電子工学
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歴史

能動素子をはじめとする前述各分野を電子工学の領域として扱うとするならば、その起源は後述の通り20世紀初頭に求めることが出来る。日本語の語としての「電子工学」は、1940年の日本工学大会における電気学会会長八木秀次の講演題目「電子工学の躍進」が初出とみられる。この講演で八木は「今後、電子管の応用は目覚ましく発展する。無線・電話・ラジオ・写真伝送・テレビジョンをはじめとして、国民の日常生活にまで侵入すると予期される」と述べており、電子管(真空管)による能動素子を念頭に置いていたものと考えられる[6]

リー・ド・フォレストが機械的でなく電気的に増幅可能な能動素子の真空管である三極管を発明した1906年ごろ、電気工学から電子工学が派生的に出現した。[7]1950年頃まで通信工学とほぼ同義であり、通信用途での送信機受信機の回路構成、それらに使用する真空管についての研究が中心であった。固体増幅素子としては1920年代からの先駆的研究に続き、1947-48年にトランジスタが発明されている。[8][9][10]1959年にはシリコンでのプレーナー技術が開発され、[11]集積回路開発への道が開かれた。集積回路はデジタル型の論理演算による電子計算機の発展につながり、今日の情報社会の基となった。

高周波発振については、電子管による高周波大出力発信分野の利用のほか、1950年代にメーザー、レーザーが開発され、量子力学による電子のエネルギー準位間の遷移を基にしたデバイスが登場した。またスイッチング動作の周波数源としての水晶振動子(1921年)、圧電素子による周波数フィルタ(1960年代?)等も電子工学の範疇と考えられる。

パワーエレクトロニクス分野[12]ではサイリスタ(1957年)の登場により、[13]小電力信号で大電力電流が制御可能となったことが起源である。

超電導材料を絶縁体を挟んで接合したジョセフソン素子は1962年に発明されている。[14]高速スイッチング動作、磁気検出への利用が可能である。[15]

表示装置の分野では1897年にブラウン 陰極線管を発明し、それを元に1907年にロージングが映像表示装置を発明した。1968年に液晶ディスプレイが、[16]1970年代初頭にプラズマディスプレイが開発された。[17][18]21世紀に入り有機ELディスプレイの開発が進められ、実用化した。

電磁的情報記録では磁気記録としてポールセンワイヤーレコーダー(1898年)が登場し、1907年には直流バイアス方式が発明され、情報記録への利用はこの頃に起源を求めることが出来る。[19]その後記録媒体が磁気テープ(1940年代前半実用化)、[20][21]ハードディスク(1956年登場[22])に移っている。磁気記録は当初は電子工学の分野とは意識されなかったが、記録容量の拡大に伴って磁区が微細化して磁性体の微視的な挙動に研究の関心が移ったことから、次第に電子工学の範疇と認識されるようになった。情報記録方式としては交流バイアス方式(1938年)、垂直磁気記録方式(1975年)が登場している。[23][24]この他情報記録デバイスとして半導体素子から発展したフラッシュメモリー(NOR型1980年、NAND型1986年発明[25])も存在する。[26][27]情報記録媒体自体は物理的なものであるが、読み出しに前述のレーザーを用いるものとしてレーザーディスク (LD)、コンパクトディスク (CD)、DVDブルーレイディスク (BD)[28]がある。
電子回路と電子機器

以下では電子工学の応用としての電子回路と電子機器について述べる。
電子機器と電子部品

電子機器はその機能を実現する機能ブロックとしての電子回路の集まりとして構成されている。電子回路は増幅回路発振回路フィルタ回路など意図した機能を果たすように構成されている。電子回路は回路素子が個別の部品として何らかの配線部品プリント基板はんだ付けするなど)で相互接続され実装される場合と、集積回路の形で複合的に実現される場合がある。個別部品としてよく見られる電子部品としては、コンデンサ抵抗器ダイオードトランジスタなどがある。電子部品はトランジスタやサイリスタなどの能動素子と、抵抗器やコンデンサなどの受動素子に分類される。個別部品と集積回路は排他的な物ではなく、機能として必要に応じて使い分けられる。同じ基板上に併存することもある。
回路の種類

電子機器・システムは次の部分に分けられる。
入力 -
電子的・機械的なセンサ(または変換器)で、温度圧力、電磁場等の物理量をシステムの外部から取得し、電流信号や電圧信号に変換する。

信号処理回路 - 組み合わされた電子素子により信号を操作し、解釈したり、変換したりする。

出力 - アクチュエータや他の素子(変換器も含む)により、電流・電圧信号をシステム外の利用者にとって有用な形態に再変換する。

テレビ受像機を例に挙げると、入力はアンテナケーブルテレビから得られた放送信号である。テレビ受像機内部の信号処理回路は、放送信号から輝度や色や音声の情報を取り出す。出力は、電気信号をブラウン管スピーカーによって映像や音声の形態に変換することによって実現される。

電子回路や装置は、アナログとデジタルに分類される。両者の橋渡しを担当するアナログ-デジタル変換回路と、デジタル-アナログ変換回路もある。
アナログ回路詳細は「アナログ回路」を参照周波数可変インバータ J100(日立)

ラジオ受信機などのアナログ電子機器の多くは、数種類の基本回路の組み合わせで構成されている。アナログ回路は連続的な範囲の電圧を使う。[29]

電子回路は1個から数千個の部品で構成されるため、これまでに考案されたアナログ回路は使用している部品の違いを考慮すれば膨大な数になる。

アナログ回路には線型回路もあるが、[30]非線型な効果を持つミキサ回路、変調回路なども多数存在する。アナログ回路の典型例として、真空管やトランジスタを使用した増幅回路演算増幅回路[31][32][33]発振回路などがある。


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