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雲の中で起こる放電、雲と雲の間の放電をまとめて雲放電と呼び[5]、雲と地面との間の放電を対地放電または落雷と呼ぶ[5]

なお、雷は主にを伴う雷雨時に粒子で形成される雷雲によっておこる雷を指す場合が多いが、そればかりではなく、火山噴火時や砂嵐時にの粒子の帯電で形成される雷雲によっておこる火山雷なども雷に含む。
語源

大和言葉の「いなずま」もしくは「いなづま」(歴史的仮名遣いは「いなづま」。ただし「いなづま」は現代仮名遣いでも許容されている)の語源は、が開花し結実する旧暦太陰暦)の夏からのはじめにかけて雨に伴い雷がよく発生し、稲穂は雷に感光することで実る、という信仰が生まれ、雷を稲と関連付けて 「稲の『つま(=配偶者)[注 1]』」と解し、「稲妻」(いなづま)、あるいは「稲光」(いなびかり)などと呼ぶようになったといわれている[注 2]日本書紀には「雷電(イナツルヒ)」と記された史記があり、奈良時代より雷と稲との縁が窺い知れる[6]

大和言葉「かみなり」の語源は、昔、雷はが鳴らすもの、と信じられていて「神鳴り」と呼ばれたため。
発生の原理

雷の発生原理は研究が続けられており、さまざまな説が論じられている[7]が、まだ正確には解明されていない[3]。2021年現在、雷は主に、上空と地面の間または上空の雷雲内に電位差が生じた場合の放電により起きる、と言われており、主に以下のように説明されている。低気圧や前線等の荒天時に発生することが多いが、台風の際には雷が発生しにくい傾向がある。

電位差が発生した雲または大地などの間に発生する光と音を伴う放電現象[8]
雷雲の発生積乱雲の形成過程

地表で大気が暖められることなどにより上昇気流が発生し上空へ昇って行くと、あるところで飽和水蒸気量を超えて水滴(雲粒)が発生する。これが雲であり、湿度が高いほど低層から、気流の規模が大きいほど高空にかけて、発達する。

この水滴は高空にいくほど低温のため、氷の粒子である氷晶になる。氷晶はさらに(あられ)となり上昇気流にあおられながら互いに激しくぶつかり合って摩擦されたり砕けたりすることで静電気が蓄積される。成長して重くなる霰は下に、軽い氷晶は上に持ち上げられるが、後述のとおり霰は負、氷晶は正に帯電するため、雲の上層には正の電荷が蓄積され、下層には負の電荷が蓄積される。

雲の中で電位差が生じる原因は、長らく研究者の間で議論されており、異なる切り口からいくつかの説が出されてきた。そのうちのいくつかは現在でも支持されている。そして、これらを全体的観点からまとめた着氷電荷分離理論(高橋, 1978)が最も多くの支持を得ている[9]

水は固体よりも液体の方が結合解離エネルギーが低いため、水滴中には多くのH+OH-が生成される。ただし、H+は氷に浸透しやすいため、水滴・氷晶・霰が接触しあう環境では、氷が正、水が負に帯電する。

同じ環境中に氷晶と霰がある場合、霰にはより多くの雲粒が蒸発・昇華(ライミング)するが、その時の潜熱の影響で霰は氷晶よりも温かくなる。溶媒中で起こるイオン結合の繰り返し過程の中で、拡散しやすいH+が低温側へ拡散するため、低温側が正、高温側が負に帯電する。

気温が-10℃ - 0℃位の比較的暖かい環境下では、霰へのライミングに伴う潜熱で霰の表面が溶けて水膜ができる。既述のように、水膜中のイオンのうちH+は氷に浸透しやすいので霰の各部分は正、水膜部分は負に帯電する。この霰に外から氷晶が衝突してくると、氷晶は水膜の一部を取り去って負に帯電し、霰は全体として正に帯電する。

よって、雲水量が少ない(湿度が低い)環境で氷晶と霰が衝突すると、低温の氷晶が正、高温の霰が負に帯電する。雲水量が多い(湿度が高い)環境で氷晶と霰が衝突すると、低温の氷晶が負、高温の霰が正に帯電する。

