顕生代
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メタンも温室効果ガスであるが大気中に放出されたメタンは容易に酸化されて二酸化炭素と水に変わるため、長期の温暖化効果としては二酸化炭素の影響が大きい[34]

顕生代の気候の大まかな特徴として、約3億年周期のサイクルで寒冷気候と温暖気候が繰り返されたが、この周期は上図の大陸の集合と分裂の時期と一致している。すなわち大陸が集合する時期に気候が寒冷化し、大陸が分裂する時期に温暖期となった。上記の図を参考に説明すると、大陸が分散していたオルドビス紀からデボン紀までが温暖時期(オルドビス紀末に一時的な氷期があった)、超大陸パンゲアができ始めた石炭紀から三畳紀の始めまでが寒冷期、パンゲアが分裂し始めた三畳紀末から新生代の初めまでが温暖期、アジア大陸にインド大陸が衝突しアフリカ大陸もヨーロッパに衝突しつつある現在は寒冷期となっている[35]。寒冷期と温暖期が発生する原因として、大気中の二酸化炭素の増減による温室効果の差が挙げられる。温暖期は火山活動が活発で、マントル内部からの二酸化炭素供給が多く温室効果が高かった時期に相当する。大陸が集合・衝突する時にはヒマラヤ山脈アルプス山脈のような大山脈ができる。高山は平地より浸食を受けやすく、特にヒマラヤ山脈では多量の雨による激しい侵食を受けその結果多量のカルシウムイオンが海洋に供給される。このカルシウムイオンが効率的に二酸化炭素を吸収して石灰岩となり、大気中から二酸化炭素を取り除き、二酸化炭素による温室効果を削減するため地球が寒冷化する[36]。顕生代の生物はこの気候変化の影響を受けて進化してきた。

なお現在は南極やグリーンランド上に広大な大陸氷河が形成されているため氷河時代に分類されるが、氷河時代の中では比較的温暖な間氷期に相当する[37]
カンブリア紀の気候と生物

極端な寒冷期であったマリノアン氷河時代は約6億3500万年前に終了した。カンブリア紀は約5億4200万年前[16]に始まり約5億年前[38]までの期間であるが、その気候は地球の気候が温暖化しつつある時期に相当する[39]。カンブリア紀の特徴は、動物の多様性が一気に増加したことである。

カンブリア紀以前に確認されている動物の門は刺胞動物海綿動物だが[40]、カンブリア紀の代表的地層であるバージェス頁岩からは、この2門以外に節足動物腕足動物脊索動物軟体動物棘皮動物環形動物袋形動物、半脊動物などが確認されている[41]。このように突然大量の生物種が発生したことから、この事件はカンブリア爆発と呼ばれている。これらの生物の多くがリン酸塩やカルシウム塩からなる固い殻を有していたため比較的化石として残りやすく、このことが顕生代開始の定義につながった。生物が固い殻を持った理由として、カンブリア紀初期に大量のリン酸塩が浅海に供給され生物がリン酸塩を利用し易かったこと[42]、前時代には存在しなかった強力な捕食者(アノマロカリスオパビニアなど)に対抗する防御が必要になったことなどが推定されている。さらに捕食者から身を守るために優れた遊泳能力や海底の泥に深くもぐる能力などが発達した[42]。これらの必然性から生物の多様化が進んだと考えられている。カンブリア紀の浅海における生物量としては、節足動物の三葉虫と腕足類が優勢であった[43]。カンブリア紀に発生した生物の中には現在見られない形の動物も多く存在したが、それらの動物はカンブリア紀末までに大部分が淘汰された[44]

三葉虫の硬骨格や腕足類の殻は化石として残り易いため古くから世界各地で産出しており、1970年代まで「カンブリア紀」の生物相はこのような硬骨格生物が主体であると考えられてきた。カンブリア紀の捕食者として有名な「アノマロカリス」の全体像[注釈 10]が解明されたのは1970年代で、上記「バージェス頁岩」の研究による[45]。その後1980年代からグリーンランドのシリウスパセット[46]や中国の澄江(チェンジャン)[47]での化石発掘と研究により(澄江動物群参照)、カンブリア紀の多様な生命の状況が判明した。

カンブリア紀を代表する節足動物三葉虫 体長は1cm弱から大きいものでは60cmまで

脊椎動物に分類される最初期の魚類ミロクンミンギア、体長3cm

中国の澄江から多数見つかった古虫動物新口動物に分類されるが子孫は現存しない 最大10cm[48]

強力な捕食者アノマロカリス、全長60cm弱におよぶ[49]

オルドビス紀の気候と生物

オルドビス紀は約5億年前から約4億4千万年前までの期間である[38]。この時期の気候は温暖であったが紀の末に一時的な寒冷化が起こり、その影響で生物の大量絶滅が生起した。また植物や動物の一部が地上に進出し始めた。

まず海中では カンブリア紀に繁栄した三葉虫はオルドビス紀に早くも衰退し始める。脊椎動物は顎と歯を持たない無顎魚類が繁栄したが、下図のように頭部を覆う燐酸カルシウムの骨板を有し、鰭が発達していないため泳ぎは鈍かった[50]。無顎類の子孫はヤツメウナギを含む円口類約50種が現存している[51]。軟体動物では頭足類直角貝の仲間は体長が15cm程度のものが多いが、最大のものは体長数mにも達した捕食動物であった。この時代に原索動物のフデイシやコノドントが出現した。コノドントは小さな化石微化石でたくさん見つかる上に時代による変化が大きいため示準化石として使われているが、クリダグナサスのような無顎類とは異なる原始的な魚類の喉部にある咀嚼用器官(歯)であった[52]。最古の陸上植物の可能性として、アフリカのリビアにあるオルドビス紀の地層からゼニゴケ類似の胞子の化石が見つかっている[53]。またアメリカ東部の陸域で堆積した地層からムカデの足跡に似た生痕化石がみつかっている[53]。約4億3900万年前のオルドビス紀末に原因不明の急激な寒冷化による生物の大絶滅が起こった。まず急激な氷河の発達により海水準が降下し浅海の固着生物の住処が無くなり、その後温暖な気候に戻るにつれて今度は急激な海水準の上昇とおそらく深海からの低酸素の水が上昇してきたことによる窒息によって、当時海洋に生息していた科のレベルで20%・属のレベルで60%が絶滅した[54]

無顎類アランダスピス、いわゆる甲冑魚

殻長5.7メートルに達する大型の頭足類エンドセラス

フデイシ原索動物に分類される

コノドントは原始的な魚類の消化器官前端の歯であった

シルル紀の気候と生物

シルル紀は約4億4千万年前から約4億1500万年前までの比較的短い期間である[38]。オルドビス紀に引き続き温暖な気候であった。シルル紀に植物と動物が地上に進出した。

植物が地上に繁栄するためには、地上の空中にあるを保持しつつ水分や養分を運搬する強固な維管束が必要である。確認できる最古の地上植物は高さ約10cmに満たない根も葉も無いクックソニアであった。クックソニアは地上植物であるが維管束はまだ発達していなかった[55]。また陸上の河川敷を歩いた節足動物の明瞭な生痕化石も見つかっている[53]。最初に陸に上がったのはヤスデの仲間で[56]昆虫が続いた[57]


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