食肉
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食肉を放置すると色が悪くなるのはこのためである[9]
畜種による官能特性の違い
動物種により味や香り、食感が異なると思われているが、実際に異なるのは香りと食感であり、味は動物間による違いが無いことが明らかにされている。
機能性

食肉を機能性食品として取り扱う例はあまり多くないが、前述の鉄の吸収が良い点などを機能性として紹介する例がある。
食肉の生産

21世紀初頭では、主に畜産によって生育させられた動物は、屠畜場(食肉工場)へ送られ、屠殺(屠畜、屠鳥)され解体され、食肉が製造される[10]。そして必要に応じて熟成を施したり、ハムなど加工肉の原料となる。

ジビエ(野生動物の狩猟による肉)の料理を提供するレストランのシェフのもとに直接に届けられることも多かったが、ジビエ類の解体・熟成を専門に行う業者もいる。
肥育

肥育とは、食肉を得ることを目的として家畜を飼養管理することである。誕生直後から肥育を行うことはあまり無く、一般的に肥育に適する月齢まで育成したものを肥育に供する。肥育期においては、肉が十分つくだけでなく、肉質が十分高まるような管理が行われる。牛肉1キロを得るためには、その10倍の穀物が必要とされている[11]

もともと乳牛であったものがその用途に適さなくなり、食肉として出荷する廃用牛であっても、そのまま出荷せずに一定期間の肥育を行ってから食用とされることがある。

肉質は遺伝的因子や飼料成分、および飼養環境などにより変動する。
熟成

熟成は、死後硬直したままの肉では食用に供せないため行われる製造工程である。硬直中の肉はさらに低温で保存すると、再び軟らかくなり(解硬)風味が増す。これは筋肉細胞に残存するタンパク質分解酵素プロテアーゼにより筋源繊維が小片化するためであると考えられているが、その他にも筋肉中のCa2+イオンが関与しているとする説もある[12]。熟成は基本的に枝肉の段階で行われる。

熟成に要する期間は畜種ごとに異なる。2?5℃で貯蔵した場合、牛は7?10日、豚は3?5日、鶏は半日ほどで解硬される。ウシなどの場合は、解硬のみならず、熟成によって生じる独特な香気を十分に発生させるため、十分解硬した後もさらに長期に熟成させることもある[13]
流通北アメリカのスーパーマーケットに並ぶ精肉オーストラリアスーパーマーケットに並ぶカンガルーの肉
流通形態

食肉の流通形態は、大きく屠体、枝肉、部分肉、精肉に分けられる。また、加工品として流通する場合もある。
屠体
屠畜、屠鳥した動物の体を屠体(とたい)と呼ぶ。内臓などを除く前、除いた後のいずれとも屠体と呼ぶ。
枝肉
肉畜において、屠体から
内臓や原皮など、畜産副生物に相当する部位を除去したものを枝肉と呼び、多くの場合枝肉は正中線で左右に切断される。日本では、枝肉の段階で格付やせりが行われる。ウシの枝肉では、腎臓および周囲脂肪をつけたままにしておくかどうか、国ごとに慣行が異なり、日本では腎臓と周囲脂肪をつけたままにしておくのが一般的である。
部分肉
枝肉を、さらに部位ごとに切断し、余計な脂肪を除去するなどしたものを部分肉と呼ぶ。ウシやブタなどの畜種ごとに部分肉の取引規格が存在し、その規格に基づいて調製される。部分肉の規格は、カットの位置や呼称が国ごとに異なり、国ごとの歴史的な商慣行に基づき規格化されている。
精肉
部分肉を、小売などに適するよう、スライスや角切り、細切れ、挽肉などに調製したものを精肉と呼ぶ。
加工品
食肉をハム・ソーセージなどに加工したり、精肉を惣菜などに加工した状態で流通および小売されることも多い。
輸送

食肉の輸送は、生体のままで輸送する場合、枝肉や部分肉の状態でチルドで輸送する場合、あるいは凍結で輸送する場合がある。部分肉は真空包装で輸送されることも多い。

生体で輸送される場合は、基本的には農家から市場(屠畜場)までの輸送である。
格付

食肉は客観的な規格により格付を受け、その結果により価格が形成される。格付規格はいくつかの国で制定されているが、そのうちアメリカ合衆国オーストラリア日本のものについて述べる。
アメリカ合衆国

米国においては農務省 (USDA) による格付制度[注釈 1]が確立されており、牛肉については8段階で肉質が格付される。豚肉については日本と異なり脂肪交雑(霜降り)の基準も確立されている。
オーストラリア

豪州においては、Meat Standard Australia(MSA)と呼ばれる規格により格付が行われる。日本や米国と異なり、枝肉ではなく、部分肉の段階で格付されるのが特徴である。
日本

日本では、牛肉および豚肉について日本食肉格付規格[注釈 2]により格付が行われる。
牛肉の格付
牛肉の格付は、肉付きのよさに関する「歩留等級」をAからCで(Aがもっとも良い)、肉質の良さに関する「肉質等級」を1から5で(5がもっとも良い)、それぞれ判定することで行う。歩留等級はロースの大きさや皮下脂肪の厚さなどから、肉質等級は、枝肉を第6胸椎-第7胸椎間で切開した切開面の外観などから、それぞれ判定される。肉質等級においては脂肪交雑(いわゆる霜降り)、肉色、脂肪色、肉のキメ及び締まりなどにより判定が行われている。この格付方法であると、品質が高いが脂肪の少ない赤身肉の格が低いと見做されてしまう問題点がある。
豚肉の格付
豚肉の格付は、枝肉の段階で行うが、牛肉と違い切開などは行わない。枝肉重量や枝肉の外観、皮下脂肪の厚さなどから極上?等外の5等級に格付される。
加工

加工肉と呼ばれ、食肉は、その保存性や市場価値を高めるため加工されることがある。主要な加工品はハムソーセージである。保存性や官能特性を高める加工法として、塩漬加熱燻煙発酵、乾燥などが用いられる。
塩漬
塩漬には主に亜硝酸塩が用いられる。亜硝酸は食肉の色素と反応して美しい加工肉の色を生じさせるとともに、ボツリヌス菌の増殖を抑制させ、保存性を向上させる。
加熱
ソーセージ製造などの際は、ボイルによる加熱処理を行い、保存性や食感を向上させる。
燻煙
ソーセージハムベーコン燻製肉などのように、燻煙(スモーク)を行うことで、表面に雑菌をつきにくくなる。それとともに水分活性を低下させて保存性を高め、さらに独特の香気を付与して風味を向上させる効果もある。
発酵
主として乳酸発酵を行うことで、乳酸酸性として雑菌の繁殖を抑制するとともに、独特の発酵香気を付与して風味を向上させる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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