上記のケースに当てはまらず、本土と飛地が同一の陸地に所属しないケースである。これが飛地かどうかについては、微妙なケースである。以下にさらにケースを細分化する。
ある行政単位Bが、複数の島にわたって複数の領域をもつとする。そのとき、島に存在する行政単位がBだけである島B1を飛地と呼ぶことはまずない。例えば、広島県廿日市市における厳島、東京都における伊豆大島などは飛地ではない。
しかし、その島に複数の行政単位の境界線が通っている場合は、飛地となり得る。具体的には、島B2の両側に、複数の行政単位BとGが存在するとする。BとGは島B2にそれぞれ領域を有しており、島内にそれらの境界線が引かれている場合は、飛地とされる可能性がある。例えば、大阪府の関西国際空港の空港島とそれを分断する対岸の自治体(泉佐野市・田尻町・泉南市)は、空港島をめぐって交通が分断されていることもあって、飛地を構成しているといえる可能性がある。また、瀬戸内海において岡山県と香川県の県境で分断された井島なども、場合によっては飛地とみなされることもある[2]。
また、橋ができたが故に飛地とみなされる可能性がある。行政単位Bが領有する島B3に対し、同一の陸地の別の行政単位Fから橋が架けられた場合、本土Bと島B3は行政単位Fを経由して連絡することになるため、飛地と呼べる可能性がある。実例として長崎県松浦市の福島があげられる。福島には境界線はなく、基本原則にあてはめれば飛地ではない。しかし、1967年に福島と佐賀県伊万里市の間に橋がかけられた。これにより本土と離島との行き来が可能となったが、この経路を使う場合、伊万里市を通らねばならない。なお、2008年時点で、陸路・海路とも、福島と伊万里市を結ぶ交通手段はあるが、福島と松浦市は直接結ばれていない[2]。このほか、大鳴門橋開通(1985年)から明石海峡大橋開通(1998年)までの期間における淡路島なども、所属する兵庫県側ではなく四国側のみ橋で繋がっていた例としてあげられる。 本土と海峡や川などによって分断されているだけの領域も飛地である可能性がある。例えば、千葉県野田市は、利根川右岸が本土であるが、木野崎地区が利根川を越えて左岸側にもかかっている。この野田市の利根川左岸の領域は、飛地と呼べる可能性がある。しかし、仮定の話ではあるが、もしも、この利根川左岸の領域が、本土と橋などで連絡した場合は、これを飛地として扱うかは意見の分かれるところである。 主に内陸部の飛地において発生しうる現象が二重飛地である。ある行政単位Eの飛地が、E近傍の別の行政単位Hの領域の内部にあるとする。このHの内部にあるEの飛地E1のさらに内部にHの領地H3が存在する場合がある。その場合、領地H3は「飛地に周囲を囲まれた飛地」であり、二重飛地と呼ばれる[2]。例としては、大阪府・兵庫県の大阪国際空港内における、豊中市内部にある池田市の飛地の内部にある豊中市の二重飛地、オマーンのマダ内に位置するアラブ首長国連邦のナワなどがある。 また、上述の「Hの内部にあるEの飛地E1のさらに内部に、Hの二重飛地H2」があり、さらにそのH2の領域に完全に囲まれる形でEの領地E2が存在する場合、「飛地の中の飛地の中の飛地」、すなわち三重飛地となる。三重飛地の実例はインドのダハラ・カグラバリが世界唯一とされるが、すでに解消されている。 封建制下においては、同一の君主の所領が各所に分散していることは珍しくなかった。国民国家形成の際に旧来の領邦の境界を引き継ぐこともあり、その際に領土や行政区画に飛地が残ったという事例がヨーロッパ・インド・日本に多いようである。 その他の要因としては以下のようなものがある。
対岸飛地
二重飛地・三重飛地
発生する要因
その他エルム・ポイント。アメリカ・カナダ国境を北緯49度線を基準にした結果、飛び地と化した岬。
河川の流路変更によるもの(アメリカ合衆国ホーコン・トラクトなど)。
境界線を策定した際に、陸地の形と無関係に緯度・経度などを一律に基準としたため、海や湖に阻まれて行き来できない場所が飛び地化したもの(アメリカ合衆国ポイントロバーツ、エルム・ポイントなど)。
境界線を策定した際に、住民の民族や宗教を基準としたため発生したもの(ガザ地区、ナヒチェヴァン自治共和国、東パキスタン(現バングラデシュ)など)。
領土の買収によるもの(アメリカ合衆国アラスカ州など)。
貿易・防衛拠点として確保した後、周囲の国に返還されなかったもの(スペインのセウタ、イギリスのジブラルタルなど)。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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