飛翔
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米国のライト兄弟が、彼らは先行する人々の試みの失敗などから学びつつ、動力つきの「ライトフライヤー号」を制作し、1903年12月17日にそれに乗って飛行することに成功したのである。その飛行の方法というのは翼を固定した機体に、動力によって回転するプロペラをつけて推進力を作り出し、飛行するという方法であった。

気球の場合でも動力付固定翼機の場合でも、ひとたび飛ぶための新しい方法を具体的に示す人が現れると、それを熱心に模倣して、さらに改良する人が続出した。この二百数十年の間に人類は様々な飛行道具そして飛行方法を開発してきた。

現在では航空機を用いて空を飛ぶことは、極めてありふれたことになっており、世界中で、民間機・軍用機の飛行をあわせれば、1日あたり数十万回以上は飛行が行われているだろう、と推計されている[6]。( →#人工物の飛行

以下、動物の飛行(飛翔)から始め、後半では人類が道具・乗り物を使って行う飛行まで、飛行(飛翔)の具体的について説明してゆく。
動物

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しばしば、動物の飛行(飛翔)はを羽ばたかせるそれと、羽ばたかせないものに大別されている。

羽ばたかせることで推進力を生み出すのは「羽ばたき飛行」と分類され、羽ばたきを行なわないほうはさらに細分化され、滑空(グライディング)と「帆翔」(ソアリング、上昇気流を利用した飛行)に分けられている。

なお、前後に移動することなく、空中の一点に静止する行動は「ホバリング」(停止飛翔)と呼ばれる。ホバリングは一般的に、羽ばたいたり、向かい風を受けることによって行われている。
飛行(飛翔)方法の分類

動物の飛行(飛翔)の仕方を表にまとめると、例えば次のようになる[要出典]。

羽ばたき飛行鳥類の多く、昆虫類コウモリ
羽ばたきによるホバリングごく小型の鳥類や、昆虫の一部
帆翔大型の鳥類の多く
滑空モモンガムササビフクロモモンガヒヨケザルトビトカゲトビウオ、トビイカなど

大型の渡り鳥がV字型や斜め一直線に編隊を組んで飛翔しているのが見られるが、前を飛ぶ鳥の翼端渦による吹き上げによって後続する鳥のエネルギーの節約になっている、などと言われる。
昆虫の飛行(飛翔)ハナムグリの一種en:Cetonia aurataが飛び立つ瞬間の連続写真ハナアブの飛行

概説で説明したように、3億年前には既に数十cmもある大きなトンボが地球上を飛び回っていたことが化石から判明している。

昆虫の多くが現代でも飛んでいる。昆虫の翅は基本的に2対4枚で構成されており、飛び方も多様である。

トンボは前後の翅を別々に動かして飛ぶ方式をとっており、原始的特徴を多く残しながらも全ての昆虫の中でも高度な飛翔を行う。チョウでは、前後2対の翅を同時に上下させ、上昇と滑空を繰り返して移動する。これによって激しく上下するのでチョウの飛翔はしばしば「ひらひら」という擬態語で表される。翼面荷重がとても小さく落ちる速度が遅いので、直接下向きの気流を発生させている。他の多くの昆虫も、前後の翅を同時に動かすことによって実質的に1対の翅として使う。

ネジレバネハエの仲間では、前翅または後翅が平均棍に変化している。ハエ目の昆虫が極めて高度な飛翔を実現しているのはこの平均棍を持つことによると考えられている。

また、コウチュウ目の昆虫は飛行時に鞘翅と呼ばれる固化した前翅を広げる。鞘翅は主に揚力を増やす役割を担っているが、左右の迎え角を変えることにより体勢を整えたり、風を受けてエアブレーキの役割を果たしたりするので、飛翔能力に長けていない甲虫にとって不可欠なものとなっている。これに対し、ハナムグリ亜科に属する多くの甲虫は、鞘翅をわずかに持ち上げて腹部との間に隙間を作り、その下から後翅を広げて後翅のみで飛翔する方式をとる。これによって他の多くの甲虫と比べて格段に機敏な飛翔が可能になっている。

