馬術
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明治時代明治政府は兵制の改革を行い、洋式馬術が行われるようになった[3]。これにより日本の古くからの馬術はほぼ廃れ、現在、一部の研究家が実践するにとどまっている[注釈 1]

明治政府が洋式馬術を導入し模倣したものの日本騎兵は西欧の騎兵と比べて軍馬の能力に劣っていた。秋山好古(1859-1930)は騎兵科将校として陸軍大学校にも入学、欧州各地を視察し日本騎兵の改良を試み(当時、騎兵隊と言えばそれのみの編成であったが)騎兵以外の歩兵、砲兵、工兵などとの複合編成を編みだすことで弱点を補い、日露戦争秋山支隊を率いコサック騎兵隊の大軍と戦いこれを打ち破った。西竹一(通称「バロン西」。1902-1945。男爵。陸軍軍人)は1932年ロサンゼルスオリンピック馬術障害飛越競技で金メダルを得た[5]

第二次世界大戦敗戦により、日本では兵科としての騎兵科は廃止され、馬術の拠点の一つが失われた。また、当時は既に世界中で騎兵そのものが廃れつつあり、それに代わって自動車化歩兵機械化歩兵)や戦車が急速に台頭する時代に突入しており、国防組織として警察予備隊保安隊陸上自衛隊が発足しても、騎兵は復活しなかった。

馬術には、馬匹と馬場・厩舎等の設備が不可欠であり、戦後期には(乗馬クラブも平成時代以降ほどには普及していなかったので)学生馬術が馬術競技を行う主体として重要であった。現在でも日本では、乗馬、特に馬術競技を始めるきっかけとして、大学体育会馬術部の存在は大きい。大学体育会馬術部の競技会として、1928年(昭和3年)に第1回全日本学生馬術選手権大会が開催された。1957年(昭和32年)には、日本馬術連盟の傘下団体として、全日本学生馬術連盟が組織された。全日本学生馬術連盟は、全日本学生馬術大会(全日本学生賞典障害馬術競技大会・馬場馬術大会・総合馬術大会)および全日本学生馬術選手権大会・女子選手権大会を主催している。

平成期以降の日本には乗馬クラブが多数あり、ブリティシュ馬術やウェスタン馬術を習得することが可能となっている。また、ほそぼそとではあるが流鏑馬犬追物が伝統文化として継承されている。
現代の馬術

現代における馬術を大きく分類すると「ブリティッシュ馬術」と「ウェスタン馬術」の2つに分類される[4]とも指摘されている。「ブリティッシュ馬術」はヨーロッパ発祥の馬術であり、それに対して「ウェスタン馬術」は新大陸におけるカウボーイ乗馬を起源とした馬術である。

「ブリティッシュ馬術」と「ウェスタン馬術」は技術もスタイルも大きく異なっている。ただし双方に共通する大きな特徴もあり、それは愛馬精神の尊重である。

なお競技としては、かしこまった「馬場馬術」だけでなく、テントペギングのように騎兵競技の面があるものや、馬上槍試合ジョストのような武道的側面を有する競技、ポロのように球技的な競技も行われており、それらにも馬術が含まれている。
ブリティッシュ馬術ブリティッシュ乗馬用の鞍

イギリスの上流社会のたしなみを反映した流派であり、運動の正確さ、美しさなどを重視する。

馬術家の礼儀・作法も重んじており、公式の場では燕尾服トップハット(シルクハット)軍服などの正装を要求する[4]。ほとんど見られることはないが、女性の正装はロングドレス、つば付きの帽子で胸に花をつけサイドサドルを用いる。

乗馬スタイルは、手綱を比較的緊密に用いて馬への細かい指示を可能にしている。馬具はシンプルな、脚を使いやすい(サドル)を用いる。オリンピックをはじめとした、公式の馬術競技で競われる種目のほとんどはブリティッシュ馬術に由来する。

一般的に障害競技では乗蘭[注釈 2]メット、馬場馬術競技では乗蘭、あるいは燕尾服にハットが義務付けられる。基本的には、収縮課目であるか否かで乗蘭と燕尾服の使用が分かれるような慣習があり、収縮課目では燕尾服とするのが一般的である。乗蘭には黒と赤があるが、赤は本来、狐狩りのリーダーが着るものであり、通常は黒の乗蘭を用いる。
馬術競技

に騎乗して運動の正確さ、活発さ、美しさなどを目指すスポーツ技術体系、また競技種目である。障害飛越競技総合馬術の分野では、20世紀初頭、イタリア騎兵将校のカプリリーが編み出した、鐙を短くして上半身を前傾させる騎乗法が広く採用されている。

馬術はオリンピックでは動物を使用する唯一の種目であり、選手自身の性別に左右されること無く、純粋に個人の技量を競うことの出来る唯一の競技でもある[7]総合馬術競技のうち、クロスカントリーの様子

なお、オリンピックでは、馬場馬術(Dressage ドレッサージュ)、障害飛越競技(jumping ジャンピング)、総合馬術(Eventing イベンティング)の3種目によって行われるが[7]、FEIによって開催される世界馬術選手権(World Equestrian Games)ではこれらに加え、長途騎乗(エンデュランス)競技(endurance riding)、レイニング(Reining)、馬車競技(en:Combined driving)、障害者馬術(en:Para-equestrian パラエクエストリアン)、軽乗競技(en:Equestrian vaulting)、の計8種目により行われる[8]

かつて、初めて競技として採用されたパリオリンピック(1900年)では[9]「乗馬走り高跳び」「乗馬走り幅跳び」の2種目があったが、転倒・落馬の危険が高いため、この回のみで廃止された。アントワープオリンピック(1920年)では「乗馬フィギュア(個人・団体)」の種目があったが、この回のみで廃止された。

近代オリンピックにおいては、ヘルシンキオリンピック(1952年)にて騎兵将校以外の男子および女子の参加が認められるまでは、馬術は職業軍人だけが参加できる競技であった[7]馬場馬術障害飛越競技

競技

障害飛越競技

馬場馬術

総合馬術

ジムカーナ

部班



用具

ヘルメット



ブーツ

ズボン

チャップス

ジョッパーブーツ

拍車



用語

扶助





座骨

副扶助


騎座

輪乗り

巻乗り

屈撓

歩法 (馬術)

手前


ウェスタン馬術カウボーイの馬術

未開拓の新大陸(西部開拓時代)で長距離の騎乗を行うことを目的とした、カウボーイ乗馬に端を発する馬術である。服装も、カウボーイハット(Cowboy hat)、バックル(belt buckle)、ジーンズ...とウェスタンファッションが正装である。

長時間座っても疲れない堅牢な(サドル)を使用し、手綱はルーズレインと呼ばれ、馬が自由に首を動かしバランスをとりやすい様ゆるませ、ハミに直接プレッシャーを掛けるのではなく、手綱(レイン)を馬の首に触れてコントロールする乗り方が特徴。これは、カッティング競技などで必要な馬の反射神経を最大限に活用させるための工夫でもある。


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