飲酒運転
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具体的には、直線の上を歩かせてふらつくかどうか、視覚が健全に働いているか、運動・感覚機能が麻酔されていないか、言動などから判断・認知能力の低下がないかなどの点が総合的に判断される。一般に認識が薄いが、軽車両自転車を含む)の運転についても違法であり、刑事罰の対象となる。

酒気帯び運転は、血中アルコール濃度(またはそれに相当するとされる呼気中アルコール濃度)が、一定量に達しているかという、形式的な基準で判断される。このような判断基準の違いから、運転者の体質[注釈 3] によっては、酒気帯びに満たないアルコール量でも酒酔い運転に該当することは考えられる。この範囲の軽車両(自転車を含む)の運転について、違法ではあるが、基本的に罰則規定はない。

行政処分

酒気帯び運転は、2009年(平成17年)6月1日以降は、呼気中アルコール濃度0.15 mg以上で違反点数13点、0.25 mg以上で違反点数25点と[注釈 4]、少量の酒気を帯びた運転であっても重い運転免許行政処分が課されるようになっている。

2002年平成14年)5月31日までは呼気中アルコール濃度0.25 mg以上で違反点数6点、同年6月1日から2009年(平成17年)5月31日までは、0.15 mg以上で違反点数6点、0.25 mg以上で違反点数13点であった。

また、1つの行為で道路交通法の複数の規定に違反することとなった場合には通常、最も重い行為の違反点数などが適用されるが、酒気帯び運転時に違反または事故を起こした場合には、酒気帯び点数が(実質的に)加重された違反点数が適用される。そのため、酒気帯び(0.15 mg以上0.25 mg未満)の状況では、違反が重大とはいえない場合であっても、それが初めての違反であったとしても、即座に免許の取消しに該当する場合がある。

酒酔い運転は、2007年(平成19年)6月1日以降は35点となっている。即座に免許の取消になるだけでなく(無免許運転の場合は免許拒否)、免許の欠格期間(再受験の不可)も大幅に長期にわたることになった。累積点数35点の場合、前歴が無くても(免許取得していなくても)欠格期間は最低3年にわたる、また特定違反行為による処分であるため最長の場合で欠格期間10年になる場合もある。

2002年(平成14年)5月31日までは違反点数15点、同年6月1日から2007年(平成19年)5月31日までは25点であった。

酒気帯び関係の違反行為に対する基礎点数[11]違反行為の種別点数
酒酔い運転35
酒酔い+無免許運転35
酒気帯び運転(0.25以上)35点以上適用の違反以外一律25
酒気帯び+無免許運転25
酒気帯び(0.15以上0.25未満)速度超過(50 km/h以上)19
酒気帯び(0.15以上0.25未満)速度超過(30(高速40)km/h以上50km/h未満)16
酒気帯び(0.15以上0.25未満)積載物重量制限超過(大型車等10割以上)16
酒気帯び(0.15以上0.25未満)積載物重量制限超過(大型車等5割以上10割未満、普通車等10割以上)15
酒気帯び(0.15以上0.25未満)速度超過(25 km/h以上30(高速40)km/h未満)15
酒気帯び(0.15以上0.25未満)積載物重量制限超過(大型車等5割未満、普通車等10割未満)14
酒気帯び(0.15以上0.25未満)速度超過(25 km/h未満)14
酒気帯び(0.15以上0.25未満)その他の通常時は1点・2点の違反行為14
酒気帯び運転(0.15以上0.25未満)13
「0.25以上・未満」は呼気中アルコール濃度0.25 mg以上・未満。なお「その他の通常時は1点・2点の違反行為」には放置駐車違反などは含まれない。

なお、自動車の使用者安全運転管理者なども含む)が運転者に飲酒運転を下命しまたは容認して運転者が飲酒運転をした場合には、6カ月間当該自動車を運転禁止処分とする行政処分も出される。
刑事罰

2007年(平成19年)9月19日の道路交通法改正施行により、酒酔い運転の罰則が「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、酒気帯び運転の罰則が、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」へとさらに厳罰化された。また、飲酒検知を拒否した場合も「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と強化された。

自動車の運転に関し、運転者に飲酒運転を下命しまたは容認した、自動車の使用者安全運転管理者運行管理者なども含む)も処罰される。

なお、この改正により、飲酒運転をするおそれがある者への車両または酒類の提供をした者や、その者に同乗しまたは運送を要求した者も、個別に処罰されることとなった(後述)。
交通事故の場合

飲酒検問でなく交通事故の発生により酒酔い・酒気帯び運転の事実が発覚しまたは確認された場合には、より厳重な罰則が適用される。

例として、死亡事故を起こした場合において酒酔い運転だった場合には違反点数55点が科せられ、道路交通法第88条第1項に定める運転免許試験受験の欠格期間が7年となる。

