養老孟司
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2018年時点で、NPO法人「日本に健全な森をつくり直す委員会」委員長[16]。2020年9月から、ミチコーポレーション・ぞうさん出版事業部の顧問に就任。

政府関係では農林水産省食料・農業・農村政策審議会委員を務めた[9]福島県須賀川市のムシテックワールド館長、日本ゲーム大賞選考委員会委員長[17]NPO法人「ひとと動物のかかわり研究会」理事長[18]

2020年6月26日、体調不良のため病院で検査を受けたところ心筋梗塞と診断された。集中治療室で2日間の治療を行い、2週間の入院を余儀なくされた。主治医によるといつ死んでもおかしくない状態であった[19]東京大学医学部附属病院を受診するのは26年ぶりであったが、70キログラム以上あった体重が1年で15キログラム減り、6月に入り体調が悪く、特に受診直前3日はやる気が出ず寝てばかりという状態に「身体の声」を尊重して健診嫌いを押して、教え子である中川恵一の診察や心電図検査を受けた。病院の待合室で妻や秘書と「天ぷらでも食べて帰ろうか」と話していたら「ここを動かないでください」と言われ、心臓カテーテル検査から2週間の入院となった[1]
人物

父の
臨終に立ち会った際、周囲の大人たちに促されながら「さよなら」の一言を言えなかった経験が、中学生・高校生時代「人と挨拶するのが苦手」な性格に影響したと自己分析している。父という大切な存在にもできなかった挨拶を他人にするわけにはいかないと思っていたのだ。その因果関係に気づいたのは40歳を過ぎてからの通勤途中の地下鉄のホーム上であり、その後、地下鉄の中で涙しながら「そのとき初めて自分の中で父が死んだ」と自著で告白している[20]

執筆活動

人間がものごとを
認識する場合に根底に潜む問題、心の問題、社会現象の基底に潜む問題、世の中の俗人が見落としがちな大切なこと、などを、自身の専門である解剖学や、また脳科学など医学生物学領域の知識を交えつつ解説することによって多くの読者を得ている。

1989年に『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞[21]。以後三十数年間にわたり、対談も含め一般向け著書を多く出版している。日本ペンクラブ会員である。メディア出演も多い。

2003年(平成15年)4月に出版した『バカの壁』(新潮新書)は、同年のベストセラー第1位で、毎日出版文化賞特別賞を受賞[22]、題名の「バカの壁」で新語・流行語大賞も受賞した[23]。新書判では戦後最多の発行部数である。

趣味

昆虫採集。特にヒゲボソゾウムシ[24]、クチブトゾウムシを集めている[25]。集めた昆虫はスキャナーで撮りデジタル図鑑にしている[26]。神奈川県の箱根別荘藤森照信設計の「養老昆虫館」)に、約10万点の昆虫標本を所蔵する[27]。別荘の基礎の側面には「馬」と「鹿」のイラスト(南伸坊筆)が描かれている[28]。 

鎌倉昆虫同好会を結成し会長を務めた(機関誌は月刊『KABUTOMUSHI』)。テレビやラジオの取材も受けた。その頃から「どんな問い合わせにも応じられるような日本昆虫センターを作りたい」という夢を公言していた。虫が好きな理由については「論理的に意味がわからないことがたくさんある(からおもしろい)」という旨を述べている[28]

2015年、鎌倉の建長寺に虫塚を建立した[29]。人間が多くの虫を日々殺している加害者であることに自覚的でありたいという趣旨と述べている[30]虫かごに似せた外観は、隈研吾がデザインした[30]

動物好きで、愛猫のまるをDVD化した『どスコい座り猫、まる。?養老孟司先生と猫の営業部長』が2011年にリリースされた。なお、愛猫のまるは2020年12月21日、心不全により18歳で亡くなった。拘束型心筋症を患い、晩年は寝たきりの状態が続いていた[31]。関連出版が、養老研究所名義(関由香写真)で3冊ある。

思想、社会事象の分析

自身の思想的立場、
科学哲学を「すべてが物語・仮説であると考える点で、自分はポパー主義者である。」としている[32]

文化や伝統、社会制度、言語、意識、心など人のあらゆる営みは脳という器官の構造に対応しているという「唯脳論」を提唱した。この考えは『月刊 現代思想青土社に連載した、初期著作『唯脳論』(新版・ちくま学芸文庫)にまとめられている。

靖国問題というのは、世の中ではあたかも政治的な駆け引きのように語られているが、「死んだからと言って別人になるわけではない」とする中国の文化と、「死んだら神様としてまつる」日本の文化という、文化の違い、共同体のルール(の違い)の問題が根底にあるのでは、という旨の指摘をしている[33]

日本、および世界の先進国の都市化を批判しており、美しく感じられる自然は人間の手入れによって保たれると述べている[34]

医学部助手だった当時は、全共闘運動が全盛期で、多大な被害を受けた。全共闘の連中が養老に対して言い放った暴言や、やらかした学問に対する暴力のことは忘れておらず、自身の思想を深めるのに活かしてきた。研究室がゲバ棒を持ち覆面を被った学生達に押し入られ、「こんな一大事に研究なんかしている場合か」と非難されながら研究室を追い出された経験をして以来、「学問とは何か」「研究とは何か」「大学とは何か」といった問いに対して考え続けており、「私のなかで紛争は終わってない」と述べている[32][要ページ番号]。
そのような過去の経緯もあり、かつて「全共闘議長」だった山本義隆が2003年暮れに『磁力と重力の発見』で第30回大佛次郎賞を受賞した際に、養老は当時選考委員で、著作への授賞に異存はないとしつつも、自らが全共闘運動から受けた影響(全共闘運動により研究室から暴力的に追い出された)などを理由に「(個人的な)背景を含めた選評は拒否するしかない」という強い調子の文章を発表して話題となった[35]

愛弟子・布施英利美術解剖学東京藝術大学教授)[36]による『養老孟司入門 脳・からだ・ヒトを解剖する』(ちくま新書、2021年)で、代表作を読みなおしその背景を語った。

医師であるが、「現代の医療システムに巻き込まれたくない」という理由で病院健康診断を嫌っている[1][37]

嗜好品、それに関する意見

喫煙者であり、
たばこは毎日20本以上吸っている。肺がんの可能性についても「ストレス解消のほうが大事だから」として気にしていない[38]

劇作家山崎正和とともに禁煙ファシズム論を唱えている。副流煙の危険性について「問題外」としており、「低温で不完全燃焼するたばこから発生するので有害というのに科学的根拠はない」と述べている。また、喫煙発癌性についても疑問視しており、「『肺がんの原因がたばこである』と医学的に証明されたらノーベル賞もの」と述べている。現在のたばこのパッケージには、肺がんや心筋梗塞の危険性が高まることについての警告が記載されているが、その文言を決めたうちの一人が大学の後輩医師だと知り、医師仲間が集まった際に「根拠は何だ」「因果関係は立証されているのか」と問い詰めた[39]


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