国家はその領域内にあるすべての人・物・事実に対して、「排他的」かつ「包括的」に規制を及ぼすことができる[8][9]。ここでいう「排他的」とは自国領域内における他国の権限行使を排除し[10]、自国のみが権限を行使することができることを意味する[9]。ただしこの「排他性」は必ずしも絶対的なものではなく、例えば主権免除や特権免除、領海内の他国船舶の無害通行権など、国際慣習法上他国の権利行使を受忍しなければならない場合もある[8]。また「包括的」とは、国籍等による区別なく立法・行政・司法といった国家作用が領域内のすべての人・物・事実に及ぶということを意味する[9]。しかしこれも無制約なものではなく、例えば国際運河や国際河川のように特定の場所における特定の国家の権利が条約によって制約されることもある[注 3][9]。またこれ以外にも、例えば国家免除、特権免除
、外国船舶の無害通航権、船内規律事項などの例外がある[8]。軍艦の通航権については、かつては敵対行為を取っていなくても通行を禁止する船種基準説が一般的であったが、現在は、「沿岸国の平和・秩序・安全を害しない」無害通航(領海条約14条4項)である限り、通航を認める行為基準説が一般的である[12]基本的に国家は自国の領域を自由に使用・処分[注 4]することができる[13][14]。他国との共有物や共同領有域などのように国際法上特別な制度が存在し一方の国の権利行使によってもう一方の国に損害を与えうる確実な証拠がない限り、自国領域の使用・処分に関して他国との条約などの合意を得る必要はない[14]。しかし国家は自らその領域を使用したり私人にその使用を許可するにあたって、他国の国際法上の権利を侵害してはならない[13][15]。これは領域使用の管理責任
といわれ[13][15]、国内私法上の相隣関係の法理が国際関係にも適用されたものと考えられている[15]。