飛行機
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主翼詳細は「主翼」を参照大型ジェット旅客機の主翼と各装置類、1ウイングチップ・2補助翼(低速用)・3補助翼(高速用)・4フラップトラックフェアリング・5前縁フラップ(クルーガ・フラップ)・6スラット・7後縁フラップ(内側)・8後縁フラップ(外側)9スポイラー・10スポイラー(エアーブレーキ用)

主翼は、クッタ・ジュコーフスキーの定理により翼の上下に空気の循環が生じ、見かけ上、翼の下側より翼の上側のほうが空気の流れが速くなる断面形状をしている。(「翼の上面は下面より膨らんでいるが、上側を通る気流と下側を通る気流は同時に翼後端に到達するので経路の長い上側の気流の方が速くなる」という俗説は誤り。そもそも上側の気流と下側の気流が同時に後端に到達するという前提に根拠がないし、背面飛行や紙飛行機の飛行などを説明できない。)ベルヌーイの定理より、空気の流れが速い上部の圧力は下部より下がり、この圧力差により飛行方向に対して上向きの力(揚力)を発生する。一般に、低亜音速機に用いられる翼断面形(翼型)は上側が膨れた状であるが、飛行速度や用途によって様々な翼型がある。翼型と翼平面形(上から見た主翼のカタチ)は飛行特性に大きな影響を与える。効率的に揚力を発生させるには細長い平面形状が適する。主翼の縦と横の比率を「アスペクト比」(「縦横比」とも)と呼んでおり、翼幅2/翼面積で表される、アスペクト比が大きいほど、主翼に発生する揚抗比(揚力と抗力の比)が大きくなり、主翼の翼端渦により発生する誘導抗力が小さくなる。そのため、高く遠くへ飛ぶ飛行機は、主翼のアスペクト比を大きく設定した細長い翼が有利である[9]東京大学教授の鈴木真二によると、ライト兄弟の時代からアスペクト効果は理解されていたという[10]。ただし、あまりアスペクト比を大きくすると強度の問題等が出てくる

翼を長くすると揚力の面では優位であるが、当然の結果として翼の付け根の負荷が増大することは避けられない。高速で飛ぶ飛行機の主翼には、高速での空気抵抗が少ない後退翼が採用される。つまり、後退角を付けると主翼の前縁に音速付近での直角方向速度成分が少なくなり、衝撃波の抗力を少なくできる利点がある(この利点から主翼以外にも後退翼が採用される)。さらに揚力と速度の間の関係から、超音速機は速度が速い分翼が小さくて済む。このため、超音速機はではアスペクト比が極端に少ないデルタ翼やオージー翼が採用される。逆に揚力の面を重視する場合、例えば航続距離世界記録機の航研機や、高々度の極狭い速度領域を飛行するスパイ偵察機「U-2」ではアスペクト比(縦横比)の大きい翼が採用される[11]

翼の構造には、強度と軽量性を両立させるため、後述する胴体と同じくセミモノコック構造が採用されることが多い[12]

翼桁(ウイング・スパー): 翼の翼幅方向の曲げ荷重せん断力を主に受け持つ部材。小型機では片翼につき1本が多い。大型機では2?3本のものや、もっと多くのものがあり、補助的なものはストリンガと呼ばれる。

翼小骨(ウイング・リブ): 桁と直交する薄い板で、翼型をしており、翼型を保持する上で必要である。外板およびストリンガからの空気力を翼桁に伝える役目を持っているが、翼型を保持するのみで空気力を翼桁に伝える役目を持たない補助小骨がある。翼幅方向に多数が配置される。

外板(スキン): リブの表面を覆う薄い板。ねじり荷重を受け持つ。

翼桁・翼小骨・外板によって応力外皮構造であるトーション・ボックス構造を構成している。トーション・ボックスとは、ねじり荷重を機体に伝達する箱状の構造であり、曲げ・せん断力・ねじりに強くなっている。種類としては、1つの桁に前縁外板を取付けた構造の単桁応力外皮構造、前桁と後桁を横に配置して、その間の上下に外板を取付けた構造の2本桁応力外皮構造、前桁と主桁と後桁を横に配置して、その上下に外板を取付けた構造の3本桁応力外皮構造、2本桁応力外皮構造と3本桁応力外皮構造にストリンガを外板の内側の翼幅方向に取付けることでストリンガと外板に曲げ荷重を負担させるマルチストリンガ構造がある。翼桁は機体胴体内にある主翼の荷重を胴体に伝達する構造部材のキャリスル・メンバに、補助桁は機体胴体内にある取付け金具にそれぞれ取付けられるが、中・大型機では、キャリスル・メンバをトーション・ボックス構造にしており、左右の主翼をこれに取付けている。また、翼に発生する揚力などの空気力は、 外板→ 翼小骨 → 翼桁 → 胴体と伝わる。

翼桁の太さ・外板の厚さと材質はその部分にかかる応力に応じて設定され、翼の先端近くでは桁は細く外板は薄く設定される。最近ではこれらの構造を大きな金属槐から直接削り出す工法も採用されている。飛行中は主翼を上に曲げる方向に揚力が働くため、下面外板には引っ張りに強い素材、上面外板には圧縮に強い素材を選定する。戦闘機のような薄翼では、各場所にかかる応力に応じて素材を組み合わせて使う複合材料が多用される。

