風疹
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PCR法、ウイルス培養は一般的ではない[10]

急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿からRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などの方法で病原体の遺伝子を検出する。早期診断に有用であるが、実施可能な機関は少ない[11]

鑑別診断

麻疹(はしか)、デング熱突発性発疹、コクサッキー・エコー・アデノウイルス感染、伝染性紅斑猩紅熱
合併症

妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こす。また関節炎血小板減少性紫斑病(1/3,000 - 5,000人)を合併する可能性があるほか、急性脳炎を起こす(1/4,000 - 6,000人)ことがあり、極めてまれに重篤な状態に陥る。
先天性風疹症候群先天性風疹症候群の一つ・白内障になった新生児の眼詳細は「先天性風疹症候群」を参照

妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、90%の胎児に様々な影響を及ぼす。この先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の典型的な三大症状は、心奇形・難聴白内障である。11 - 16週までの感染では10 - 20%に発生する。妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされる[10]

診断は、新生児血清IgM特異抗体検出で確定診断可能。エコー下穿刺液によるPCR法で胎内診断も可能である。しかし、先天性風疹症候群を容易に再現できる動物モデルが存在していないため、発症機序は解明されていない[12]

1941年にグレッグによって、新生児に白内障や心奇形が発生したと初めて報告された。成人でも30 - 50%程度の無症状感染者[9]があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得る[13]。また、出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける[6]とされている。
先天性症状

胎内死亡

流産

心奇形(
動脈管開存症肺動脈弁狭窄症が多い)

眼異常

白内障

緑内障

網膜症(脈絡網膜炎)

小眼球症


聴力障害(感音性難聴

脳性麻痺

髄膜脳炎

低出生体重児

インスリン依存性糖尿病

注意点

妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続される。
治療

特異的な治療法はなく、症状を緩和させる対症療法のみ。発熱・関節炎に対しては、解熱鎮痛剤が用いられる。
ワクチン接種による予防

風疹は、ワクチンで予防可能な感染症で予防接種が唯一の予防法である。幼小児期に予防接種が行われている。世界では、MMRワクチンに含まれた形で2回接種を行っている。なお、生ワクチンの効果は完璧なものではなく、2013年春に島根県の保育園で風疹ワクチンを接種した園児の集団感染が起きた事例が報告されている[14]。だがワクチン接種は、流行防止に唯一の予防法に変わりなく、引き続き予防接種の強力な推進が必要である。

妊娠可能年齢の女性で、風疹抗体がない場合や抗体価が低い場合[15]、ワクチン接種は先天性風疹症候群を予防する観点からも強く推奨されているが、妊娠中のワクチン接種は避ける。女性はワクチン接種後2ヶ月間の避妊が必要。2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からはMRワクチンを接種することとなった。授乳中の母親がワクチン接種を受けた場合、母乳を飲んでいる赤ちゃんに、ウイルスが感染し赤い発疹が出ることがあるが、重い合併症は起こさない[16]
世界保健機関の取り組み

世界保健機関(WHO)はワクチン予防可能疾患の制御に取り組んでおり、風疹の排除を「良く機能したサーベイランス制度の下で,、ある地域において12カ月以上にわたって土着の風疹ウイルスによる伝播が認められず、その伝播に伴った先天性風疹症候群(CRS)の発生が認められないこと」と定義している[17]。6つのWHO地域ごとの風疹ワクチン接種率には大きな開きがある[17]
アメリカ地域
アメリカ地域では加盟国の全35カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が予防接種スケジュールに導入されている[18]。2009年に風疹排除状態となり、2015年4月に風疹およびCRSの排除達成が宣言された[17]。アメリカ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は92%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]。なお、アメリカ合衆国では、風疹を含む指定の予防接種の接種記録が確認できない場合は、永住権が取得できない[19]
ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域では加盟国の全53カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が予防接種スケジュールに導入されている[18]。ヨーロッパ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は94%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
東地中海地域
東地中海地域では2019年末現在で5カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されていない[18]。東地中海地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は42%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
南東アジア地域
南東アジア地域では加盟国の全11カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されている[18]。南東アジア地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は12%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
アフリカ地域
アフリカ地域では2019年末現在で16カ国で風疹含有ワクチン(RCVs)が導入されていない[18]。アフリカ地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は10%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
西太平洋地域
西太平洋地域では日本など加盟する37の国と地域すべてで風疹含有ワクチン(RCVs)の定期接種が導入されている[18]。西太平洋地域での2014年の対象年齢群における風疹ワクチン接種率は91%だった(WHO, WER 90: 617-632, 2015)[17]
日本でのワクチン接種

日本での風疹ワクチンの接種は当初、女性のみが対象とされていた。1994年より男性もその対象となったものの、接種率の低い成人男性を中心に風疹の流行が繰り返されている。男性が対象に含まれた際には併せて対象年齢が満1歳以上7歳半未満に変更されたのだが、中学生に対する接種は経過措置として継続された。しかしこのとき、それまでの集団接種から個別接種へと変更されたこと、またMMRワクチン接種による重度健康被害の多発により予防接種の安全性に懸念が持たれ、接種率が低迷した時期が存在したためである。

このため、妊娠を希望する女性や配偶者などの同居者を対象に、地方自治体独自に抗体検査やワクチン接種費用の助成が一部で行われるようになり、さらに2019年度から3年間の時限措置として、ワクチンの集団予防接種を受ける機会のなかった1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性を、公費による無料抗体検査、予防接種(第5期)の対象者として追加した[20]
本則接種


1977年(昭和52年)4月1日に、女子中学生を対象に風疹単価ワクチンの集団接種が開始された。

この世代の男子中学生は、ワクチン接種の対象外で抗体保有率が少ないことから、上記の第5期予防接種の対象者となった。


1994年(平成6年)からは、満1歳-7歳半(生後12か月から90か月未満の年齢の男女)および中学生男女の年齢層に対し、個別接種で風疹の単価ワクチンの接種が開始された。

2006年(平成18年)からは、MRワクチンとして満1歳(第1期)および就学前年(第2期)への麻疹風疹混合ワクチン接種を開始(2回接種法)

麻疹の定期予防接種のワクチンとしてのとして麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)接種


1988年-1993年の間は麻疹の定期予防接種のワクチンとして麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)の選択も可能であった。男子に対する風疹の予防接種が可能になったのはこの時からである。

経過措置


1995年-2003年までの間、中学生男女に対し風疹の個別接種を実施

2001年-2003年9月末の間、1979年4月-1987年生まれの男女に対し風疹の個別接種を実施

2008年-2013年3月末の間、中学1年生(第3期)、高校3年生(第4期)に相当する年齢層に定期接種として2回目の麻疹風疹混合ワクチンの個別接種を公費で実施

2回接種の実施


麻疹の定期予防接種にMMRワクチンを使用した場合、この接種はあくまでも麻疹予防接種として行われたため、中学生になった際にMMRとは別に風疹の接種が可能であった。この対象は1981年生まれから1989年生まれである。

1990年生まれ以降は、MRワクチンを使用した2回接種法に移行した。


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