露口茂
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刑事コロンボ』の日本語版演出担当者によると、当初コロンボの声の吹き替えは[注 14]、露口が第一候補とされていた[45]。NHK放映の『シャーロック・ホームズの冒険』ではシャーロック・ホームズジェレミー・ブレット)役を吹き替え、当たり役となった。

ジブリ映画『耳をすませば』でバロンの声を務めた。『COMIC BOX』1995年9月号のインタビューでは露口自身が「宮崎さんから依頼されたんですが、何しろアニメで、しかもネコの声をやるだけなんて初めてですし、こういうのはむしろ専門の方がいらっしゃるでしょうと、まずはお断りしたんですよ、宮崎さんと話しているうちにその魅力に引かれ、やはりこの宮崎さんとの貴重な出会いを大切にしたいなと思い、引き受けることにしました。」「なかなか自分で納得がいかないものですから、何度も自分からお願いして取り直させてもらったんです。何しろ猫である上に、全体のドラマの中でも核というか重要な役ですからね。台詞はほんの何行かですけどすごく重い、しかし重さを感じさせてはいけない。最後にようやく、まあこれならいいかと思える出来になりました。」と語っている[46]。露口のアフレコは他出演者の約2倍の時間をかけて行われ、本名陽子はその俳優としてのこだわりに驚いたと語っていた[47]

『耳をすませば』の劇場パンフレットでは、ロマンや人の暖かさ、ぬくもり、優しさをメッセージとして折り込み、かつ斬新さを感じさせる宮崎の作品には是非出演したいという気持ちがあったが、アニメーションの声をこれまでに演ったことがなく、引き受けて本当にうまく出来るだろうかという気持ちで躊躇してしたが、実際に宮崎駿と会い、「バロンの声は露口さんしか考えられないんです。」と説得され、また宮崎の魅力と人柄に触れ、引き受けたい気持ちが決まり出演したことを語った。また、「精一杯やらせていただいたわけですが、バロンの声にそんな私の思いが出ていれば、と心から願っております。」とコメントを残している[48]

『太陽にほえろ!』のエピソード

番組のプロデューサー・
岡田晋吉は、露口が『文五捕物絵図』で演じた「あえて正義のために、愛のために、強力な相手に立ち向かっていく、男の怒りを表現した芝居」に感動し、『太陽にほえろ!』の企画に際して、真っ先に露口と出演交渉をし、人物設定を決めたと語っている[49]。露口の起用は、テレビ視聴者として重要な三十代、四十代の女性をテレビの前に釘付けにするための役割としてであった[50]

当初山村刑事は短髪で、勤務中に麻雀に興じるアウトロー的な刑事であったが、露口が「刑事コロンボとは役柄が違うから意識はしていないが、演技のヒントは得た。」[51] と語っていたように、次第に推理力と洞察力を駆使した「落としの山さん」というキャラクターとして成長していった[50][52]。露口は1984年のインタでビューで、山村という男を「超真面目な人間である。」と分析している[12]

「山さん」の役柄の設定については、露口と岡田、脚本家で実在の人物のように思われるほど激しい議論を重ねた。ドラマの中の人物を厳しく吟味して作り出したことは、プロデューサーの岡田にとってもかつてない経験であった[53]

西村晃演じる犯人と取り調べ室で丁々発止を繰り広げ、本編のほとんどを2人だけで演じた第163話「逆転」をはじめとして、数々の犯人と1対1の対決をし、完全犯罪のごとき事件を解決していく「山さん」主演の「対決シリーズ」における露口の名演技によって、若い人の嗜好に合わせがちな『太陽にほえろ!』に大人の鑑賞に耐えうる内容が注入された。その結果、番組の視聴者の幅は大きく広がり、高視聴率を獲得する大きな要因となった[54]。岡田晋吉は、「太陽にほえろ!」が批評家や知識人からも肯定的な評価を得たのは露口の計算され尽くした演技による「山さん」の力に負うところ大と述べている[50]

人質にとられた病弱の妻の命を守るために、犯人のいいなりに泥だらけのリンゴを口にして、妻に対する深い愛情を表現するなど、劇中で妻が亡くなるシーンにいたるまで、いくつもの素晴らしい夫婦愛の物語を演じた「山さん」は主婦から理想の男性像として受け入れられた[53]。この夫婦愛の物語の成功によって『太陽にほえろ!』は刑事の私生活を描くことに成功した[54]。特に第23話「愛ある限り」と第206話「刑事の妻が死んだ日」は不朽の名作と高く評価され、「山さん愛妻編」としてビデオ化された[55]

少年少女の自殺が社会問題になっていた時期、露口の演技力に頼り、「山さん」主演でメイン視聴者である少年少女に向かって、「自殺をしてはいけない」と訴える話(第301話「銀河鉄道」)を作ったら、視聴者から「自殺を思いとどまった。」という手紙が寄せられたという[50]

『太陽にほえろ!』で露口の主演もしくは主演と同等の扱いなのは87話分あり、竜雷太に次いで多く[56]、『太陽にほえろ!』出演者の中で唯一2話分のスペシャル版で主演を務めた[57]

自身初の写真集である『露口茂in太陽にほえろ!』の出版にあたっても、露口が完全主義者であり、相当のこだわりを見せた[58]

『太陽にほえろ!』出演時、露口に来るファンレターの数は、新人刑事に次ぐ[59]、あるいはそれをしのぐほど多いこともあり、中年層のみならず、若い女性からのファンレターも非常に多かった[12]。いつも冷静でボスを助け、派手な動きはないが、行動を起こせば決断が速く、的確で、ほかの刑事たちの中心となる。その考える顔つきは刑事というより、大学教授みたいな大人のムードがあるのが、中年婦人にもてる理由と言われた[59]

露口、そして石原裕次郎が共に高校時代バスケットボールをしていたことから、露口は石原と一緒にバスケットボールを取り入れたエピソードをやりたいと語っていた[7]

1984年には番組を楽しみながらマイペースでやっているが、同時に番組に対しても、俳優としてもさまざまな葛藤があることも語り[12]、1985年渡辺徹が演じるラガー刑事が降板の際、渡辺に、そろそろ自分も降板したいと語っていた[60]
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