食肉
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野生動物の食肉としては、イノシシシカクマウサギなどがあり、狩猟されて食される。また、家禽でない鳥類も狩猟により捕獲して食用に供される。フランスなどヨーロッパではこれら野生動物の肉をジビエと呼んで愛好してきた伝統があり、日本でも獣害対策の一環として商品開発と消費の促進が進められている[3]

オーストラリアでは年間300万頭分以上のカンガルー肉が商業的な狩猟で生産されている。地域によっては食用コウモリもいる。
他の鳥類

野生のさまざまな鳥類が、世界ではハンターによって狩られ、供給されている。フランスでは野生の鳥類の肉も「ジビエ」と呼び愛好する。

マガモアヒルヤマウズラキジライチョウカラスハトなどである。日本では江戸時代は(牛肉や豚肉が全然食べられていなかったので)(カモ)の肉「鴨肉」が食べられ、鴨肉に一定の評価があり、鴨鍋(かもなべ)が高級店で提供されたり、鴨蕎麦(かもそば)が老舗そば店などで提供されている。
その他
海洋哺乳類
クジライルカトドアザラシなど、海洋哺乳類の可食部位。魚介類に分類され、食肉には分類されない場合もある。「鯨肉」も参照
爬虫類
ワニヘビカメなどの肉は、野生のほか飼育されて食用にされることもある。
両生類
カエルも養殖され、太ももなどの肉が食用に供されることがある。「食用ガエル」も参照
魚介類
魚介類甲殻類など水生生物の食用となる身は、食肉とは呼ばれないことが多い。詳細は「魚介類」および「魚肉」を参照
成分と機能

本項では食肉の主な成分と、それらが栄養や味および香り、さらに健康機能などにおよぼす影響を述べる。

生食をすれば、その鳥獣の種類や飼育環境、鮮度によっては寄生虫食中毒の危険性がある[4]
主な成分

食肉の主な成分はであり、他にタンパク質脂質無機質ビタミンなどで構成される。
タンパク質
食肉のタンパク質は、主に筋線維を構成するタンパク質、筋漿に溶解しているタンパク質、および結合組織を構成するタンパク質に分けられる。
脂質
食肉中の脂質の多くは中性脂質であるが、それらのほとんどは「筋間脂肪組織」および「筋肉内脂肪組織」(いわゆる霜降り)に分布する。霜降りの存在により、脂肪の含有量はバリエーションが大きく、牛肉のロース(胸最長筋)では40%を超えるもの、豚肉のロースでも近年は10%を超えるようなものも出てきている。また、リン脂質も含まれるが、これらは細胞膜などの膜に局在している。
無機質
食肉中の無機質で特に重視されているのはである。実際にはヘム鉄の形態で、ミオグロビンおよびヘモグロビンとして存在している。
ビタミン
とくに豚肉において、ビタミンB1(チアミン)が多く含まれることが良く知られている。
栄養学的な特徴「アミノ酸スコア」も参照

家禽(鳥)や魚は含まない、牛豚羊馬ヤギの肉である赤肉については、摂取量が多いと結腸直腸がん、心臓疾患、糖尿病のリスクの高まりから、鳥魚豆よりも健康を保つのに最適な食事ではないとされる[5]。肉に含まれるヘム鉄は、発がん性物質のN-ニトロソ化合物ニトロソアミンなど)の生成を促す[5]

霜降りの多い食肉は脂肪の含量が多すぎることから、健康状態(運動不足など)によっては極端に脂肪の多い食肉を摂取しないよう指導する場合もある。動物性脂肪の摂取のし過ぎは生活習慣病との関連から問題視されている。

動物性の脂肪より植物性の油を多めに「健康づくりのための食生活指針」1985年[6]

脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう「食生活指針」2000年[7][8]

