養蜂業
[Wikipedia|▼Menu]
一種類の花の開花時期のピークはそれほど長くなく、セイヨウミツバチは1か所に集中して蜜を集める習性があるため、特定の花の蜜だけを集め、「xxx花蜂蜜」と言うものを得ることが出来る(アカシア蜂蜜、レンゲ蜜など)。

自然の状態では、秋の終わりから春にかけて、花がほとんど存在しない時期には貯蔵した蜂蜜を消費する。春の初めは幼虫が孵化する時期であるため、蜂蜜の量が最も減る時期である。その後、開花が始まり貯蔵量が回復していく。夏季においても、一時的に花が少ない時期があるため、蜂蜜の量が減少する。ニホンミツバチが一回に持ち帰る蜂蜜の量は20mg程度である。冬季には巣の中の餌(蜂蜜)が不足しミツバチが餓死することを防止するため、餌として夏季に採集しておいた蜂蜜や異性化糖などの糖類を与えることが有る。但し、日本養蜂はちみつ協会では蜂蜜ではなく砂糖水を餌として与えることを奨めている[19]。ミツバチは花から採集した花蜜も与えられた餌も同じく巣に貯めるため、活動を再開する春までに残った餌の異性化糖が蜂蜜に混入することとなる。
移動養蜂と定置養蜂

養蜂には移動養蜂と定置養蜂の2種類がある。定置養蜂では同じ場所で次々に咲く異なる種類の花の蜜を集める。果樹の受粉目的に定置養蜂が行われることもある。これに対し、移動養蜂は特定の花の開花時期に合わせて国内各地を移動する。しかし、生産コストの増大や養蜂業者の高齢化などの問題により移動養蜂は減りつつあるのが現状である。

移動養蜂では、例えば本州で、レンゲソウリンゴ、アカシア(ニセアカシア)、トチノキ北海道クローバー、アカシア(ニセアカシア)のように花を追いかけ1カ所15日を目安に点々と長距離の移動をする。
採蜜時期蜂を落ち着かせるために使用する燻煙器

定置養蜂では、年間スケジュールが自然の状態と似ている。ただし、養蜂を営む地域や蜂蜜の対象となる花の種類によって時期は前後する。以下では、日本国内の太平洋沿岸地域を例にとる。11月から3月の間は巣箱を回収し、室内(越冬庫)に保管する。ミツバチが活動を再開しないように温度や光量を管理する必要がある。4月から5月にかけては女王蜂が卵を産み、3週間後に働き蜂が作業を開始する。養蜂には巣箱当たり2 - 3万匹の働き蜂が必要である。5月から6月にかけて、巣箱を屋外に配置し、採蜜作業を行う。

共に巣礎が蜂蜜でいっぱいになったら、巣箱に煙を通してミツバチの活動を押さえ、遠心分離機を用いて蜂蜜を回収する。6月から11月は休閑期に相当し、ミツバチが回収した蜂蜜は採蜜せず、ミツバチ自身の利用にまかせる。
ハチに刺されないため

10世紀頃に書かれたビザンツ帝国での農業をまとめたゲオポニカには、牛糞の煙で蜂を巣箱から追い出し、ノビルの雄株の液を体に塗ると良いとされていた。ふいごが付いた燻煙器が開発されたのは19世紀になってからである。

蜂に刺されるのを防ぐため、顔を含めた全身をや厚手布で覆うなどの保護服が現代でも見られる。中世の絵では、顔の部分に円形の皿のようなマスクを付けた頭巾で作業をしている様子が見られる。

熊などの体色のような黒色を避け白などの淡い色の方がよいと考える人もいる。色とともに芳香剤などの匂いにも誘因される傾向がある[20]

養蜂用とスズメバチなどの駆除用があり、駆除用は生地が厚手となる。駆除用の防護服や駆除機材は多くの自治体で無料貸し出しが行われており、貸し出しの際に注意点が説明される[21][22]。また、自治体によってはスズメバチ等駆除費補助金制度が行われている場合があり、駆除にかかった費用を補助する制度がある[23]
ニセアカシア問題

