風と雲と虹と
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前述の古い時代設定に視聴者が近づけるよう第1話の冒頭では現在の神田明神(平将門が祭神)からスタートしており、これは1965年の『太閤記』が第1話の冒頭に東海道新幹線を映した前例をヒントにしたと大原誠は述べている[2]。プロデューサーの岸田利彦によると、古い時代が舞台のため、時代考証が難しかったという[2]

真田風雲録』で知られる劇作家・福田善之が脚本を執筆、ここでの将門は、「まず民衆が存在して、公などはずっと後からやって来たものだ」と決起を促すなど(こうした台詞は原作にはない)、反乱の歴史的位置付けを自ら意識した主人公である。また、傀儡や海賊、遊女、農民等々庶民階層の登場人物が活躍する。東西の主人公をつなぐために忍者をキャラクターとして設定し、女忍者・けら婆(吉行和子)の相方として、新人の草刈正雄が起用された[3]

平安中期の東国が舞台という事情で騎馬のシーンを多くせざるを得ず、その経費を下げるために厩舎入りした競走馬を3週間撮影のために借りて、撮影当日は状態のいい馬から選んで使い、合戦シーンをその期間でまとめて収録する方式が採用された(厩舎入りの馬の場合、騎乗者の費用だけで済んだという)[4]。また日常で騎乗する場面はスタジオに脚立に板を載せて馬に見えるようにした台を用意し、そこに俳優を座らせて上半身のみを撮影する(背景は後でロケの画像を合成)手法を考案した[4]

例年、大河ドラマの出演者は成田山新勝寺の豆まきに参加する。しかし、新勝寺は将門を追討するために作られた寺であることもあり、本作の世界観と合わないという理由から、本作の出演者は豆まきに参加していない。

NHK大河ドラマ・ストーリー(NHK出版から刊行されるガイドブック)が発刊された初めての作品でもある。
反響

初回放送時の最高視聴率は30.1%、平均視聴率は24.0%。

本作では舞台となった茨城県笠間をはじめとした将門と由縁のある場所が観光地となり、日本放送出版協会(現・NHK出版)によるムック本は数多く売れた[4]春日太一はこれらを「大河ドラマは一つの番組枠にはとどまらない、大きな産業を生み出す源泉という役割を担うようになった」と評して、以降の作品に重要な影響を与えたとしている[4]
あらすじ

10世紀初頭、坂東の地に勢力を広げていた桓武平氏の一族、平良将の嫡子として生まれた小次郎将門は、官位を得るために上った。真面目すぎる将門は、賄賂が横行する慣れない都生活で、要領の良い従兄弟の平貞盛のように振舞えず、都の貴族社会に失望する。そうした中、藤原純友と出会う。官僚貴族らしくない純友の豪胆な振る舞いは、将門には魅力だった。一方、純友は内心、将門に坂東で反乱させ、東西で呼応して都を征服するために利用しようと思っていた。

猟官が不調に終わり、貴子をめぐる恋愛にも貞盛に敗れ、失意の中帰郷した将門は、坂東平氏一族の内紛に巻き込まれる。伯父の国香や良正、有力豪族の源護・扶父子らとの内紛を勝ち抜いていく過程で、次第に朝廷そのものへの叛乱の頭領として祭り上げられていく。やがて、坂東を制圧した将門は朝敵とされ、従兄弟の貞盛や、将門の少年時代のヒーローでもあった田原藤太との宿命の対決に向かう。

