小室哲哉やつんく♂など、自身のバンドの音楽活動と並行して作詞作曲および編曲を含めたプロデュース業を行う音楽家系プロデューサーの台頭以後、日本歌謡界における音楽プロデューサーの影響力は急激に増した。しかし、それは高名なプロデューサーを宣伝材料として利用したプロモーションの一環にする現象の側面と、特定の音楽プロデューサーの目に止まらなければまずヒットは望めないと言うことを前提としたメーカー側の販売戦略だったため、「チャートに同じようなアーティストと同じような曲調ばかりが並んでいてほとんど区別がつかない」という意見や批判が年配層等から起こった要因の一つになったとも言われている。
博報堂の雑誌『広告』1987年9、10月号で、真保みゆきは「音楽プロデューサーってなに?」というコラムを寄せ、「犬も歩けばのたとえではないが、今や音楽ジャンルで"プロデューサー"ないし"プロデュース"という表現に出会うのは、まったく珍しいことじゃない。いわく『山下達郎が、竹内まりや3年ぶりの新作をプロデュース』とか『おニャン子ブームのプロデューサー、秋元康31歳』という具合。でもちょっと待ってほしい。山下はミュージシャン、秋元は作詞家が本業、なのに2人を同じ項目でくくってしまう。プロデューサーってなんだろう?と、ごく当然の疑問が湧く。で、はっきり言ってしまうと、この2人、特に秋元は、英語で言うところのproducerが、本来意味したところからの役回りからはかなり遠い。もとはと言えばハリウッド、すなわちアメリカの映画産業で、製作全体のカネの動きを面倒見る、伝記も出てるザナックみたいな存在を指したわけで、それが音楽方面へと転用されたからって、そう安直に意味が変わったわけじゃない。『レコード制作を経済面からコントロールし、最終的には販売に至る全権及び全責任を負える人間』、これが本来のプロデューサーである。アメリカでその条件をまず第一に満たしていたのは、デトロイトの一レーベルを60年代音の夢工場までのし上げたモータウン社長・ベリー・ゴーディー・ジュニアである。ゴーディーはレコーディングは勿論、専用チャーム・スクールまで設けて、全タレントの教育・管理にいそしんだというから、日本でこれに当たるのは故・渡辺晋だろうか。またエキセントリックな性格とワンマンなレコーディングで周囲を辟易させたと伝えられるフィル・スペクターだって同じ自己レーベル"Philles"を持っていてこれは大瀧詠一が踏襲していた。勿論これら"独立組"以外に、ボブ・ディラン発見の功労者・ジョン・ハモンドのようにコロムビア・レコードに籍を置きながら、名プロデューサーと呼ばれた"社内組"もいる。山口百恵を育てたCBS・ソニーの酒井政利がこれに近いが、最近よく使われるサウンド面だけの面倒を見るプロデュースとは一線を画しているのは、もう言うまでもない。裏を返せば、今日本で言う"プロデューサー"は、レコーディング現場監督という、極端に分業的な意味合いがほとんどなわけで、本来の用法からは遠く離れた外来語なのである。作詞家である秋元康を"プロデューサー"と呼ぶことで、フジサンケイグループ・メディア総がかりの夢工場・おニャン子ブームの象徴的仕掛人とする変則技まで登場しつつある。定義するのではなく、定義しづらいことを通じて、音楽業界のあり方をシミュレートする用語なのかもしれない」などと論じている[5]。
音楽制作者の集合組織には日本音楽制作者連盟(音制連)などがあり、啓蒙活動を含め音楽制作全般をバックアップしている[6]。
セイコーインスツルの業務用ストップウオッチ「サウンドプロデューサー」は、こうした制作活動の現場(録音スタジオなど)で関係者達に活用されることを狙った同名製品。単なるストップウオッチではなく、カウントダウンタイマーや60進法の計算が出来る電卓が組み込まれている。 サウンドだけでなく総合的にプロデュースする際、プロデュース対象であるアーティスト、音楽家、タレントに対して、以下の項目にある部分などを主に担当する。
業務内容
総合的にどのようなイメージを世間に与え、アーティストの知名度を上げるための戦略と展開(A&Rと連携)。
歌唱または演奏する音楽の傾向とそれに伴う作詞家および作曲家を外注する場合の選定。
制作に際して、現場へ起用する編曲家やスタジオ・ミュージシャンらの選定と日程調整。
録音時の作業工程の計画、スタジオの選定。
CDやレコード発売に関連するプロモーション用ミュージック・ビデオやポスター等の展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
音楽関連雑誌などのメディアやテレビ/ラジオなどでのプロモーション戦略と展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
公演活動、イベント開催、各種イベント出演などの展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
出演する音楽番組などの選定と出演交渉など(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
日本で音楽プロデューサーと分類呼称される場合には、上記のうち主として項目の#2と#3における音楽プロデュースで関わる場合が多く、自身が編曲家を兼ねることも多い。
上記項目の#5?#8をアーティストが所属するレコード会社やプロダクションのA&R、ディレクター、マネージャー等が担当し、プロデューサーとしてクレジットされる場合もある。
エグゼクティブ・プロデューサーの場合には、上記の制作項目全体を含めアーティスト像全体に対するプロデュース、メディアやマーケットの連動を兼ねた総合的な業務になるため、人脈や展開能力を含めた幅広い財産と知識を必要とする。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ URCの秦政明などもその一人であったといわれる
出典^ a b Moorefield, Virgil (2010-02-26) (英語). The Producer as Composer: Shaping the Sounds of Popular Music
^ “A&R Pioneers” (英語). Vanderbilt University. 2020年11月24日閲覧。
^ “A&R Pioneers” (英語). Vanderbilt University. 2020年11月23日閲覧。
^ Kot, Greg. “What does a record producer do?” (英語). www.bbc.com. 2020年11月24日閲覧。
^ 真保みゆき「MUSIC 音楽プロデューサーってなに?」『広告』1987年9、10月号、博報堂、53頁。
^ “ ⇒FMPJ 一般社団法人 日本音楽制作者連盟 - 音制連とは”. FMPJ 一般社団法人 日本音楽制作者連盟. 2020年11月24日閲覧。
関連項目
音楽制作者連盟
ディレクター
A&R
レコーディング・エンジニア
トラックメイカー・ビートメイカー