養老孟司
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研究室がゲバ棒を持ち覆面を被った学生達に押し入られ、「こんな一大事に研究なんかしている場合か」と非難されながら研究室を追い出された経験をして以来、「学問とは何か」「研究とは何か」「大学とは何か」といった問いに対して考え続けており、「私のなかで紛争は終わってない」と述べている[32][要ページ番号]。
そのような過去の経緯もあり、かつて「全共闘議長」だった山本義隆が2003年暮れに『磁力と重力の発見』で第30回大佛次郎賞を受賞した際に、養老は当時選考委員で、著作への授賞に異存はないとしつつも、自らが全共闘運動から受けた影響(全共闘運動により研究室から暴力的に追い出された)などを理由に「(個人的な)背景を含めた選評は拒否するしかない」という強い調子の文章を発表して話題となった[35]。
愛弟子・布施英利(美術解剖学、東京藝術大学教授)[36]による『養老孟司入門 脳・からだ・ヒトを解剖する』(ちくま新書、2021年)で、代表作を読みなおしその背景を語った。
医師であるが、「現代の医療システムに巻き込まれたくない」という理由で病院や健康診断を嫌っている[1][37]。
嗜好品、それに関する意見
喫煙者であり、たばこは毎日20本以上吸っている。肺がんの可能性についても「ストレス解消のほうが大事だから」として気にしていない[38]。
劇作家の山崎正和とともに禁煙ファシズム論を唱えている。副流煙の危険性について「問題外」としており、「低温で不完全燃焼するたばこから発生するので有害というのに科学的根拠はない」と述べている。また、喫煙の発癌性についても疑問視しており、「『肺がんの原因がたばこである』と医学的に証明されたらノーベル賞もの」と述べている。現在のたばこのパッケージには、肺がんや心筋梗塞の危険性が高まることについての警告が記載されているが、その文言を決めたうちの一人が大学の後輩医師だと知り、医師仲間が集まった際に「根拠は何だ」「因果関係は立証されているのか」と問い詰めた[39]。
『文藝春秋』2007年(平成19年)10月号において、近年の禁煙運動の高まりに対し「異質なものの徹底排除という原理主義的な雰囲気を感じる」とし、「たばこの害や副流煙の危険は証明されていない」といった主張を展開するとともに「禁煙運動はナチズム」と言及した[40]。
なお、これに対し日本禁煙学会は「たばこの副流煙に害が無い」とする養老の主張について、公開質問状を送付した。養老の事務所は「質問状が手元に届いても見ずに捨ててしまうだろう」としており、実際に回答もしていない[41][42]。
ビール一杯でひっくり返るほどの下戸だったが、解剖学の教授としてストレスを溜める日々を送るうちに、毎晩ウイスキー一本明けても平気になったという[43]。
受賞歴など
1989年『からだの見方』でサントリー学芸賞 受賞
著書『解剖学教室へようこそ』が1993年11月に第47回毎日出版文化賞の候補となった。
2003年出版の『バカの壁』は450万部を記録し、戦後日本の歴代ベストセラー第5位となった[3]。この『バカの壁』は次の賞を受賞した。
2003年11月、第57回毎日出版文化賞 受賞
2003年12月、第38回新風賞 受賞
2003年12月、第2回「耀く!ブランチBOOK大賞」大賞 受賞
題名の「バカの壁」で新語・流行語大賞 受賞
2015年 第64回神奈川文化賞 受賞
2023年 地域文化功労者[44]
著作
単著
『ヒトの見方?形態学の目から』筑摩書房、1985年 <1991年 ちくま文庫>
『脳の中の過程?解剖の眼』哲学書房、1986年 <1993年「脳の見方」ちくま文庫><2004年 哲学文庫/2023年 講談社学術文庫>
『形を読む?生物の形態をめぐって』培風館、1986年、新版2004年 <2020年 講談社学術文庫>
『からだの見方』筑摩書房、1988年 <1994年 ちくま文庫>
『解剖学 人体の構造と機能』(新版看護学全書)メジカルフレンド社 1989年、度々新版
『唯脳論』青土社、1989年 <1998年 ちくま学芸文庫>
『涼しい脳味噌』文藝春秋、1991年 <1995年 文春文庫>