豚肉は日本人に欠乏しがちなビタミンB1の優れた給源である。
官能特性と成分

味や香り、見た目といった食肉の官能特性は、含まれる成分によりもたらされるものである。

食肉の呈味成分としては、
酸味を呈する乳酸をはじめとする有機酸うま味を呈するアミノ酸核酸イノシン酸)およびペプチド塩味を呈する無機塩類、甘味を呈する還元糖などがある。実際にはうま味や酸味が重要だと考えられている。脂肪のおいしさも想定されているが、それが味であるのか香りであるのかについては判然としない。
香り
食肉を特徴付ける「肉らしい香り」は複数の成分によってもたらされるもので、いわゆる核となる成分は存在しないと考えられている。肉の種類などによっても成分は異なり、一概に説明できないのが現状である。肉の悪い臭いについては、オスに由来するいわゆる性臭や、糞便に由来するインドール系の臭気、および保存によって生じる酸化臭などが知られており、それぞれ成分の同定が進められている。
食感
食肉の食感は、主に構成するタンパク質のうち、筋線維を構成するものと、筋肉内結合組織を構成するタンパク質によってもたらされているものと考えられている。

外観
食肉を特徴付ける赤い色はミオグロビンによるものである。ミオグロビンはその誘導体の種類により呈する色が変化するが、好まれる鮮やかな赤色は、ミオグロビンが酸素と結合したオキシミオグロビンによるものである。オキシミオグロビンはさらに酸化されるとメトミオグロビンになるが、このメトミオグロビンは、消費者に好まれない褐色を呈する。食肉を放置すると色が悪くなるのはこのためである[9]
畜種による官能特性の違い
動物種により味や香り、食感が異なると思われているが、実際に異なるのは香りと食感であり、味は動物間による違いが無いことが明らかにされている。
機能性

食肉を機能性食品として取り扱う例はあまり多くないが、前述の鉄の吸収が良い点などを機能性として紹介する例がある。
食肉の生産

21世紀初頭では、主に畜産によって生育させられた動物は、屠畜場(食肉工場)へ送られ、屠殺(屠畜、屠鳥)され解体され、食肉が製造される[10]。そして必要に応じて熟成を施したり、ハムなど加工肉の原料となる。

ジビエ(野生動物の狩猟による肉)の料理を提供するレストランのシェフのもとに直接に届けられることも多かったが、ジビエ類の解体・熟成を専門に行う業者もいる。
肥育

肥育とは、食肉を得ることを目的として家畜を飼養管理することである。誕生直後から肥育を行うことはあまり無く、一般的に肥育に適する月齢まで育成したものを肥育に供する。肥育期においては、肉が十分つくだけでなく、肉質が十分高まるような管理が行われる。牛肉1キロを得るためには、その10倍の穀物が必要とされている[11]

もともと乳牛であったものがその用途に適さなくなり、食肉として出荷する廃用牛であっても、そのまま出荷せずに一定期間の肥育を行ってから食用とされることがある。

肉質は遺伝的因子や飼料成分、および飼養環境などにより変動する。
熟成

熟成は、死後硬直したままの肉では食用に供せないため行われる製造工程である。硬直中の肉はさらに低温で保存すると、再び軟らかくなり(解硬)風味が増す。これは筋肉細胞に残存するタンパク質分解酵素プロテアーゼにより筋源繊維が小片化するためであると考えられているが、その他にも筋肉中のCa2+イオンが関与しているとする説もある[12]。熟成は基本的に枝肉の段階で行われる。

熟成に要する期間は畜種ごとに異なる。2?5℃で貯蔵した場合、牛は7?10日、豚は3?5日、鶏は半日ほどで解硬される。ウシなどの場合は、解硬のみならず、熟成によって生じる独特な香気を十分に発生させるため、十分解硬した後もさらに長期に熟成させることもある[13]
流通北アメリカのスーパーマーケットに並ぶ精肉オーストラリアスーパーマーケットに並ぶカンガルーの肉
流通形態

食肉の流通形態は、大きく屠体、枝肉、部分肉、精肉に分けられる。また、加工品として流通する場合もある。
屠体
屠畜、屠鳥した動物の体を屠体(とたい)と呼ぶ。内臓などを除く前、除いた後のいずれとも屠体と呼ぶ。
枝肉
肉畜において、屠体から
内臓や原皮など、畜産副生物に相当する部位を除去したものを枝肉と呼び、多くの場合枝肉は正中線で左右に切断される。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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