馬肉
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2013年に大手スーパーマーケットのテスコが扱っていたビーフハンバーガーから馬肉が検出され、問題となった(馬肉混入問題[27]
アメリカ

第二次世界大戦中に、牛肉価格の高騰のためニュージャージー州で食用馬肉の販売を一時的に合法化したが、戦後禁止された。またハーバード大学のFaculty Clubでは、1983年まで100年以上、メニューに馬肉があった。しかし、「馬は開拓時代からの数少ない文化」とする動物保護団体等の活動が盛んで、2006年9月7日下院は、食用を目的とした馬の屠畜を禁止する法案を可決した。さらに2007年1月、テキサス州では屠畜生産停止の裁判所仮命令が発令され実質的生産停止された。背景には、アメリカ人自身が馬肉を食さず、産業への影響が少ないといった国内事情がある。

米国の馬の食肉処理工場はテキサス州に2カ所、イリノイ州に1カ所あり、フランスとベルギーの会社が所有している。アメリカ合衆国農務省によると、1989年には342,977頭、2003年には49,325頭の馬が米国内で屠殺されている。また、全米馬臨床獣医師協会(American Association of Equine Practitioners:AAEP)は「現在(2004年)、毎年、約5万頭の馬が米国の屠場で殺され、3万頭が殺処分のためカナダに輸送され、更に、無数の馬はメキシコへ送られ闇に葬られている」と主張していた[28]。動物愛護協会によれば、全米で毎年、約9万頭分=18,000トン=6,100万ドルの馬肉が生産されている。アメリカ馬肉の主要輸入国は、フランス、ベルギー、日本などである。

2013年3月19日、アメリカ合衆国農務省は「馬の解体処理場の操業を承認するうえで必要な作業はほぼ済んでいる」と表明。ニューメキシコ州の食肉会社は食肉工場の開業に向け準備を整えた。馬肉食がタブーとされる米国で馬肉生産を再開させる同社に動物愛護団体などから猛烈な反発を呼んだ[29]

漫画『ゴルゴ13』第59巻「マシン・カウボーイ」は、馬肉食を否定するアメリカ国民の考え方を題材としている。
イギリス

1930年代以降、戦時中の食糧難の時期を除き馬肉食はタブーとなっている。フランス料理店用と、一部のサラミソーセージの原料用に、フランスから輸入されているのみである。2013年1月、アイルランドの食品基準監督当局により、イギリスとアイルランドの大手スーパーマーケットで販売されている牛肉に、最大で100%の馬肉が使用されている事例が発覚した。この食品偽装の事件は、イギリスでは一大スキャンダルとなり、その騒ぎはヨーロッパ全体に広がっている[30]
イスラエル

ユダヤ教では食物規定により非反芻動物を食せないため、正統派ユダヤ教徒は馬肉を食べない。ただしイスラエルでは憲法政教分離規定により、政府宗教上の理由で食品の製造流通を禁止することはできない。
ウルグアイ

ウルグアイの国民は牛肉を好み馬肉を忌避しているが、ベルギー、ロシア、フランス、日本などに輸出している[11]
オーストラリア

イギリスの文化圏であるオーストラリアでは、イギリス同様に馬肉食はタブーとなっている。2019年には、引退した競走馬を解体する食肉加工場の存在が報道され問題となった。食肉加工場で処理された馬肉は、日本やロシアなど海外に輸出されていたとみられている[31]
中国

中国では馬肉食を特に指弾する勢力はなく、加工食品の原料にも使われている。広西チワン族自治区桂林市貴州省恵水県など一部の地方やカザフ族キルギス族などの民族を除いて、伝統的に馬肉をそのままの食材として食べる例は多くない。

この理由として、李時珍がまとめた『本草綱目』は、馬肉は「辛、苦、冷、有毒」[22]としているのに対し、豚、、牛、ロバ、ラクダなどはいずれも「無毒」としているように、歴史的に馬肉を食べることによる健康への害を多く経験し、それが言い伝えられていたことが考えられる。『本草綱目』は『日華諸家本草』を引用して、清水に晒して完全に血抜きをして、煮て食べないと消化され難く、毒が出ずに疔腫(ちょうしゅ。皮膚や皮下組織の化膿、毛嚢炎)になるとしている。また、馬のの下の黒ずんだ肉や、人の手に拠らずに死んだ馬の肉、肝臓、血を食べると死ぬと注意している。犬肉、豚肉、ショウガ、「蒼耳」(オナモミ属のシベリアオナモミ)とは食べ合わせが悪いとされる。李時珍は、中毒した場合にはアロエの根の搾り汁、アンズのさねである杏仁を摂ると解毒できるとしている。
民間療法

民間療法として筋を痛めたり打撲の患部に馬肉を貼り付けるというものが存在する。1936年日本プロ野球巨人藤本定義監督は、登板が続いてを痛めたエース沢村栄治に馬肉を肩にあてさせたという[32]福岡ダイエーホークス王貞治監督がの打撲で途中交代した秋山幸二に贈ったところ、彼は「これを食べて英気を養ってくれ」というメッセージだと勘違いし、平らげてしまった(秋山の出身地熊本では滋養強壮食として馬肉が食されているため)。
脚注[脚注の使い方]
出典^ Basic Report: 17170, Game meat, horse, raw Agricultural Research Service , United States Department of Agriculture , National Nutrient Database for Standard Reference , Release 26
^ Basic Report: 17171, Game meat, horse, cooked, roasted Agricultural Research Service , United States Department of Agriculture , National Nutrient Database for Standard Reference , Release 26
^ a b 小泉武夫【食あれば楽あり】馬刺しの至福 桜握りに涎ピュルピュル『日本経済新聞』夕刊2022年5月23日(同日閲覧)
^ 肉類
^ 馬肉
^ 日本馬肉協会 2013, p. 49.
^ (食安監発0823第1号) (PDF)
^ 「馬肉を介したザルコシスティス・フェアリーによる食中毒Q&A」農林水産省(2015年11月17日閲覧)
^ 日本馬肉協会 2013, pp. 54, 58?63.
^ 「馬肉輸入価格5年で4割高 カナダの生産者、牛肥育にシフト 国内需要は旺盛」『日本経済新聞』朝刊2018年10月5日(マーケット商品面)2018年10月6日閲覧
^ a b c “「気高い動物」を食用処理 ウルグアイで馬救出の取り組み”. www.afpbb.com. 2023年1月25日閲覧。
^ 片桐学「信州の食文化」『信州短期大学紀要』(Bulletin of Shinshu Junior College)20, pp.83-88, 2008年
^ “「馬肉の消費が伸びている 値上げでも連日満席 熊本」”. 2014年8月2日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2024年3月9日閲覧。
^ 「長野県馬肉流行」『新聞集成明治編年史』6巻(林泉社、1936-1940年)
^ “馬肉関係”. 2014年4月3日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2024年3月9日閲覧。
^ 8月29日は「馬肉を愛する日」日本初、馬肉の記念日を制定 若丸『農業協同組合新聞』2021年5月20日(2021年6月20日閲覧)
^ a b c d H28馬関係資料 農林水産省


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