『カミとヒトの解剖学』法藏館、1992年 <2002年 ちくま学芸文庫>
『脳に映る現代』毎日新聞社、1993年 <1995年「脳の冒険」三笠書房知的生きかた文庫>
『解剖学教室へようこそ』筑摩書房・ちくまプリマーブックス、1993年 <2005年 ちくま文庫>
『脳が読む 本の解剖学1』法藏館、1994年
『本が虫 本の解剖学2』法藏館、1994年
『続・涼しい脳味噌』文藝春秋、1995年 <1998年 文春文庫>
『考えるヒト』筑摩書房・ちくまプリマーブックス、1996年 <ちくま文庫、2015年>
『日本人の身体観の歴史』法藏館、1996年 <2004年「日本人の身体観」日経ビジネス人文庫><2022年 法藏館文庫>
『身体の文学史』新潮社、1997年 <2001年 新潮文庫><2010年 新潮選書>
『毒にも薬にもなる話』中央公論社、1997年 <2000年 中公文庫>
『臨床読書日記』文藝春秋、1997年 <2001年 文春文庫>
『臨床哲学』哲学書房、1997年
『現代社会と都市化?脳生理学者の現代文明論』三輪学苑、1998年。講演集
『I KNOW YOU 脳』かまくら春秋社、1998年 <2006年「脳のシワ」新潮文庫>
『異見あり?脳から見た世紀末』文藝春秋、2000年 <2002年 文春文庫>
『ミステリー中毒』双葉社、2000年 <2003年 双葉文庫>
『脳と自然と日本』白日社、2001年。講演集
『ヒトはなぜ、ゴキブリを嫌うのか? 脳化社会の生き方』扶桑社新書、2019年
『こう考えると、うまくいく。脳化社会の歩き方』扶桑社文庫、2023年。各・増補版
『手入れ文化と日本』白日社、2002年 <2013年「手入れという思想 養老孟司特別講義」新潮文庫>。講演集
『「都市主義」の限界』中公叢書、2002年 <2004年「あなたの脳にはクセがある」中公文庫>
『人間科学』筑摩書房、2002年 <2008年「養老孟司の人間科学講義」ちくま文庫>
『からだを読む』ちくま新書、2002年
『バカの壁』新潮新書、2003年4月 -「壁」シリーズ(新書レーベル創刊時の刊)
『養老孟司の〈逆さメガネ〉』PHP新書、2003年<2017年「逆さメガネで覗いたニッポン」PHP文庫>
『まともな人』中公新書、2003年 <2007年 中公文庫>
『いちばん大事なこと 養老教授の環境論』集英社新書、2003年
『運のつき 死からはじめる逆向き人生論』マガジンハウス、2004年 <2007年 新潮文庫><「養老孟司の人生論」2016年 PHP / 2023年 PHP文庫>
『死の壁』新潮新書、2004年 -「壁」シリーズ
『真っ赤なウソ』大正大学出版会、2004年 <2010年 PHP文庫>
『かけがえのないもの』白日社、2004年 <2009年 新潮文庫>
『バカなおとなにならない脳』理論社、2005年
『私の脳はなぜ虫が好きか?』日経BP社、2005年
『こまった人』中公新書、2005年 <2009年 中公文庫>
『無思想の発見』ちくま新書、2005年
『超バカの壁』新潮新書、2006年 -「壁」シリーズ
『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』日経BP社、2006年
『まともバカ 目は脳の出店』大和書房・だいわ文庫、2006年、新版2023年
『自分は死なないと思っているヒトへ』だいわ文庫、2006年、新版2023年(各・新編再刊)
『小説を読みながら考えた』双葉社、2007年
『ぼちぼち結論』中公新書、2007年 <2011年 中公文庫>
『養老訓』新潮社、2007年 <2010年 新潮文庫>
『読まない力』PHP新書、2009年
『養老孟司の旅する脳』小学館、2009年
『養老孟司の大言論』(全3巻)新潮社、2011年 <2014年 新潮文庫>
『庭は手入れをするもんだ 養老孟司の幸福論』中央公論新社、2012年 <2015年「養老孟司の幸福論 まち、ときどき森」中公文庫>
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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