稲妻稲妻のアニメーション

上層と下層の電位差が拡大して空気の絶縁の限界値(約300万V/m)を超えると電子が放出され、放出された電子は空気中にある気体原子と衝突してこれを電離させる。電離によって生じた陽イオンは、電子とは逆に向かって突進し新たな電子を叩き出す。この2次電子が更なる電子雪崩を引き起こし、持続的な放電現象となって下層へ向って稲妻が飛んでいく。

また、下層の負電荷が蓄積されると、今度は地面では正の電荷が静電誘導により誘起される。この両者の間でも、電位差がある一定を超えると放電が起きる。

これらの放電は、大気中を走る強い光の束として観測される。1回の放電量は数万 - 数十万A、電圧は1 - 10億V、電力換算で平均約900GW(=100W電球90億個分相当)に及ぶが時間にすると1/1000秒程度でしかない。エネルギーに換算するとおよそ900MJであり、もし、無駄なくこの電力量をすべてためることができるなら、家庭用省電力エアコン(消費電力1kW)を24時間連続で使い続けた場合、10日強使用できる。

この間を細かく分けると、落雷(負極性の雷)においては、雷雲から最初に伸びる複数の弱い光の先駆放電(ステップトリーダー)、大地側から迎えるように伸びるストリーマ(線条・先行放電)、両者が結合して大量の電荷が本格的に先駆放電路に流入する主雷撃の3段階に大別され、電位差が中和[要曖昧さ回避]されるまで放電が続く。ステップトリーダーが複数であるのに対し、ステップトリーダーと結合するストリーマは1ないしは数個までであり、結果、主電撃として目視確認できる放電路は少なくなる。典型的な夏雷であれば、1回の落雷において、その複数のステップトリーダーの広がりはおよそ10000 (m) 範囲であり、主電撃すなわち落雷はこの範囲で形成される[10]

主な夏雷は電子は雲から地表に、電流は地表から雲に流れる。冬雷の場合はその性質上これとは逆に電子は地表から雲に、電流は雲から地表に流れる。 稲妻の過程(0.32 秒ごとに撮影)
雷鳴.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}雷鳴この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

放電現象が発生したときに生じる音である。雷が地面に落下したときの衝撃音ではなく、放電の際に放たれる熱量(主雷撃が始まって1マイクロ秒後には、放電路にあたる大気の温度は局所的に2 - 3万という高温に達する[5])によって雷周辺の空気が急速に膨張し、音速を超えた時の衝撃波である[11]

稲妻の放つ光は光速で伝わるため、ほぼ瞬間に到達する。これに対して、雷鳴は音速で伝わるため、音が伝わってくる時間の分だけ、稲妻より遅れて到達する。そのため、雷の発生した場所が遠いほど、稲妻から雷鳴までの時間が長くなり、その時間を計ればおおよその距離も分かる。

発現地点までの距離(自分を中心とした半径)を P(キロメートル)、稲妻が光ってから(もしくはラジオにパルス雑音[12][出典無効]が入ってから)雷鳴が聞こえる瞬間までの時間を S(秒) とすると、次のように表される。定数0.34は気温を15℃としたときのキロメートル毎秒で表す音速。 P = 0.34 S {\displaystyle P=\,0.34S}

雷鳴が聞こえる距離は通常で約10 - 15kmだが、雷雲外への放電がある場合などは、雷雲から30km以上離れていても雷鳴が聞こえることがある。
種類スーパーセル
熱雷

急激な上昇気流により低層から高層まで形成された雷雲は主に積乱雲などで構成され、熱雷と呼ぶ。夏季によく発生するため、俗に夏雷とも呼ばれる。局地的かつ散発的に発生し、持続時間は短い傾向がある。
界雷

積乱雲でも寒冷前線上などに発生する場合、また、温暖前線などで同様の原理が発生した場合の雷は界雷と呼ぶ。帯状にまとまって発生し、セルの世代交代があって前線の移動に付随して落雷域が移動することが多い。
熱界雷

前線に向かって湿った空気が流れ込むことによって形成された雷雲による雷など、熱雷と界雷の両方の特性を併せ持つものを熱界雷と呼ぶ。夏季において激しい雷雨を伴うことが多く、たびたび地上において被害を引き起こす雷。局地的にまとまって発生し、時に100kmを超える巨大な積乱雲群を構成して落雷域が広範囲に及ぶ。
渦雷


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