国内産ハチミツの半分はニセアカシア由来である[24][25]。従来、レンゲソウが蜜源植物として利用されてきたが、レンゲの作付けが減少しニセアカシアへの依存が高まっている。しかしながら、ニセアカシアが外来生物法生態系被害防止外来種[26]に挙げられ、全国の養蜂業者による「日本養蜂はちみつ協会」は「アカシアを守る会」を結成しリスト指定に反対をしている。
ミツバチの不足詳細は「蜂群崩壊症候群」を参照

ミツバチが突然、巣からいなくなったり、大量に死んだりする蜂群崩壊症候群が起きている。一方でアメリカ合衆国では、健康志向で需要が拡大するアーモンド栽培農家から虫媒花としてのミツバチの利用発注が旺盛で、応じきれない養蜂家が他から巣を盗む事例もある[14]。このため巣箱に全地球測位システム(GPS)を取り付けて追跡できるようにしている養蜂家もある[14]
捕食性天敵
動物・鳥類
クマ

滋養な蜂蜜とハチノコは、クマの活動圏に養蜂場が存在すると、クマにとって大変魅力的な餌場となる。

日本国内では、本州日本海側を中心にツキノワグマが、北海道にはヒグマが棲息する。養蜂場にクマが侵入すると、巣箱を破壊し、分布域で養蜂を行う場合は、ときに養蜂家の人命にも危険が伴うため、クマ対策が必要である。地元自治体や猟友会とともに捕獲用罠を仕掛け、養蜂場と人間は危険な存在であるとクマに十分学習させ、山奥に戻すことが大切である。また、農業用対獣蓄用電気柵でガードするのも効果的である。電気柵を設置するときは、安全対策として、必ず注意書きの看板を設置する。近年は、クマの出没箇所が人の活動圏まで拡大しており、2023年は過去最悪ペースの被害者数をもたらしている[27]。それまでクマが出没したことの無い地域でも、注意が必要である[28]
ニホンザル

ニホンザルが見ている場所で巣箱を開ける、ハチミツやハチノコの残留する無駄巣を棄てておくなどすると、サルは蜂児を捕食し、それを学習してしまう。サル用ネットと電気柵を利用し、サルを追い払って作業する[28]
イノシシ

巣箱を破壊しハチノコを捕食することがある。電気柵もしくは幅2メートル以上の堀を作って対策する[28]
ツバメ

飛行するミツバチを捕食する。群飛し集団捕食すると、大量の働きバチを損失する。爆音器や大型の風船等の農業用鳥避けは、あまり効果はない。春先は、結婚飛行に出た女王バチをツバメが捕食することがある。ツバメが群れる場所では、交尾を行わせないようにする[28]
ハチクマ
ハチクマ

タカの仲間で、東南アジアからやって来る渡り鳥。ハチノコを捕食する。養蜂場周辺に落ちた巣板のハチノコを食べることがある。底に隙間のある巣箱を使用している場合、まれに、巣箱に頭部を突っ込んで、巣板を破壊し持ち去ることがある[28]
昆虫
スズメバチ

巣およびミツバチ自身に影響する病害虫・天敵として、スズメバチがいる。スズメバチは養蜂の大敵であり、巣を襲って成虫、サナギ、幼虫を問わずエサにして巣に持ち帰る。特にオオスズメバチは数匹 - 数十匹で巣を全滅させる。詳細は「スズメバチ」を参照
スムシ

巣に影響する害虫としてスムシがある。スムシは直接ミツバチを襲うわけではないが、養蜂家からスムシ(巣虫)と呼ばれ嫌われるハチノスツヅリガ等の蛾の幼虫は、蝋(蜜蝋)を原料とした巣を食べて成長する事から、スムシに寄生された巣の多くは全滅することもある[29]
ミツバチヘギイタダニ

ミツバチに影響する害虫にはミツバチヘギイタダニがいる。腐蛆病チョーク病バロア病ノゼマ病などがある。
メンガタスズメ

巣やハチに直接害を及ぼすわけではないが、スズメガの1種メンガタスズメは花からではなくミツバチの巣から蜜を飲むように体の構造ができているため、頻繁に巣箱を訪ねくる。
スズメバチ対策.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:51 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef