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この差は、飽和した湿潤大気中では、上昇とともに凝結が進んで潜熱が放出され温められることで生じる[21]

一方、特に(地表に達した層雲)のなかには違う原因で生じるものもある。夜間の放射冷却により平野盆地で見られる放射霧は、地表付近の大気が冷やされて生じる。冷たい海に暖かく湿った気流が入ったとき見られる移流霧(混合霧、海霧)は、海面で冷やされた大気と暖かく湿った大気が混ざり合い、冷却・加湿され生じる。暖かい川に冷たい気流が入ったとき見られる蒸気霧(川霧)は、移流霧の逆で、水面から暖かく湿った大気が上昇し冷たい大気と混ざり合い、冷却され生じる。また逆転層に覆われた低い層雲の下では、冷たい下降気流と雨粒の蒸発による冷却[注 1]・加湿により、雲底が次第に低下、地表に近づいて霧になることがある[22]

また雲粒の大きさでは核形成の限界から、層状の雲では0 ℃から -10 ℃くらいまで、対流性の雲では -25 ℃くらいまで、ほとんどが過冷却水滴で構成され、またこれらより低く -40 ℃くらいまでは氷晶と過冷却の混在、 -40 ℃以下では氷晶が多い構成になると考えられている[23]
大局的気象の観点から

大気中において、上昇流により断熱冷却を引き起こすメカニズムはいくつかあるが、主なものを挙げる[24]

対流性: 日差し(太陽放射)による加熱は、地形の起伏や雲による遮蔽の有無などによりムラがあり、周囲よりも暖かい地表に接する空気は浮力を得て、上昇する[24]。特に、加熱に起因し山岳の尾根から湧き上がるような上昇流を熱上昇気流(サーマル)と呼ぶ。

収束性: 低気圧の中心や収束帯(シアーライン)でみられる。地表に接する大気の下層では、集まった大気がぶつかり、行き場を失って上空へ向かう[24][25]

地形性

滑昇風[24]: 風の穏やかな朝、谷間に安定成層が発達しているとき、斜面に接する大気は朝日に温められるが鉛直には上昇できず、尾根に向かって斜面に沿いゆるやかに上昇する。

山岳波: 山などの起伏のある地形に沿って強い水平風(山越え気流)が吹くと、強制的に大気が持ち上げられる。尾根を越えると冷やされているため下降するが、再び温められ上昇、その後も上下に振動を繰り返すことでパターンが風下の上空、山から離れたところに伝播する。山に掛かるレンズ雲、笠雲、吊るし雲や、上空に見える波状雲放射状雲をつくる[24][26]




前線性: 暖気と寒気がぶつかる前線では、暖気が寒気の上に乗り上げ、前線面に沿って上昇する[24][27]

温暖前線の上昇流は比較的弱い。典型的には前線面に沿い、地上の前線に近い順に層雲、乱層雲、高層雲、高積雲、巻層雲、巻積雲、巻雲がみられる[27]

寒冷前線の上昇流は比較的強い。典型的には地上の前線の真上に積乱雲、その後面に層積雲や積雲、前面に積雲や層積雲、高積雲がみられる[27]

発達した積乱雲のそばでは、下降流が地表にぶつかって水平に流れ局地前線(ガストフロント)が形成され、これに沿ってアーチ雲がみられることがある[28]


他の自然現象起源や人為起源

山火事火山噴火飛行機の航跡、工場の排熱などを起源に発生する雲がある[29][30][31]


雲をつくる
雲をつくる実験

小規模なものであれば、雲を製造することは容易であり、理科実験や身近にできる科学実験として、広く行われている。

密閉可能な容器の中を少し濡らし、線香などの凝結(固)核を充満させて密閉し、ポンプなどで気圧を下げると、減圧冷却によって中の温度が露点を下回って凝結(固)をはじめ、雲ができる。

熱湯から立ち上る「湯気」、ドライアイスから流れ落ちるような白い冷気、冬の寒い日に白くなる吐いた息、工場や排気などから出る白い蒸気なども、人工的に作ることができる雲だといえる。

また、普通の雲に比べて粒が大きい、霧吹きで作る水滴でも、風をうまくコントロールして空中に浮かべることができれば、雲だといえる。
「雲の種まき」

ただ、人工降雨は容易ではない。現状では、ヨウ化銀などの凝結(固)核を大量に散布することで雲の素をつくる「雲の種まき」が実用化の限度となっている。しかも、「雲の種まき」においても空気中の水蒸気が過飽和あるいはそれに近い状態になければ雲はできにくく、条件も限られる。
種類主な雲種・変種の模式図(英語)

雲には多くの俗称があるが、学術分野では統一した分類と呼称がある。世界気象機関が発行する国際雲図帳に基づいて、雲は10の基本形(類、十種雲形)に分類され、さらに雲によっては数十の種・変種・副変種に分類できる[32][33]

この項目では基本形について解説する。種・変種・副変種や特殊な雲について詳しくは雲形を参照のこと。

現在の雲の分類は、ルーク・ハワードが4つに分類しラテン語名を付けたのが原型で1803年に論文が発表されている。同時期に博物学者ジャン=バティスト・ラマルクも分類を行ったが広まらなかった。その後ヒルデブランドソン(英語版)、ラルフ・アバークロンビーはタイプ写真による雲形図を作成、世界中で共通の分類が行えることを確認して分類を提案した。更に国際気象会議による議論を経て、十種雲形を定めた『国際雲図帳』の発行(1896年)に至る[34][35][36][37]
基本の雲

雲の基本形(類、十種雲形)[23][34][35][36][38][33]高度類
学術名, 略号主な俗称
特徴
上層雲巻雲 けんうん
Cirrus, Ciすじ雲 はね雲 しらす雲 ※以前は絹雲と称した
白色 すじ状、毛状
巻積雲 けんせきうん
Cirrocumulus, Ccうろこ雲 いわし雲 さば雲
白色 うろこ状に分布 視直径1度以下の小さな雲片の集団 陰影がない
巻層雲 けんそううん
Cirrostratus, Csうす雲
白色 ベール状 陰影がある が生じうる
中層雲高積雲 こうせきうん
Altocumulus, Acひつじ雲 むら雲 まだら雲 (うろこ雲)
白色で影が灰色 まだら状に分布 視直径1度 - 5度のやや小さな雲片の集団 陰影がある
高層雲 こうそううん
Altostratus, Asおぼろ雲
灰色 太陽を覆いぼんやりと霞む
乱層雲 らんそううん
Nimbostratus, Ns雨雲 雪雲
灰色、暗灰色 連続したを伴う
下層雲層積雲 そうせきうん
Stratocumulus, Scうね雲 かさばり雲 くもり雲
白色や灰色 団塊状、ロール状 視直径5度以上の塊
層雲 そううん
Stratus, St霧雲
白色、灰色 ぼやけた霧状
積雲 せきうん
Cumulus, Cu綿雲 積み雲 入道雲
白色で濃い陰影をもつ 下面が水平 上面がドーム形 対流により上空へ発達する
積乱雲 せきらんうん
Cumulonimbus, Cb雲 入道雲 かなとこ雲
白色で濃い陰影をもつ 上空へ大きく発達したもの 下面が水平 上面がドーム形またはつぶれ横に広がる 強い雨やを伴う

なお、乱層雲は上層や下層にもつながっていることがある。高層雲は上層にもつながっていることがある。発達した積雲や積乱雲は雲頂が中層や上層に達する[38]

高度の目安[38]層高緯度(極・寒帯)中緯度(温帯)低緯度(熱帯)
上層3 - 8 km5 - 13 km6 - 18 km
中層2 - 4km2 - 7 km2 - 8 km
下層地表 - 2 km地表 - 2 km地表 - 2 km


十種雲形の写真例

巻雲

巻積雲

巻層雲

高積雲

高層雲


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