音速
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または Kw >> Ka 、ρw >> ρa と仮定し、α→0, 1 の場合を除く近似式として c = K a α ( 1 − α ) ρ w {\displaystyle c={\sqrt {\frac {K_{a}}{\alpha (1-\alpha )\rho _{w}}}}}

で表される。液体を水、気体を空気とすると、音速の最小値は α= 0.5 のとき c = 23.7 m/s まで小さくなる。
固体

固体の場合、伝播される振動が複数あり、速度も異なる。また、物体の形状や構成(純物質では結晶構造混合物では成分比など)によって影響される[10]。このほか、結晶方向と伝播方向による差や、周波数による差も大きいなど、固体の音速は非常に複雑となっている。

基本式は、弾性率を M 、密度を ρ とすると、 c = M ρ {\displaystyle c={\sqrt {M \over {\rho }}}}

となる。
縦波

気体や液体と同じ縦波(疎密波)は、固体の音速で最も速く、等方的で無限に広がっている十分に大きな物体で、剛性率 を G、体積弾性率を K とすると、次の通り[11]。 c l = K + 4 3 G ρ {\displaystyle c_{l}={\sqrt {\frac {K+{\frac {4}{3}}G}{\rho }}}}
横波

かなり遅く、物質によっては縦波の半分以下となる。縦波同様に、次の通り[11]。 c t = G ρ {\displaystyle c_{t}={\sqrt {G \over {\rho }}}}
棒の縦振動

縦波と横波の中間よりやや速く、物質によっては縦波とほぼ同じとなる。物体の形状が波長に対して十分に細いとき、ヤング率を E とすると、次の通り[11]。 c 3 = E ρ {\displaystyle c_{3}={\sqrt {E \over {\rho }}}}
表面波

物体表面(境界)で観測され、レイリー波ラブ波が知られている。横波と同程度か、やや遅い。
屈曲波

物体が板状で、波長に対して十分に広いときに出現し、速度が振動数の平方根に比例する。ヤングの弾性率を E、振動数を f、厚さを t、ポアソン比を δ とすると、次の通り[12]。 c b = ( π 2 f 2 t 2 E 3 ρ ( 1 − δ 2 ) ) 1 4 {\displaystyle c_{b}=\left({{\pi }^{2}f^{2}t^{2}E \over 3{\rho }(1-{\delta }^{2})}\right)^{\frac {1}{4}}}
物性値の例

国立天文台が発行する理科年表から、種々の物質中の音速を例示する[13]。原則として気体は 1気圧 0℃での値、その他は概ね常温。

物質名縦波 [m/s]横波 [m/s]
乾燥空気331.45

水蒸気(100℃)473
1500
海水1513
3230 1600

水素1269.5
ヘリウム970
窒素337
酸素317.2
塩素205.3
アルゴン319

水銀1450
グリセリン1986
ベンゼン1295
エタノール1207
四塩化炭素930
二酸化炭素258

ベリリウム128908880
アルミニウム64203040
59503240
32401220
1960690
溶融水晶59683764
ポリスチレン23501120
軟質ポリエチレン1950540
天然ゴム1500120



音速の研究史
古代

古代および中世において、音速を実際に測定したという記録はない[14]。しかし、音が光に比べて遅い速度で伝わるということは、古代から知られていた。たとえば紀元前1世紀に、ルクレティウスは、雷の光が目に届いてから雷鳴が聞こえることや、遠くで木こりが木を切ったのが見えてから木を切る音が聞こえることを指摘している[15][16]

また古代ギリシアでは、音の高さによって音速が異なるかについて議論になっている。たとえばアルキタスは、高い音は速く伝わり、低い音はゆっくり伝わると述べていた。なぜなら、棒で何かをゆっくり叩くと低い音が聞こえ、すばやく叩くと高い音が聞こえるからである[17]。これに対してテオプラストスは、異なる高さの音によってつくられる協和音が同時に聞こえることから、高い音と低い音では音が伝わる速さには差がないと述べている[18]
初期の音速測定マラン・メルセンヌ

1627年、フランシス・ベーコンは著書『森の森』の中で、音速を測定する方法について書いた。寺院の尖塔にろうそくを持った人を立たせ、ろうそくの前にヴェールを置く。そして、鐘を打つと同時にヴェールを取り除かせる。観測する人は尖塔から1マイル離れた野原にいて、ろうそくの光が見えた時間と鐘の音が聴こえた時間の差を、自分の脈拍を使って測る[19][20]

ただしベーコンは自分ではこの方法を試していない[19]。音速を初めて測定した人物として名前が挙げられるのは、ピエール・ガッサンディあるいはマラン・メルセンヌである。

ガッサンディは1635年、大砲の音を利用して、音速を毎秒478メートルと計算した。またガッサンディは、古代から伝えられていた「高い音は速く伝わる」という説を否定し、音速は音の高低や強弱によらず一定であり、また風速にも影響されないと主張した(ただし音速が風に影響されないというのは現代から見ると誤り)[21][注釈 1]

メルセンヌは音響学に関する書『普遍的和声』(1636,1637)を著し、その中で、砲声を利用して音速を求める測定について記した。これはベーコンが提唱したのと同じ測定法である。メルセンヌはこの測定法によって、音は空気中を毎秒230トアズ(448メートル)の速さで伝わり、その速さは音の種類や風向きなどに依存しないという結果を得た[22][23]。メルセンヌはこの結果から、音波が地球を一周するのにかかる時間を21時間5(2/3)分と計算して、最後の審判の日に天使が吹き鳴らすトランペットの音は「約10時間以内に地球上のいたるところで聞きとられるであろう」と記した[24]

メルセンヌはさらに、自らが音を発して、その音が壁に反射して返ってくるまでの時間を計るという方法も試みている。この測定では、音の速さは毎秒162トアズ(316メートル)という結果を得た[25]。砲声での測定と異なる値となったが、メルセンヌは最終的に、砲声の実験で得た毎秒230トアズのほうを音速値として採用している[26]
科学アカデミーにおける音速測定

1657年、ガリレオ・ガリレイの弟子たちによって、フィレンツェに最初の科学アカデミー「アカデミア・デル・チメント」が設立された[27]。このアカデミーでは様々な実験がなされたが、その1つに音速の測定があった。

音速研究に取り組んだのはヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニジョヴァンニ・ボレリで、実験自体はアカデミーが正式に設立される前の1656年におこなわれている。


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