食肉
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1970年から2010年にかけての40年間で、牛肉生産は62.5%、豚肉生産は205%、そして鶏肉生産は545%の増産を示した[27]。どの種類も生産量はかなり増加傾向にあるが、なかでも鶏の生産は飛びぬけて急増する傾向にある。これは、牛や豚に比べ狭い場所で集中的に飼育できるうえ、この2種に比べて個体が小さいため価格が安く頭数を増やしやすいこと、食用鶏であるブロイラーは豚や牛に比べ少ない飼料で大きくなるため効率が良いこと。さらに宗教的背景として、ヒンドゥー教において禁忌とされる牛肉食やイスラム教において禁忌とされる豚肉食とは違い、鶏肉を禁忌とする宗教がほとんど存在しない[28](肉食全体を禁じる宗派を除く)ため、世界中のどの場所にも需要が存在して地域的な偏りが少ないことなどが挙げられる。

食肉生産は先進国においては需要の伸び悩みから生産量も横ばいあるいは減少傾向にあるが、発展途上国においては経済の成長と、それに伴う生活水準の向上によって食肉の消費が急拡大している。そのため食肉生産も急増を続けており、上記の食肉生産の世界的な拡大は発展途上国における生産量の増大をその主因としている。

FAOの2023年のレポートの分析によると食肉の需要は2040年頃までは高中所得国が牽引し増加し、その後2075年頃までは低所得国が牽引し増加すると予想されている。また、その後21世紀の後半では需要の減少がよそうされ、資源や環境の問題から減少の時期は更に早かる可能性もある[29]
消費量
消費統計

一人あたりの年間食肉消費量(2003年)[30]順位国一人当たりの
消費量 (kg)
1 アメリカ合衆国123
2 スペイン121
3 オーストラリア118
オーストリア112
デンマーク111
6 ニュージーランド109
7 キプロス108
8 アイルランド102
9 カナダ98
10 フランス98

一人当たり食肉消費の多い国には北アメリカ西ヨーロッパならびにオセアニアの先進国が名を連ねている。これは所得水準が高く肉をふんだんに食べることができる経済的条件と、肉食を好む食文化、遺伝的な胃腸の能力などの要因がある。こうした国々においては食肉消費量は多いものの、一人当たりの消費量はほぼ上限に達しているため消費量は頭打ちとなっている。一方、新興国においては一人当たり食肉消費量は先進国に比べて少ないが、経済的な成長に合わせ食肉消費量も急増する傾向にある。

日本の食肉消費は2013年には一人当たり30kg[31]であり、他の先進国から比較して4分の1から3分の1程度の消費量しかなく、群を抜いて低いものとなっている(さらに砂糖、果物などの植物性高エネルギー食材の消費も日本は群を抜いて低い)。また、この食肉消費の内訳は、日本人一人当たりで鶏肉12kg、豚肉12kg、牛肉6kgとなっている[31]
宗教圏や文化圏による消費量や生産量の偏り

食肉とは食用にする動物の肉のことを指すが、世界各地においてそれぞれの地域で育まれてきた文化的伝統がある。ある地域で珍重される食肉が他の地域においては全く食べられず、食品としてすら扱われないといったことは珍しいことではない。世界で最も一般的な食肉である牛肉、豚肉、鶏肉ですら、そういった地域差が存在する。こういった差異の中で最も顕著なものは、宗教的タブーによる制限である。たとえば牛肉は世界のかなりの地域において最も好まれる肉であるが、インドにおいてはヒンドゥー教が牛を聖獣としているため全く食べない人が多いばかりでなく、牛肉の生産・流通を法的規制や暴力的手段で阻止しようとする動きすらある[32]。一方、豚肉はイスラム教では不浄の食べ物として忌み嫌われる存在であるためイスラーム圏では食肉として扱わない。「ハラール」も参照

またある地域で、特定の種類の食肉が特に好まれ大量に生産されることもある。シチメンチョウは世界5位の生産量のある食肉であるが、生産及び消費は原産地でもある北アメリカ、特にアメリカ合衆国に片寄っており、2010年度の総生産量の48%がアメリカ一国で生産された[25]。羊肉はどの地域でもそれほど消費量が多い肉ではないが、例外的にオセアニア、特にニュージーランドにおいては突出して消費量が多く、牛豚鶏の三種とそれほど遜色ない消費量となっている。オーストラリアにおいてもニュージーランドほどではないものの、やはり羊肉消費は他国と比べて多い傾向にある[33]。中国人のなかの多数派(漢民族)は基本的に(イスラームやヒンドゥーでもなく)宗教的制約が無く、豚肉を好んで食べ、人口が多いので豚肉の世界消費量を押し上げている。

明治以降の日本だけに焦点をあてた場合でも、東日本では豚肉の消費量が多く、西日本では牛肉の消費量が多いとされる。ただし西日本でも、九州や沖縄では豚肉の方が消費量が多い[34]
代用
植物肉

鳥獣の身を使わず、類などから食肉や肉加工品に似せた味わいを持たせた「植物肉」が開発・販売されている[35]。将来予測される食肉不足、健康志向や菜食主義から鳥獣肉を避ける消費者向けの需要を見込んでいる[36]

こうした現代の技術で開発された加工食品だけでなく、植物性食材から肉に似せた料理を作る技術は、日本の精進料理や中華圏の素食(台湾素食など)に伝承されている[37]
培養肉

動物を殺傷せず食肉となる部位の細胞組織培養することで、工業的に生産する培養肉の研究が行われている。しかし、大量生産技術が確立していないこと、生産コストが高いなどの理由から一般的に普及はしていない。
マイコプロテイン


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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