香港島北部の住宅地と九龍半島に人口が集中している。両者を合わせて127.75平方キロメートルと香港全体の面積の12%弱の地域に、香港総人口の約48%に当たる約338万人が居住している。九龍地区の1平方キロメートル当たりの人口密度は4万4917人、同じく香港島北部は1万5726人である(いずれも2010年)。
同地域は「海外からの移住者が仕事探しを行える環境」として比較的恵まれていることが特徴ともなっており、労働移住者の割合は24%(世界7位)という高めなものとなっている[55]。香港の人口で最も多いのは「華人」と呼ばれる中国系で、全体の93%を占める。華人以外で多いのはメイドなどの出稼ぎ労働者として多くが働いているフィリピン人やインドネシア人で、かつての宗主国のイギリス人が次ぐ。日本人は約2万4000人居住している。香港返還以降の人口増加の大半は中国本土からの移民による。香港大学アジア太平洋研究センターの鄭宏泰助理教授は「中国本土からの移民人口を総合すると、2001年時点の香港総人口の約1割に当たる」と指摘する[56]。2015年の調査によると、1997年の香港返還以来、中国本土から香港に移り住んだ人の数が87万9000人に達していることが明らかになった。香港の人口(730万人)の8人に1人が本土出身者という計算になる。
一方で、近年は前述した国家安全法の施行や少子高齢化で、香港の人口減少が加速している[57]。
香港のニュータウン「香港のニュータウン」を参照
宗教「香港の宗教(英語版)」を参照
仏教・道教、ついでキリスト教徒(1993年ではプロテスタント25万8000人、カトリック24万9180人)が多い。
道教に根ざした思想や風習が広く市民の間に浸透している。関帝や天后など道教の神を祀った寺院(道観)が、中心部・郊外を問わず、各所に建てられている。近代的なビルの一角やオフィス、店舗の片隅に関帝が祀られていたり、路傍などに土地神を祀る小さな祠がしつらえられていることも多く、そこには多くの場合、線香や供物が絶やさず供えられている。
イギリスによる長年の統治の影響により、キリスト教も比較的広く信仰されている。歴史的な建造物であるものから雑居ビルの一室のものまで含めた各宗派の教会や、キリスト教系の団体を母体とする福祉施設や学校などが数多く存在している。ほかにも仏教寺院やイスラム教のモスク、日本の宗教団体の施設などもある。
ランタオ島の天壇大仏
黄大仙祠
聖ヨハネ座堂
九龍モスク
経済詳細は「香港の経済」を参照中環の複合商業施設である国際金融中心
国際通貨基金の統計によると、2015年のGDPは3092億米ドルである[58]。2015年の一人当たりのGDPは4万2294米ドルであり、世界的にも上位に位置する。2016年の一人当たり国民総所得(GNI)は4万3240ドルでドイツに次ぐ世界第16位となっている[59]。
アメリカのシンクタンクが2017年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、世界6位の都市と評価された[60]。アジアの都市ではシンガポール、東京に次ぐ3位である。日本の民間研究所が2017年に発表した「世界の都市総合力ランキング」では、世界9位の都市と評価された[61]。世界屈指のビジネス拠点であり、2012年5月、スイスのシンクタンクによって、2年連続で「世界で最も競争力の高い国・地域」に選ばれた[62]。
富裕人口も非常に多く、金融資産100万ドル以上を持つ富裕世帯は約21万世帯であり、フランスやインドを凌いでいる。およそ11世帯に1世帯が金融資産100万ドル以上を保有しており、世界有数の密度を誇る[63]。個人資産10億ドル以上を保有する大富豪は2016年時点で68人であり、ニューヨークに次ぎ、世界で2番目に多い都市である[64]。
25年連続で「世界で最も自由な経済体」に選出されているように[65]、経済形態は規制が少なく低税率な自由経済を特徴とする。食料や日用品などの対外依存度が高い。もともとイギリスの対中国貿易の拠点であったことから中継貿易が発達していた。1949年に中華人民共和国が成立すると、大陸から多くの移民が香港に流入、それを安価な労働力として活用することで労働集約型の繊維産業やプラスチック加工などの製造業が発達した。
1970年代からは、香港政庁が新界における住宅団地開発や交通インフラ整備などに着手(詳細は積極的不介入を参照)、香港経済は急速な発展を遂げる。しかし1970年代後半になると労働コストの上昇や工業用地不足などの問題が顕在化してきた。そして中華人民共和国の改革開放政策により1980年代からは従来の製造業は広東省の深?市や東莞市をはじめとする珠江デルタへと移転、香港は中華人民共和国を後背地とする金融センター・物流基地へ転換した。
1997年の返還後は中国本土への経済的依存は強まり、2003年には中国本土・香港経済連携緊密化取決め(CEPA I)が中国本土と香港の間で調印され、その後も補充協議が実施・締結されている。広東省のイニシアティブによる汎珠江デルタ協力(9+2協力)にも参加している。香港は、世界最大級の都市圏(グレーターベイエリア)を目指す粤港澳大湾区構想の一部でもある[66][67]。
イギリス時代から完備された法体系や税制上の優遇措置、高い教育水準を有し英語が普及していることから、賃貸物件賃料が世界最高水準であるにもかかわらず、アジア市場の本社機能を香港に設置する欧米企業が多く存在する。
香港のGDPの80%をサービス産業が占める。観光産業がGDPの約5%を占めるほか、古くから映画産業が盛んである。香港経済界の代表的人物として長江集団を率いる李嘉誠が挙げられる。
地価が高いこともあり、香港はシンガポールと同じく物価高の傾向があり、商品や為替変動によっては東京の消費者物価を上回ることがある。
企業「香港の企業一覧」も参照
電力や通信などの社会インフラ企業をはじめ建設や運輸、金融や流通、サービス業や報道機関まで、さまざまな業種の大企業がそろっており、東南アジアや中華人民共和国のみならず、日本やイギリス、アメリカなどへ進出している企業も多い。
主な財閥、企業グループは、イギリス系、華人系、中国本土系の三つに大まかな分類ができる。華人系には長江実業グループや会徳豊などがある。伝統的にはイギリス系のジャーディン・マセソンやスワイヤー・グループ、香港上海銀行が有力だが、前二者は1970年代以降、ハチソン・ワンポア(長江実業グループ傘下)などの華人系財閥による買収などで勢力を縮小させている。中国本土系の企業としては、華潤集団、招商局集団、中国銀行 (香港)、中国旅行社やCITICがある。
日系企業の進出が盛んであり、2018年時点で1393社の日系企業が、香港に拠点をおいている。