国家主権と上空の権利の問題は、飛行機の発明と、気球を含む航空技術の発展で、顕在化した。第一次世界大戦後の1919年10月13日、アメリカ、イギリス帝国、フランス、大日本帝国などによりパリ国際航空条約が締結され[7]、その第一条に領空主権
(英語版)[8][9]が明記された[10]。この概念は、1944年のシカゴ条約にも継承され、その第一条及び第二条において、領土及び領海上での領空主権が確認された。シカゴ条約は民間航空機が対象の条約だが、2011年時点で191ヶ国が署名[11]している等、普遍性が高く、1960年のU-2撃墜事件でも領空主権に関する異議が唱えられなかったことにより、シカゴ条約の領空概念は、軍用機も含めた国際慣習法として成立しているとされる[12]。この条約に基づき、領空には領海と異なり他国航空機による無害通航は認められない。
空域の区分として、領域防空のための防空識別圏や、航空交通管制に関する管制空域などがあるが、これらは領空と別途に指定され、公海上の空域(公空[13])も含め置かれていることもある。 領空の水平的境界は領土・領水の境界と等しい。垂直的境界は「宇宙空間より下」とされる[6]。国家の宇宙空間の領有は禁止されている[14]。具体に領空をどこまでの高度に定めるかについては諸説あり[15]。
領空の境界
地球の大気圏の限界までとする説[16]。
航空機が航空可能な最大高度までとする説[17]。
カーマン・ラインまでとする説[17][18]。
飛翔体の浮揚力
人工衛星の最低軌道までとする説[20]。
地球の重力の影響により境界を定める説[21]。
領空国の実効支配が及ぶ高度までとする説[21]。
領空と宇宙空間の間に緩衝区域を定める説[22]。
人類が生存可能な大気がある高度までとする説[23]。
12海里(約22.2km)までを限界とする領海の制度にならい、上空12海里までの高度とする説[23]。
このように、境界を定めることが困難なため、宇宙物体による活動かどうかという、活動の機能面に着目し、境界を定める必要はないとする説もある[24]。
脚注[脚注の使い方]
出典^ A Dictionary of Aviation, David W. Wragg. ISBN 0850451639 / ISBN 9780850451634, 1st Edition Published by Osprey, 1973 / Published by Frederick Fell, Inc., NY, 1974 (1st American Edition.), Page 29.
^ ⇒territorial airspaceの意味 - 英和辞典 Weblio辞書
^ 筒井若水 2002, p. 344.
^ 「飛行情報区」 < 航空実用事典 - ウェイバックマシン(2020年12月17日アーカイブ分)
^ ⇒「領空」 < デジタル大辞泉 - goo国語辞書
^ a b 筒井若水 2002, pp. 340?341, 「領空」.
^ 下川耿史 2003.
^ 『領空主権』 - コトバンク
^ 『領空権』 - コトバンク
^ 岡田清 1995.
^ ⇒Signatories to the Convention (PDF, 134 KiB) ICAO
^ 甲斐素直 2014.
^ 『公空』 - コトバンク
^ 筒井若水 2002, pp. 17?18, 「宇宙法」.
^ 松掛暢 2015, p. 162.
^ 松掛暢 2015, pp. 162?163.
^ a b 松掛暢 2015, p. 163.
^ 領空の高さはどこまでですか。|株式会社帝国書院
^ 松掛暢 2015, pp. 163?164.
^ 松掛暢 2015, pp. 164?165.
^ a b 松掛暢 2015, p. 165.