鳥類といった動物が体を水平にして飛翔するのに対し、カブトムシは体を垂直にして飛翔する特徴がある。
体重の軽い脊椎動物の飛行(飛翔)ユリカモメ

体重が1kgより軽い脊椎動物では、飛翔は羽ばたきによって行なわれる。ずっと羽ばたいて直線的に飛ぶものと、羽ばたきと翼を閉じての滑空とを繰り返して波状に飛ぶ(波状飛行、バウンディングフライト)をするものとがある。直接空気を後ろへ掻いて推進力を得ていると思われがちだが、小型の鳥においては空気中で翼を傾けながら上または下に打ち下ろし、翼を前方に滑らすことによって推力を得ている。

もっと軽いアナホリフクロウハチドリでは、ホバリングが行なわれる。スズメヒタキなどでも瞬間的にホバリングが行われることもある。すべての飛翔をホバリングでこなすためには、体重が10g以下であり常に栄養を取っていなければならない。ハチドリが花の多い熱帯から生息地を広げられないのはこのためである。
体重の重い脊椎動物の飛行(飛翔)トビの帆翔

体重が重い脊椎動物では、離陸するときに飛行機のように滑走してから飛び立ったり、高いところから飛び降りたりするものが多い。平常時も羽ばたくことはほとんどなく、滑空(滑翔)したり、グライダーハンググライダーのように上昇気流を利用したりするものがある。これは、体重が重いほど羽ばたきづらくなるためである。

ワシタカ科の大型の鳥では太陽の熱で暖まった地面から発生する上昇気流を翼で受けて飛翔する。そのため、翼は単位面積あたりで発生する空気力(翼面荷重)が小さい。羽ばたきによる飛翔は数秒から数十秒しか持続できない。

カモメなどの海鳥は長時間の滑空を行うが、こうした鳥はアスペクト比(縦横比)の大きな翼をもつとともに、翼と胴体の継ぎ目などが滑らかであり、揚抗比が大きく滑空比が高い(1 m 下降する間に何メートル進めるか、が滑空比)。また、海からの風が船べりや防波堤、崖などにあたってできる上昇気流で空中にとどまる(斜面滑翔)こともある。餌をあげなくても観光フェリーなどにカモメが集まるのは、海上が障害物に乏しく、地熱による上昇気流もないためである。このほか、ミズナギドリ目の鳥が行う、動的滑翔(ダイナミックソアリング)と呼ばれるウィンドシアを利用した滑空がある。ノスリ

タカ科の鳥はアスペクト比がそれほど大きくないが、初列風切羽を広げることによって翼端渦を効果的に整形ないし抑制し、揚抗比を高めているとも言われている。単純に翼幅が大きくならなかった理由としては、開けた場所での飛行が多い海鳥と違い、林間など障害物の多い所での飛行に適応したためなどと推測されている。

プテラノドンなどの大型翼竜は体重と翼の大きさから、滑空しかできなかったと考えられていた時代がある。しかし、研究が進むと、数分に一回程度の割合で、羽ばたきをしているとの研究も出てきている[7]
羽ばたきの回数

建築家ピーター・S・スティーヴンスの著書『自然のパターン』[8]によれば以下の昆虫類および鳥類の、羽ばたきの回数は下記のごとくである。単位はいずれも「回 / 秒」。

ユスリカ: 1046

イエカ: 587

ミツバチ: 230

ハチドリ: 100

スズメ: 15

コウノトリ: 2?3

コンドル: 0

人工物の飛行

次に人類が実現した飛行について説明する。人類が、人間の乗らない物体を飛ばすことは古来行われてきた。石やの投擲、弓矢の発射を除き、ある程度長い時間滞空できるものとしては、や小型の熱気球天灯)がある(後者は「風船の歴史」も参照)。

概説で述べたように、人間の身体には空を飛ぶための羽根・翼が備わっておらず、生身では飛行できない。長らく鳥のように飛ぶことを夢見てきた人類は(オスマン帝国での一部の発明家や、レオナルド・ダヴィンチによる滑空装置の実験などが単発で行われたものの、あまりに危険な実験で、装置の制作も人々に広まらず、後継者が続かず歴史に埋もれてしまい)、ようやく自分が乗り込んで空中を移動できるような装置が多数作られるようになり広まったのは18世紀のことであり、それは大型の熱気球であった。

動力によって推進される固定翼機による飛行が実現したのは20世紀に入ってからである。米国のライト兄弟が固定翼方式の機体にエンジンをつけたライトフライヤー号を制作して、1903年12月17日に初飛行を行ったのであった。

特にこのライト兄弟の飛行以来1世紀ほどの間に、人類は飛行に関して様々な知識やノウハウを蓄積してきた。飛行を研究する工学の一分野を航空工学と言う。


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