電気化学的勾配
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細胞内のイオン濃度(mM)[16][17][18][19]イオン哺乳類イカ軸索出芽酵母大腸菌海水
細胞血液細胞血液
K+100 - 1404-540010 - 2030030 - 30010
Na+5-15145504403010500
Mg2+10 [注釈 1]
0.5 - 0.8 [注釈 2]1 - 1.55030 - 100 [注釈 1]
0.01 - 1 [注釈 2]50
Ca2+10?42.2 - 2.6 [注釈 3]
1.3 - 1.5 [注釈 4]10?4 - 3×10?41023 [注釈 1]
10?4 [注釈 2]10
Cl?411040 - 15056010 - 200 [注釈 5]500
X?1389300 - 4005 - 10
HCO3?1229
pH7.1 - 7.3[20]7.35 - 7.45 [20] (動脈血)

6.9 - 7.8 [20] (全血液)7.2 - 7.8[21]8.1 - 8.2[22]
^ a b c 結合
^ a b c 遊離イオン
^ 総量
^ イオン化
^ 培地に依存

プロトン勾配

プロトン勾配は多くの細胞種でエネルギー貯蔵の形態として重要である。通常、勾配はATP合成酵素、鞭毛の回転、代謝産物の輸送などを駆動するために利用される[23]。この節では各細胞でプロトン勾配の形成を助ける3つの過程、バクテリオロドプシン、非循環的光リン酸化、酸化的リン酸化に焦点を当てる。
バクテリオロドプシンバクテリオロドプシンによるプロトンの汲み上げを開始する、レチナールのコンフォメーション変化の模式図。

古細菌では、バクテリオロドプシンはプロトンポンプによってプロトン勾配を形成する。プロトン勾配はH+濃度の低い側から高い側へ移動させるプロトン輸送体に依存している。バクテリオロドプシンでは、プロトンポンプは568 nmの波長の光子の吸収によって活性化され、レチナールシッフ塩基(SB)の異性化によってK状態となる。これによってSBはAsp85とAsp212から離れ、SBからAsp85へのH+の転移が引き起こされてM1状態となる。その後、Glu194からGlu204が引き離されてM2状態に移行し、Glu204から外部溶媒へプロトンが放出される。SBはAsp96によって再プロトン化されN状態となる。Asp96の脱プロトン化状態は不安定であるため、細胞質からのプロトンによって迅速に再プロトン化が行われることは重要である。Asp85とAsp96のプロトン化はSBの再異性化を引き起こしてO状態となる。最終的に、Asp85からGlu204へプロトンが渡されてバクテリオロドプシンは基底状態となる[23][24]
光リン酸化光リン酸化の簡略図

葉緑体におけるPSIIによるプロトン勾配の形成の駆動は光に依存しているが、PSIIはプロトン勾配の形成のために方向性のある酸化還元反応を利用する。タンパク質を介して物理的にプロトンを輸送するのではなく、プロトンの結合を必要とする化学反応が細胞側で、プロトンの遊離を必要とする化学反応が細胞内側で起こることで結果的にプロトンが移行する。まず、P680(英語版)の2つの電子を高エネルギー状態へ活性化するために、680 nmの波長の光子が吸収される。高エネルギー電子はタンパク質に結合したプラストキノン(PQA)へ移動し、その後非結合状態のプラストキノン(PQB)へ移動する。これによってプラストキノン(PQ)はプラストキノール(PQH2)へと還元され、ストロマから2つの光子を獲得した後PSIIから解離する。P680の電子は酸素発生複合体による水分子の酸化によって補充される。その結果、O2とH+がルーメンへ放出される[23]。全体の反応は次のように表される。

4   p h o t o n s ( 680 n m )   +   2 H 2 O   +   2 P Q   +   4 H + ( s t r o m a ) ⟶ O 2   +   2 P Q H 2   +   4 H + ( l u m e n ) {\displaystyle 4\ photons(680nm)\ +\ 2H_{2}O\ +\ 2PQ\ +\ 4H^{+}(stroma)\longrightarrow O_{2}\ +\ 2PQH_{2}\ +\ 4H^{+}(lumen)} [23]

PSIIから解離した後PQH2はシトクロムb6f複合体へ移動し、その後2つの異なる反応で2つの電子がPQH2からプラストシアニンへ移動する。この過程は、電子伝達系の複合体IIIで行われるQサイクル(英語版)と類似している。最初の反応では、PQH2は複合体のルーメン側に結合し、1つの電子が鉄硫黄中心へ移動し、その後プラストシアニンへ移動する。もう1つの電子はヘムbL(英語版)へ移動し、その後ヘムbL、プラストキノンへ移動する。2番目の反応では、2つ目のPQH2が酸化され、他のプラストシアニン分子とPQに電子が付加される。双方の反応によって、4つのプロトンがルーメンへ移行する[25][26]
酸化的リン酸化ミトコンドリアの電子伝達系の詳細な模式図

電子伝達系では、複合体Iが還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)から2つの電子を移動することにより、ユビキノン(UQ)からユビキノール(UQH2)への還元を触媒する。それに伴って、4つのプロトンがミトコンドリアマトリックスからIMSへ移行する[27]

NADH + H + + UQ + 4 H + ⏟ m a t r i x ⟶ NAD + + UQH 2 + 4 H + ⏟ I M S {\displaystyle {\ce {NADH}}+{\ce {H^+}}+{\ce {UQ}}+4\underbrace {{\ce {H^+}}} _{\mathrm {matrix} }\longrightarrow {\ce {NAD^+}}+{\ce {UQH_2}}+4\underbrace {{\ce {H^+}}} _{\mathrm {IMS} }} [27]

複合体IIIはQサイクルを触媒する。最初の段階では、複合体Iによって還元されたUQH2からの2つの電子がQo部位の2分子の酸化型シトクロムcへ移動する。2番目の段階では、Qi部位のUQH2をUQへ還元するためもう2つの電子が必要となる[27]。全体の反応は次のように表される。

2   c y t o c h r o m e   c ⏟ o x i d i z e d   +   UQH 2   +   2 H + ⏟ m a t r i x ⟶ 2   c y t o c h r o m e   c ⏟ r e d u c e d   +   UQ   +   4 H + ⏟ I M S {\displaystyle 2\ \underbrace {\mathrm {cytochrome\ c} } _{\mathrm {oxidized} }\ +\ {\ce {UQH_2}}\ +\ 2\underbrace {{\ce {H^+}}} _{\mathrm {matrix} }\longrightarrow 2\ \underbrace {\mathrm {cytochrome\ c} } _{\mathrm {reduced} }\ +\ {\ce {UQ}}\ +\ 4\underbrace {{\ce {H^+}}} _{\mathrm {IMS} }} [27]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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