに分類される[4]とも指摘されている。「ブリティッシュ馬術」はヨーロッパ発祥の馬術であり、それに対して「ウェスタン馬術」は新大陸におけるカウボーイ乗馬を起源とした馬術である。

「ブリティッシュ馬術」と「ウェスタン馬術」は技術もスタイルも大きく異なっている。ただし双方に共通する大きな特徴もあり、それは愛馬精神の尊重である。

なお競技としては、かしこまった「馬場馬術」だけでなく、テントペギングのように騎兵競技の面があるものや、馬上槍試合ジョストのような武道的側面を有する競技、ポロのように球技的な競技も行われており、それらにも馬術が含まれている。
ブリティッシュ馬術ブリティッシュ乗馬用の鞍

イギリスの上流社会のたしなみを反映した流派であり、運動の正確さ、美しさなどを重視する。

馬術家の礼儀・作法も重んじており、公式の場では燕尾服トップハット(シルクハット)軍服などの正装を要求する[4]。ほとんど見られることはないが、女性の正装はロングドレス、つば付きの帽子で胸に花をつけサイドサドルを用いる。

乗馬スタイルは、手綱を比較的緊密に用いて馬への細かい指示を可能にしている。馬具はシンプルな、脚を使いやすい(サドル)を用いる。オリンピックをはじめとした、公式の馬術競技で競われる種目のほとんどはブリティッシュ馬術に由来する。

一般的に障害競技では乗蘭[注釈 2]メット、馬場馬術競技では乗蘭、あるいは燕尾服にハットが義務付けられる。基本的には、収縮課目であるか否かで乗蘭と燕尾服の使用が分かれるような慣習があり、収縮課目では燕尾服とするのが一般的である。乗蘭には黒と赤があるが、赤は本来、狐狩りのリーダーが着るものであり、通常は黒の乗蘭を用いる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:163 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef