養子縁組
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一方、商人・農民などの庶民間における養子縁組は、証文のやり取りだけで縁組も離縁も比較的容易であり、「家名の存続」よりも「家業の経営」を重視した養子縁組が行われることが多かった[* 14]。また、享保の制度変更によって女性の名義では借家を借りることができなくなったことから、女性だけの世帯が家を借りる際には、男性の名義を借りるための便宜的な養子縁組が行われるようになった[13]

明治時代以後になると「家」を社会秩序の中心に置く家制度が全ての階層に広げられた結果、養子縁組も家制度の維持という観点で行われることが多くなった。それが大きく変わるのは第二次世界大戦後日本国憲法制定に伴う民法改正以後のことである。
日本の旧民法における養子縁組

日本の旧民法において、養子縁組は、養親の家に入り、養親の嫡出子たる身分を取得することであるといえる。養子は法定血族の一種である。

養子になる者は、養親たるべき者の尊属または年長者でないこと、法定推定相続人たる身分でないことが必要である。

配偶者のある者は、配偶者と共同してのみ養子縁組をなすことができる。

養子は養子縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得するため、養親に養子縁組前に生まれた子女がある場合、養子は年長者であっても法律上、これらの子女より年少者として扱われる。

養子は養親の家に入るが、養親と同居する義務を負わない。

養子は養親およびその直系尊属との間に、互いに扶養の権利義務を有する。

養子は養方の血族と親族関係を持つが、このために実方の血族との親族関係を失わない。

養子は実家における家族たる身分を失い、また実親の親権を脱して、養親の親権に服する。

養子とその直系卑属またはその配偶者と、養親またはその直系尊属との間では、離縁によって親族関係が消滅したのちもなお、婚姻をすることができない。

養子縁組制度の法的理論
養子縁組の成立構成

養子縁組を成立させるための法律構成としては、契約型と決定型とに立法例が分かれる。
契約型(普通養子)

契約型は、養親になる者と養子になる者の契約により養子縁組を成立させる形態であり、スイスオーストリアなどで採用されている。また、ドイツフランスでも以前は契約型が採用されていた。日本では、民法792条から817条までに規定されている普通養子がこれに該当する。

契約により養子縁組が成立するとはいっても、養子になる者が幼少である場合などは、自ら有効に縁組契約を結ぶことは不可能なので、そのような場合は法定代理人などが代わって縁組の承諾をすることになる。日本では、養子になる者が15歳未満である場合は、法定代理人が養子になる者に代わって縁組の承諾をする(代諾養子)。

また、養子になる者を保護する観点から、契約型を採用する場合でも公的機関の関与を要求することがある。日本では、未成年者を養子とする場合は、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、家庭裁判所の許可が必要になるし、後見人が被後見人を養子とする場合も、家庭裁判所の許可が必要になる。

養子が婚姻(結婚)する場合、婚姻届の父母の氏名欄には実父母の名義を書き、養父母はその他の欄に書くことになっている[14]
決定型(特別養子縁組)

決定型は、公的機関の宣言によって養子縁組を成立させる形態であり、多くの場合、養親になる者の申請に基づき裁判所が養子決定をする形態を採る。英米法を基礎とした国や現在のドイツ、フランスなどで採用されている。日本では、民法817条の2から817条の11までに規定されている特別養子がこれに該当する。日本では、養子が15歳未満(15歳未満から事実上養育していたと認められた場合は17歳以下まで可能)までの場合に特別養子縁組が認められており、それ以外の場合は普通養子縁組を行うこととなる。単独縁組は原則配偶者の連れ子を特別養子にする場合のみ出来る。単独縁組の場合、戸籍上は実父との関係は終了し、養父と実母の「長男」「長女」と実子扱いになる。また、異父兄弟姉妹は実の兄弟姉妹扱いになる。
養子縁組後の親族関係

養子縁組によって養親と養子、養子と養親の血族の間に法定血族関係が生じることになる。また、養親と養子の元々の血族との間には法定血族関係は生じず、縁組後に養子に生じた血族と、養親及びその血族との間には法定血族関係が生じる。例えば、縁組前に生まれていた養子の子と、養親との間に親族関係にないが、縁組後に生まれた子(養親の孫)との間には血族関係に立つ。実の兄弟であっても立場が違うことになる。
養子縁組後の実親子間の親族関係

養子縁組が成立した場合に、養子とその実親との間の親族関係が終了するかどうかについても立法例が分かれる。親族関係が終了する制度を採用する場合は、養子と実親の一方が死亡した場合、他方は遺言による場合等を除き相続権を有しないことになる。ただし、親族関係が終了するとしても、近親婚を避けるための措置が採られることが多い。
各国の養子縁組
フランス

フランスでは、要保護児童のあっせん件数は年間約5500件あり、児童の養子についてはアメリカに次いで多く(養子縁組の全体数は日本が80,000件以上あり、アメリカに次いで多い[15])、そのうち国際養子縁組が占める割合が3分の2と高い[16]

国際養子縁組については、国際養子縁組の共通ルールとなっているハーグ条約の規則を遵守した形での運用がなされている[16]

国内の養子縁組の支援体制も充実しており、例えば助産施設を利用して匿名で出産し、法律的親子関係を作らないまま養子縁組を選択できる制度は、フランスで養子縁組が多い背景の一つとして指摘されている[16]。この制度を使えば無料で出産することができ、要保護児童のうち88%がこれに該当するという[16]。より詳しくはフランスにおける養子縁組(フランス語版)を参照。
スイス

スイスの里子の数は1万5000人ほどとされるが、これは2002年国勢調査の数値であり、これ以降、スイスでどれだけの里子がいるのかはスイス政府も把握していない。スイスの里親制度は、地域ごとにばらつきがある。さらに、里親仲介団体の質を保証する民間団体はあるが、行政では里親仲介団体を監督する制度がないところも多く、里親仲介団体の設立に認可を必要としているのは2014年時点で5州に過ぎない[17]


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