主翼内部のトーション・ボックスを耐燃料性シーラントにより密閉構造にして燃料タンクに使うことが多く、この方式をインテグラルタンクと呼ぶ。また主翼にエンジンや主脚などの降着装置を装備することが多い。攻撃機などでは主翼に兵装爆弾ミサイル増加燃料タンクをずらりとぶら下げているが、いずれの場合も主翼には充分な強度が要求され、脚や兵装の取り付け部は充分な補強が実施されている。

現代の飛行機は、特殊な場合を除き主翼は左右各1枚(単葉)である。主翼後部(後縁部)にはエルロン(補助翼)や、主翼の前部と後部には、離着陸の低速時に揚力を増大させるフラップやスラットなどの高揚力装置が装備される。主翼上面には、着陸滑走時や飛行中にエアーブレーキを掛ける際や主翼の揚力を減らすためのスポイラーを備えるものもある。また、また、主翼と胴体の結合部での渦の発生による抗力の増加を防ぐためのフィレットや主翼端での渦流の発生による抵抗を減らすためのウイングレットを装着するものもある。
操縦装置(補助翼、昇降舵、方向舵)

飛行機の操縦装置は、機体の3軸まわりの姿勢(ピッチングヨーイングローリング)を変化させるための主操縦翼面である補助翼・昇降舵方向舵を操作する主操縦装置と、エンジンおよびスロットルの操作や、フラップ、エアーブレーキ、タブスポイラスラットといった補助操縦翼面を操作する副操縦装置とに分けられている。後者はそれらを操作した場合の表示装置が必要である[注 6]人力操縦装置の索操縦系統での操縦翼面(補助翼、昇降舵、方向舵)の動き。操縦席から操縦翼面の間は2本の索による往復式で動かされている

また、操縦装置の種類は人力操縦装置、動力操縦装置、ブースター操縦装置、フライ・バイ・ワイヤ操縦装置に大別される。人力操縦装置は小・中型機で使用されており、操縦席と操縦翼面の間を索(ケーブル)、滑車、またはロッド、レバー等を利用したリンク機構で繋ぎ[注 7]、操縦翼面を人力だけで操作するものであり、工作や整備が容易で、信頼性が高い長所がある。これには、索と滑車を利用する索操縦系統、プッシュ・プル・ロッドを利用するプッシュ・プル・ロッド操縦系統、トーション・チューブと呼ばれるチューブを利用するトーション・チューブ操縦系統がある。索操縦系統は軽量で遊びがなく、方向転換が自由で安価である。一方で摩擦摩耗、スペースが必要であること、予め張力が必要で伸びが大きいことが短所である。また索は操縦席と操縦翼面との間で2本使われ、往復式で使用される、これは、1本の場合だと飛行中での急激な姿勢変化により、重力加速度が索に掛かることで索がたるみ、操縦翼面が勝手に動いてしまうためである。プッシュ・プル・ロッド操縦系統は、摩耗が少なく伸びがない。一方で重く遊びがあり、高価である短所がある。主に運搬で主翼などを外す必要があり、組立の際に調整を簡単にすることができるグライダーで使用されている。トーション・チューブ操縦系統は、レバー型式とギア型式とに分かれる。前者は主翼後部に取付けられたフラップを操作するフラップ系統に使用されている。後者は摩擦力が小さいのが特徴で、方向転換の大きい箇所で使用されている。

動力操縦装置は、大きな操縦力が必要な大型機や超音速または亜音速域で飛行する飛行機で使用されている。操縦席と操縦翼面の間に設けたリンク機構を介して飛行機の主油圧系統から供給される高圧油圧により作動する油圧サーボ・アクチュエータを作動させることにより、操縦翼面を作動させるものである。ブースター操縦装置は、動力操縦装置の一種であり、操縦席と操縦翼面の間は、人力操縦装置と同じリンク機構を介して直接操作するが、操縦者の操舵力に比例した力を高圧油圧とサーボ・バルブにより倍力して、油圧アクチュエータによりその力を操縦翼面に加えるものである。フライ・バイ・ワイヤ操縦装置とは、機械的なリンクに代え電線が操作量を伝達するものであり、操縦装置への入力が発信器で電気信号に変換され、その電気信号が、加速度と傾きを検知するセンサーとコンピュータを組み込んだ飛行制御コンピュータを介して、油圧サーボ・アクチュエータに伝達されて操縦翼面を作動させるものである。
補助翼エルロン(補助翼)の動きとそれに伴うローリング運動。

補助翼は主翼の左右、後ろ側の縁に、ヒンジによって付けられている。補助翼というのは、一方を上げると他方が下がる仕組みになっている。例えば、右側を下げるとそれと連動して左側が上がり、左側を下げるとそれと連動して右側が上がる。例えば左側の補助翼を下げ、右側の補助翼を上げると、左側の翼の揚力が増し、右側の翼の揚力が減るので、機体を右に傾ける向きのモーメントが働く。このモーメントによって、機体を右に傾けることも可能であるし、左に傾き過ぎていた機体を水平に戻すことも可能となる。また、大型のジェット機の場合には、主翼の外側に低速域用の補助翼と内側にあるフラップの間に全速度域用の補助翼の2つの補助翼を装備しており、低速での飛行の際には2つの補助翼が作動し、高速での飛行の際には外側の低速域用の補助翼はロックされ、内側の全速度域用の補助翼だけが作動する。両者とも、補助翼の作動と同時に傾ける側の主翼の上部に装備されたフライト・スポイラーを作動させて機体を傾かせる。また、補助翼は機体を旋回させる際には必ず使用され、旋回する前に補助翼により機体を傾かせてから方向舵を作動させて旋回する。
尾翼

上下方向に装備されるものを垂直尾翼、左右に伸びるものを水平尾翼と呼んでいる。


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