非正規雇用(ひせいきこよう)は、有期労働契約による雇用形態のこと[1]。日本では正規雇用(Regular employees)以外のパートタイマー・アルバイト・派遣労働・契約社員・嘱託などの有期雇用をいう[2][3][4]。
冷戦終結後のグローバリゼーションによる発展途上国との低価格競争の激化で増加した雇用形態[3][5]。正規雇用を望んでいるのに非正規の雇用しか得られない場合は不本意非正規[6][7]または不完全雇用(不完全就業)と呼ばれ、隠れた失業(hidden unemployment)として問題である[8][9][10]。日本では、不本意非正規雇用の割合は年々減少傾向にあり[4]、2020年時点の日本において非正規雇用が就業者(労働者)全体の10.9%を占める[11][12][13]。2021年時点の日本の非正規労働者全体の10.2%が不本意非正規であり、就業者(労働者)全体の3.2%となっている[6]。2023年の不本意非正規雇用の割合は非正規雇用労働者全体の9.6%でありり、2013年の数値と比較すると半数近くまで減っている[4]。豪州における不本意非正規雇用率ではパートタイマー数全体の23%[14]、EUではパートタイマー数全体の17%となっている[15]。
なお、後述のように日本の「非正規雇用」と欧米の「非典型雇用」(Atypical Employment , Nonstandard Employment)については、欧米は自営業を含めるという違いがあるため必ずしも一致しない[16][17]。日本では企業側からの正社員の解雇を事実上不可能にしている解雇規制のため、解雇が容易な欧米よりも労働者の給与が上がりにくくなっており、非正規雇用が不況や業績悪化時の雇用の調整弁となっている状況にある[3][18][19][20][21]。日本の裁判所は、正社員の中で勤務態度や能力などの総合評価が最低の者にでさえも解雇を認めないため、企業側は迂闊に能力不足者を正社員雇用すると困ることになる[22]。特に日本のような終身雇用文化の無く、ジョブ型雇用であるアメリカでは正社員も有期雇用であり、解雇も業績に反映した形で行われる[22]。同じくジョブ型雇用である欧州ではアメリカよりは解雇規制はされているものの、解雇したい際には会社側が金銭を支払えば整理解雇(金銭解雇)することが認められている[18][19]。
日本の大手企業に多く見られる雇用慣行では、労働者をその勤務態様によって、次の3つで区分けする。 このうち、直接雇用・無期・フルタイムの3つをすべて満たす労働者を正規雇用労働者として[23]、企業は中核的労働者に位置付ける。一つでも満たさない者は非正規雇用労働者(アルバイト、パートタイマー、契約社員(期間社員)、派遣社員など)として、正社員を中心とした企業秩序の周縁に位置付ける。 内容面から定義しようとすれば、一般的に、いわゆる「正社員」「正職員」と呼ばれる従業員の雇用と比較したときに総合的に見て、 といった要素が色濃い雇用形態を総称する用語である[24]。
概説
非正規雇用
企業に直接雇用される者であるか、そうでない(間接雇用)者か。
契約期間が無期(期間の定めのない労働契約)であるか、有期(期間の定めのある労働契約)であるか。
各企業の就業規則で定める所定労働時間の上限(フルタイム)まで労働する者か、上限に満たない(パートタイム)者であるか。
給与が少ない - 例:単位時間当たりの給与(時給)が低い、退職金や賞与(ボーナス)の支給がない(支給されるとしても、正社員より要件が厳しいうえ、より少額になる)。
雇用が不安定 - 例:終身雇用のない、有期雇用で最長でも3年程度しかない。
キャリア形成の仕組みが整備されていない - 例:幹部までの昇進・昇級の人事系統に乗っていない、能力開発の機会に乏しく、いくら就労を重ねても知識・技能・技術が蓄積されない。