人を死傷させ人身事故になった場合、以前は刑法業務上過失致死傷罪で最高でも懲役5年だったが、その後自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)が適用される様に法改正された。

危険運転致死傷

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行して事故を起こした場合、負傷の場合で15年以下の懲役、致死の場合で1年以上の有期懲役、さらに無免許の場合には6月以上の有期懲役となる。

アルコール又は薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転して事故を起こした場合、負傷の場合で12年以下の懲役、致死の場合で15年以下の懲役となる。さらに、無免許の場合には負傷の場合で15年以下の懲役、致死の場合で6月以上の有期懲役となる。


過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱

アルコール又は薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転して事故を起こした場合、更にアルコール又は薬物を摂取したり、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させさせたりして、アルコール又は薬物の影響があったことの発覚を免れようとした場合、12年以下の懲役、さらに無免許の場合には15年以下の懲役となる。


民事責任

飲酒運転により事故を起こした場合、交通事故の損害賠償の過失割合について、通常よりも飲酒運転者の過失が大きく認定される。

自動車保険では、飲酒運転をした運転手のケガや車両の損害に対しては、保険金が支払われないことがある[12]

事故を起こした運転者に使用者がある場合は、使用者責任を問われ、連帯して賠償責任に服するのが通例である。なおこれは自動車の運行供用者責任とは別個である。
社会的制裁

後述の福岡飲酒運転事故以降、民間企業・公務員は、飲酒運転やそれを知りつつ黙認(共同不法行為)した社員や職員は、原則として懲戒解雇懲戒免職とする所が多くなっている(業種・職種および勤務時間内・勤務外、事故の有無を問わず、解雇や免職の対象となるところが多い)。

飲酒運転の厳罰化により、地方の飲食店の経営が成り立たなくなり(「地方の疲弊」)、不況の原因の一端となっている事から、厳罰化を見直すべきと主張している者もいる[13]。また、飲食店側も、こうしたことを理由に挙げ、来店者に対し、来店手段を敢えて聞かないケースも見受けられる[14]

彦根市の例では、飲酒運転が発覚した場合には停職・免職など厳格に処分するとしながらも、公務外(勤務時間外)の違反や事故の報告は義務付けないとした。これを不祥事の隠蔽体質として批判する向きがある一方、『何人も、自己に不利益な供述を強要されない』と定めた憲法第38条の趣旨から、強制することは違憲であり、市への報告は職員自らが道義的に判断すべきとの意見がある[注釈 5]

山梨県では、飲酒運転およびそれに関連した事故により逮捕・検挙される事例が昔から相次いでいる。1976年昭和51年)には飲酒運転の摘発が相次ぎ、5月までに県職員、市町村職員が9人も逮捕された。この中には学校新任職員歓迎会後に職員が飲酒運転でひき逃げを行い、学校ぐるみで隠ぺいが行われたケースもあった。これを契機に県全体で厳罰化(当時としては異例の停職減給)の方針が打ち出されたが[15]、その後もなくなることは無かった。2006年(平成18年)9月19日に身延町教育委員長が酒気帯び運転で検挙されたが、その記事を書いた朝日新聞甲府総局記者も同じ日に酒気帯び運転で検挙されている(翌20日に発覚)[16][17] のをはじめ、2015年(平成27年)5月8日には山梨放送営業企画部部長[18]、同年7月8日には甲府市市議会議員[19]、2016年2月17日には日本年金機構甲府所長[20]、2017年6月15日には山梨県庁主幹[21]、2017年7月15日には山梨県警察警部補[22] が酒気帯びを原因とした当て逃げや物損事故を起こしているが、いずれも辞職しまたは免職処分を受けている。

社会的制裁に係る処分について裁判で争われたケースもある。2007年(平成19年)5月、山形県議会議員が飲酒運転で摘発された。その後、県議会が全会一致で可決した辞職勧告決議[23] に従わないため、県議会は、政治倫理審査会が勧告の受け入れと辞職まで本会議や委員会への出席を自粛するよう求める審査結果を出した。2003年(平成15年)11月に、飲酒運転で懲戒免職処分となった熊本県の教師は処分撤回を求めた結果、勤務評定がよいなどの理由で処分は不当だという最高裁判決が出た(2007年7月12日 朝日新聞)。2007年(平成19年)5月に、飲酒運転を行っていたことが判明して懲戒免職処分となった兵庫県加西市の職員は、処分の無効を求める訴えを起こした。2009年4月、この訴訟の二審の大阪高等裁判所は「業務と無関係な運転で、運転していた距離も短く、交通事故も起こしておらず、アルコール検知量は道路交通法違反の最低水準であり、懲戒免職処分は過酷で裁量権を逸脱している」とした上で、懲戒免職を取り消す判決を言い渡した。


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