風疹
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1938年、弘好文と田坂重元は急性患者の鼻腔洗浄液の濾過物を用いて子供に疾患を伝染させることで、これを実証した[30]

1940年、オーストラリアで風疹の広範な流行が起こった。その後、眼科医 Norman McAllister Gregg は新生児の先天性白内障の78の症例のうち、68の症例で母親が妊娠初期に風疹に罹患していたことを発見した[29][30]。Gregg は1941年「母親のドイツはしか後の先天性白内障」(Congenital Cataract Following German Measles in the Mother) という報告書を公表した。彼は現在では先天性風疹症候群として知られているさまざまな問題について記述を行い、母親の感染が妊娠の初期であるほど、その害が大きくなることに気づいた。当時はまだワクチンが存在しなかったので、いくつかの人気雑誌は、感染した子供から他の子供(特に女児)へ病気を伝染させる「風疹パーティー」のアイデアを売り出した[34]。これは、小児期に終生免疫を獲得することで妊娠時の感染を防ぐことを目的としたものだった。風疹ウイルスは1962年に、医師 Paul Douglas Parkman のグループとトーマス・ハックル・ウェーラーのグループによって独立に、培養組織から単離された[29][31]

1962年から1965年にかけて風疹のパンデミックが発生し、ヨーロッパからアメリカ合衆国へ拡散した。1964年から1965年の間に、アメリカ合衆国で風疹は1,250万件発生したと推定される。そしてその結果11,000件の流産または妊娠中絶と20,000件の先天性風疹症候群が発生した。これらのうち、2,100件で新生児死亡、12,000件で聴覚障害、3,580件で視覚障害、1,800件で知的障害が見られた。先天性風疹症候群の影響は、ニューヨークの全出生の1%にまで及んだ[35][36]

1969年に、弱毒化ウイルスワクチンが認可された[30]。1970年代の初頭に、麻疹、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹の3種の弱毒化ウイルスを含むMMRワクチンが開発された[31]。2006年までに、アメリカ大陸での確認症例は年に3000件を下回った。しかしながら、2007年のアルゼンチン、ブラジル、チリでのアウトブレイクによって、その年は13,000件にまで跳ね上がった[37]

2014年1月22日に、世界保健機関 (WHO) と汎アメリカ保健機関 (PAHO) は、コロンビアを国内で風疹が消滅したラテンアメリカで最初の国家として認定して宣言した[38][39]。そして2015年4月29日に、アメリカ大陸はこの病気が公式に根絶された最初のWHOの地域区分となった[40]。アメリカ大陸で最後の非輸入症例は2009年にアルゼンチンとブラジルで起こったものである。PAHOのディレクターは「風疹との闘いには15年以上かかったが、これが汎アメリカにおける公衆衛生の21世紀で最も重要な成果の1つとなると私は信じている」と述べた[41]。この宣言は1億6500万件の健康記録の確認の後に行われ、最近の症例はすべて既知の輸入株によって引き起こされたものであることが遺伝学的に確認されている。

風疹は、世界のいくつかの地域ではありふれた感染症であり、宣言に参加したアメリカ疾病予防管理センターグローバル予防接種部門で、風疹のチームを率いる Susan E. Reef によると、風疹が2020年までに世界から根絶される見込みはない[37]。風疹は、天然痘ポリオに続いて、ワクチンによって西半球から消滅した3番目の疾病となったが[37][40]、日本を含む他の地域ではワクチン接種の不徹底で、未だ流行が繰り返されている。
日本での流行

日本では、5年おきに風疹の流行があり、2004年(平成16年)に推計患者数約4万人の流行があり、2005年(平成17年)以降は急速に患者が減少していたが、2011年(平成23年)にアジアで大規模な風疹流行が発生し、帰国後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が散発的にみられ[42]、2010年度の報告数は87件、2011年度の風疹の届出数は378件と増加し、2012年の年間報告数は2,368件、2013年から2014年には報告患者数 14,000件を超えたが、2014年8月頃に流行は終息した[43]

2012年以降の流行は、男女で流行の傾向が異なる。

男性は30歳代をピークに、ワクチン接種機会のなかった20歳以上50歳未満の年齢層に流行が拡大している。

女性は男性に比べ感染者総数が.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄4であり、23歳-24歳をピークに、18歳以上30歳以下に流行している。

2012-2013年

2012年(平成24年)に、231件の風疹ウイルスの分離・検出が報告された。遺伝子型の判別まで実施された151件では、2B型が124件、1E型が26件、1a型が1件であった[44]

2013年(平成25年)7月現在、さらに東京都・大阪府を中心に都市部で大流行した。2013年(平成25年)4月、神奈川県で、神奈川県知事黒岩祐治が風疹流行により非常事態を宣言、5月13日、大阪府が風疹流行緊急事態宣言。未だアジアで流行中のため、日本で流行が来年も続く可能性が高く、患者が減少傾向にない[45]。最終的に14,344人の感染が報告された。

流行から2014年(平成26年)10月時点で、先天性風疹症候群による障害を負った乳児は日本全国で計45人[46]。この流行は、2014年(平成26年)1月で終息した[47]
2018-2019年

2018年(平成30年)8月に、2017年(平成29年)の感染者数を超え、9月時点で2012-2013年に次ぐ362人の累積患者数が報告され、国立感染症研究所感染症疫学センターは緊急情報を発表し、男性が罹患する風疹流行の注意を呼びかけた[48]

2018年10月22日、風疹の年間感染者数は1,289人で、アメリカ疾病予防管理センターは、日本の風疹警戒レベルを3段階中の2番目である「勧告」に引き上げ、アメリカ合衆国は妊娠中の女性に対して、風疹の予防接種を受けてない人は、感染の拡大が収まるまで、日本への渡航をやめるよう勧告を出した[49][50]。2018年の累計報告者数は、2,917人で、2019年(令和元年)5月8日までに、先天性風疹症候群の発生が2件あった[51][52]
関連法規

感染症法による5類感染症に指定(風疹および先天性風疹症候群)。

学校保健安全法による第2種学校感染症に指定。発疹がおさまるまで出席停止となる。

脚注[脚注の使い方]^ a b 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について 風しん 厚生労働省 2013年5月8日閲覧
^風疹とは(2013年05月07日改訂) 国立感染症研究所
^ .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}"風疹大流行?遅れる日本の感染症対策?". クローズアップ現代 No.3344. 9 May 2013. NHK総合
^ “ ⇒風疹流行および先天性風疹症候群の発生に関する リスクアセスメント(2013年7月16日)”. 国立感染症研究所. 2014年8月31日閲覧。
^風疹抗体保有率が風疹エンデミック形成に与えた影響の解析 (PDF) 大同生命厚生事業団
^ a b 風疹 MSDマニュアル プロフェッショナル版
^ a b c d e f 【原著】加藤博史、今村顕史、関谷紀貴、柳澤如樹、菅沼明彦、味澤篤:成人における風疹の臨床像についての検討 感染症学雑誌 Vol.87 (2013) No.5 p.603-607


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