顕生代の地質年代区分は、大きいほうから代・紀・世に分けられる。たとえば現在は新生代第四紀完新世とされている。代は古生代、中生代と新生代の3つある。紀は18世紀から19世紀にかけて、まとまった化石層が最初に研究された場所にちなんで命名されており、現在12種ある。下の表では第三紀があるが、現在第三紀という表現は正式には使われておらず、古第三紀(Paleogene)と新第三紀(Neogene)とされている[注釈 9]。
顕生代の地質年代区分[32]年代模式地命名者および年代名前の意味
カンブリア紀イギリス、ウェールズ地方セジウィック、1835年ウェールズの古称
オルドビス紀イギリス、ウェールズ地方ラプワース、1879年居住していた部族の名
シルル紀イギリス、ウェールズとイングランドの境界マーチソン、1835年居住していた部族の名
デボン紀イギリス、デボン州マーチソンとセジウィック、1840年地名
石炭紀イギリス、ウェールズとイングランドコニベアとフィリップス
顕生代の地表の温度を決定付けてきたのは「太陽から到達するエネルギー量」と、「温室効果ガスの存在量」のバランスであった。「太陽から到達するエネルギー量」は1億年で約1%ずつ増加するという非常にゆっくりした変化である。地球の平均気温に対する温室効果ガスの影響は非常に大きく、たとえば現在の地球で「温室効果ゼロ」を仮定した場合の地表温度(有効温度と呼ばれる)は-18℃で、実際の平均気温15℃との間に33℃の開きがある。この差が大気中に存在する水蒸気や二酸化炭素などの温室効果ガスの効果である[33]。このように顕生代の気候は大気中の温室効果ガスの存在量に大きく左右されている。メタンも温室効果ガスであるが大気中に放出されたメタンは容易に酸化されて二酸化炭素と水に変わるため、長期の温暖化効果としては二酸化炭素の影響が大きい[34]。
顕生代の気候の大まかな特徴として、約3億年周期のサイクルで寒冷気候と温暖気候が繰り返されたが、この周期は上図の大陸の集合と分裂の時期と一致している。すなわち大陸が集合する時期に気候が寒冷化し、大陸が分裂する時期に温暖期となった。上記の図を参考に説明すると、大陸が分散していたオルドビス紀からデボン紀までが温暖時期(オルドビス紀末に一時的な氷期があった)、超大陸パンゲアができ始めた石炭紀から三畳紀の始めまでが寒冷期、パンゲアが分裂し始めた三畳紀末から新生代の初めまでが温暖期、アジア大陸にインド大陸が衝突しアフリカ大陸もヨーロッパに衝突しつつある現在は寒冷期となっている[35]。寒冷期と温暖期が発生する原因として、大気中の二酸化炭素の増減による温室効果の差が挙げられる。温暖期は火山活動が活発で、マントル内部からの二酸化炭素供給が多く温室効果が高かった時期に相当する。大陸が集合・衝突する時にはヒマラヤ山脈やアルプス山脈のような大山脈ができる。高山は平地より浸食を受けやすく、特にヒマラヤ山脈では多量の雨による激しい侵食を受けその結果多量のカルシウムイオンが海洋に供給される。このカルシウムイオンが効率的に二酸化炭素を吸収して石灰岩となり、大気中から二酸化炭素を取り除き、二酸化炭素による温室効果を削減するため地球が寒冷化する[36]。顕生代の生物はこの気候変化の影響を受けて進化してきた。
なお現在は南極やグリーンランド上に広大な大陸氷河が形成されているため氷河時代に分類されるが、氷河時代の中では比較的温暖な間氷期に相当する[37]。 極端な寒冷期であったマリノアン氷河時代は約6億3500万年前に終了した。カンブリア紀は約5億4200万年前[16]に始まり約5億年前[38]までの期間であるが、その気候は地球の気候が温暖化しつつある時期に相当する[39]。カンブリア紀の特徴は、動物の多様性が一気に増加したことである。 カンブリア紀以前に確認されている動物の門は刺胞動物と海綿動物だが[40]、カンブリア紀の代表的地層であるバージェス頁岩からは、この2門以外に節足動物、腕足動物、脊索動物、軟体動物、棘皮動物、環形動物、袋形動物、半脊動物
カンブリア紀の気候と生物
三葉虫の硬骨格や腕足類の殻は化石として残り易いため古くから世界各地で産出しており、1970年代まで「カンブリア紀」の生物相はこのような硬骨格生物が主体であると考えられてきた。カンブリア紀の捕食者として有名な「アノマロカリス」の全体像[注釈 10]が解明されたのは1970年代で、上記「バージェス頁岩」の研究による[45]。その後1980年代からグリーンランドのシリウスパセット[46]や中国の澄江(チェンジャン)[47]での化石発掘と研究により(澄江動物群参照)、カンブリア紀の多様な生命の状況が判明した。
カンブリア紀を代表する節足動物三葉虫 体長は1cm弱から大きいものでは60cmまで
脊椎動物に分類される最初期の魚類ミロクンミンギア、体長3cm
中国の澄江から多数見つかった古虫動物、新口動物に分類されるが子孫は現存しない 最大10cm[48]