その後、瀬戸内海で反乱を起こしていた純友は、将門戦死の知らせを聞いて、南海に虹が消えていくように、自分の野望も潰えたことを悟るのだった。

本作は、神懸かり状態の巫女から託宣を受けて「新皇」を名乗り、東国に独立王国を築くことを目指した将門が、田原藤太(藤原秀郷)、平貞盛らに討たれ、純友も瀬戸内海で敗死してその野望が潰えるまでを描く。
登場人物
主人公
平小次郎将門(たいらの こじろうまさかど)
演:加藤剛 (少年期:水野哲)性は純朴で武芸・学問ともに優れ、理不尽な事には毅然として立ち向かう。貞盛と青春時代を過ごし、源護の娘小督に恋をする。小督に求婚するが、護にそれなりの官位につくことを求められ、上洛する。しかし、都では右兵衛少志に任官するも、貞盛に出世で後れをとる。また盗賊を退治するもその盗賊が高貴な身分であったことから評価を落とし挽回するため海賊退治のための西海道追捕使に従軍する。そこでは都で親交を結んだ藤原純友の計らいで全滅した追捕使の中で唯一人生き残るが、都に帰ると都での恋の相手の貴子は貞盛と恋仲になっていた。失意の中坂東に戻ると、伯父たちが土地を横領していることに気づく。伯父良兼の娘良子を強奪したことから一族の中で孤立し、伯父たちと戦うことになる。火雷天神の旗の元、一族や源氏との戦いに打ち勝って勢力を拡大し、坂東の民人の支持を得るが、政治的野心は持っていない。自分から新皇を名乗ろうとしなかったが、京から追討使が派遣される中、田原藤太、貞盛らの連合軍と戦い戦死する。
平氏一門
良将・将門一門
平良将(たいらの よしまさ) (鎮守府将軍)
演:小林桂樹将門の父。民人たちとも気さくに交流する。陸奥で病死する。
将門の母 正子(まさこ)
演:新珠三千代愚直で一本気な将門を母として案じている。良子を掠奪した将門を諫めるが、将門が以前から良子を好きだったことを知ると、これを許す。後に一族での争いが激化した時は義弟・良文の元に身を寄せる。
良子(よしこ)
演:真野響子良兼の娘。義母の詮子の計らいにより源扶と婚約していたが、嫁入りの際に将門に掠奪された。当初は抗っていたが、将門が自分を一年前から妻にしたいと願い出ていたのに良兼らが「嫁ぎ先はもう決めてある」と聞き入れなかったこと、加えて将門が願い出たことを父と義母が黙殺していたのを正子から聞かされたことで将門の想いを改めて知り、彼の元に嫁ぐ決心を固め、将門の妻となる。
平三郎将頼(たいらの さぶろうまさより)
演:高岡健二 (少年期:難波和宏)将門の弟。上洛した将門に代わり家を守る。京から帰ってきた将門に妻を娶るよう薦める。将門と共に各地を転戦し運命を共にする。
平四郎将平(たいらの しろうまさひら)
演:岡村清太郎 (少年期:出原健一)将門の弟。学問に秀でている。学問を学ぶため、将門のいる京へ上る。小野道風に師事する。菅原景行らと共に坂東に戻る。将門の戦死後は、恋人かやの故郷、陸奥に脱出した。
豊太丸(とよたまる)
演:磯永明彦将門の子。
伊和員経(いわの かずつね)
演:福田豊土平良将・平将門の郎党。将門の上洛にも付き従う。坂東に戻ってからも将門の側近として活躍する。
将門の郎党[注釈 3]
演:中山廣道
郎党[注釈 4]
演:日野道夫将門家の下男。将門が京から帰っても妻を娶らないことを気にかけている。良兼、良正が農繁期の六月に兵を起こして将門と合戦を構えようとした際には「坂東の合戦の作法も弁えぬ」と涙した。将門戦死後、燃える岩井の館で自害した。
老乳母
演:関京子将門の郎党(老郎党)の妻で将門の乳母。将門が京から帰っても妻を娶らないことを気にかけている。将門戦死後、燃える岩井の館で自害した。
桔梗(ききょう)
演:森昌子葦津江郷の娘。源扶に襲われたところを玄明と将門に助けられる。良子に対する恋慕を募らせる将門に、「欲しいものは奪い取ればいい」と勧める。将門の戦死の際には良子親子を逃がそうとして殺され、その地は桔梗の咲かない里になった。
子春丸(こはるまる)
演:島米八桔梗と同時期に将門の館に仕えるようになった若者。源扶と良子の婚姻の日取りの情報を将門に伝える。健脚なことから下人としては重宝されていたが、良兼の郎党の蓮沼五郎に捕らえられ脅されたため、良兼の郎党の海老丸を従兄弟と偽り岩井の館に招き入れた。
将門の家人 (第1回)
演:井上博一、岡本隆
将門の郎党
演:西郷隆、永井譲滋、岡本隆、小松本幹三、大塚崇、浅野泰行
物見の者
演:加藤正之大串の村に集結していた源扶の軍を偵察するよう将門に命じられた。
武者→将門の兵
演:加藤正之、松島真一、山崎一雄、富永高敏
将頼の郎党
演:平川斉
将門の側近たち
鹿島玄明(かしま はるあき)
演:草刈正雄玄道の弟。将門と親しくなる。驚異的な脚力を持っており、将門と純友の間を往来する。武蔵が子高の罠にかかり捕えられた時は、伊予から京に引き揚げる途中の将門と同道していたが、恒利からその情報を聞き京へ駆けつけ武蔵を救出した。実は武蔵武芝の子で、武蔵とは姉弟だった。
鹿島玄道(かしま はるみち)
演:宍戸錠お尋ね者で、初対面では将門と喧嘩をするが、将門を気に入り、源扶に将門と貞盛が襲われた時には玄明と共に助ける。玄明とともに常陸の不動倉を襲撃した際に負傷。将門の元に逃れる。そのことが将門と常陸国府との対立の原因である。
興世王 (おきよおう)(勘解由判官→武蔵権守)
演:米倉斉加年皇族だが官僚としてはパッとしない。盗賊たちを捕らえ将門が京で評判になっている時、単に顔を見たいという理由でいきなり屋敷を訪れ将門と対面する。後に武蔵権守を命じられ坂東に下る。そこで武芝と対立し、将門の仲裁を受ける。武蔵守と対立し、将門の元で居候する。反乱を起こした将門の参謀役になり自身の権威を高めようとする。一味が全員討ち死にした際も一人だけ生きて捕らえられるが、「丁重に遇するように」と労わる藤太の面前で「わしは武者ではないが恥は知っている」と舌を噛み自殺する。
菅原景行(すがわらの かげゆき)
演:高橋昌也菅原道真の3男。京から常陸の荘園に移る。その際、京に来ていた将平、三宅清忠も同道する。坂東に将門が戻ると、開墾などのことで将門に世話になる。将門の使者として良兼の元に将門と良子の縁談を頼みに行くが断れた。将門が国香を討った後、坂東に戻った貞盛と将門の間を取り持つ。後に良兼の軍に心ならずも貞盛が味方することになり、将門と戦い敗れると、貞盛から将門との間を再び取り持ってくれるよう依頼される。しかし、将門は景行の言葉に「貞盛は男ではない」と言い、景行も「二度とこのようなことは申しません」と言った。
三宅清忠(みやけ きよただ) (小一条院藤原忠平家人→菅原景行家臣)
演:近藤洋介将門の小一条院の同僚。


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