首都圏方言は、実際には共通語とは違い、あくまで首都圏地域で最も使用される方言の一種であるにもかかわらず、口語的なくだけた日本の共通語として扱われることが多い。そのため、首都圏方言話者は、自分達の口語について方言であると意識しないことが一般的であり、首都圏方言が方言として扱われることに違和感を持つ者も多い。実際、首都圏方言話者にとって首都圏方言と共通語は区別しにくく、両者の切り替えが難しいことから、むしろ非首都圏方言話者の話す俗化していない共通語のほうが正しく綺麗であるとされる。非首都圏から首都圏へ移住した非首都圏方言話者は、移住前に思い描いていた共通語と現地で使われる言葉が違うと感じることも多い。
メディアにおいても、伝統的な関東方言や下町言葉が方言として扱われることはあっても、首都圏方言が方言として扱われることはほとんどない。1970年代までのメディアにおいては共通語が主に使用され、首都圏方言的なアクセント・表現・語彙の使用は比較的少なかった。しかし、1980年代よりドラマや映画、アニメ、バラエティ番組を中心に首都圏方言がふんだんに使われることが多くなり、2000年代になると、在京民放においてはアナウンサーまでもが首都圏方言を使用する時代になった。そのため、他の方言とは違い、首都圏では日常的に首都圏方言特有の表現と標準語との差異を認識する機会に乏しく、あくまで共通語として日本国内で通じる表現であると思っている場合が多い。さらに、首都圏で広まりを見せる新たな表現や発音などが、方言としてではなく日本語そのものの変化や乱れとしてメディアなどに取り上げられ全国的に伝播された結果、首都圏限定だった言葉の変化が全国的に広まり、俗化した共通語の口語体となってしまうことが多いことでその傾向に拍車をかけている。
首都圏方言は、日本語の新方言の中で最も有力かつ勢力の強いものであり、東京都にあるキー局メディアを通じて、日本各地の方言に強い影響を与えている。文化面・経済面で東京志向が強かったり、地元の方言への愛着が薄かったりする地域(方言コンプレックスの強い地域)、特に右図の日本語の方言分布図で示した北日本・東日本の東日本方言地域の都市部を中心に、平成時代以降は特に語彙・表現面では在来の方言を駆逐する勢いで若年層に首都圏方言が広まっている地域も少なくなく、地域方言の保存という観点から見ると問題となっているが、アクセント面では中輪東京式アクセントである首都圏方言との違いが比較的残ることも多い。さらには本土とは異なる独自の文化を持つとされる沖縄県においても21世紀に入ってからは、都市部の若年層においては従来の琉球諸語や沖縄弁を駆逐する勢いで首都圏方言への置き換えが急速に進んでいるといわれている(沖縄県#言語・方言も参照)。一方、従来東京の文化的影響を受けにくいとされてきた西日本においても、首都圏方言の影響が見られないわけではないものの(関西共通語も参照)、若年層においても北日本、東日本や沖縄県と比べると首都圏方言への憧れは小さく、方言への愛着も根強いため、影響はそれほど大きくない。当然のことながら、右図で示したアクセント分布図で見ると京阪式アクセント地域(特に近畿地方)は首都圏方言の影響力は小さい一方、東京式アクセント地域では影響を受けやすくなっている。 音素体系は、共通語のそれにほぼ準ずる。下町方言に著しい /hi/ と /si/ の音素上の混同は、すっかり影を潜めている。 口蓋化子音行におけるイ段とウ段の混同(拗音の直音化。例:芸術(ゲージツ))も、在来の東京方言ほど顕著ではないが、見られないわけではない。 音声に関しては、ほぼ西関東方言または東京方言に準じており、イ段ウ段の母音の中舌化・濁音子音の鼻音化など東北方言や東関東方言と共通する要素は、全く見られない。母音の無声化は西関東方言に準じて広く見られる。また、母音においてイ、エの中舌化が進んでいるという報告もある。[2] /ai, oi/ を [e:] と発音する連母音融合は、西関東方言や下町方言に準じて広く行われる。「たけえ(高い)」「すげえ(凄い)」「行かねえ(行かない)」など。ただし一部の語においては、下町方言(江戸言葉)のような連母音融合が行われないものもある。(例)大根→×でえこん 帰る→×けえる
音韻
発音