離陸
[Wikipedia|▼Menu]
ブリティッシュ・エアウェイズボーイング747が離陸する様子FedExMD-11が離陸する様子

離陸(りりく、英:Take-off)とは、航空機が地面を離れ、空中に浮上すること。また、浮上したのちに安定して上昇を継続すること。水上機などにおいて、水面から離れて浮上することを同様に離水と言う。
概要

多くの固定翼機は、離陸滑走によって必要な揚力が得られる速度まで加速し、離陸するのが一般的である。加速に使う動力源としては、レシプロエンジンターボジェットエンジンターボファンエンジンなどが主に用いられる。離陸の性能はその航空機の翼型や翼面積、機体重量などによって変わり、翼面積が小さいほど、また重量が重いほどに離陸速度は速くなる傾向にある。
離陸に関する速度

離陸に際して重要なポイントとなる速度がいくつかあるため、一部を下に記す。
離陸決心速度(V1)

離陸決心速度(V1)とは、パイロットが離陸を継続するか、それとも中止するのかを判断する速度であり、この速度を超過したあとに離陸中止を行うと滑走路内で安全に停止できずにオーバーランをしてしまう危険性があるため、V1を過ぎた後に機体に何らかの故障(エンジン一発停止など)が発生しても、基本的には離陸を継続しなければいけない。V1は滑走路長や機体重量、気温や気圧などさまざまな要因をもとに決定される[1]
ローテーション速度(VR)

ローテーション速度は機首上げ速度とも言い、その名の通り離陸に向けて機首を上げ始める速度である。パイロットは指示対気速度がVRに達したことを確認してから操縦桿を引き、機首上げ操作を開始する[1]
安全離陸速度(V2)

安全離陸速度(V2)とは、地表面から浮上した飛行機が安全に上昇を継続できる速度である。具体的には、滑走路上空35ftの位置において到達しておかなければならない速度であり、機体の失速速度や離陸後の上昇勾配、また1エンジン停止時においても安全に上昇できるか等の様々な条件を踏まえて決定される[1]
離陸手順エンブラエル E-Jetの離陸F/A-18の離陸
滑走路への移動

航空機が、離陸に用いる滑走路まで移動する動作をタキシングとよぶ。移動は、固定翼機の場合地上走行によって行う。固定翼機の車輪は動力を持たないため、飛行に用いる動力(レシプロエンジンやジェットエンジンなど)をタキシングのためにも用いる。巡航中の高高度の空中に対して、地上ではエンジン効率が悪い。更にタイヤの転がり抵抗も加わるため、タキシングには移動距離・速度の割には多大な燃料(時間を無視して同じ距離を移動するなら約4倍)を必要とする。
離陸の方法

移動時間や燃料の節約のため、あるいは交通整理のため、離陸性能が満足すれば、滑走路の端までタキシングをせずに滑走路の途中から滑走路に進入して離陸することもあり、これはインターセクション・デパーチャーと呼ばれている。なお、東京国際空港ジョン・F・ケネディ国際空港などにおいて、交差する複数の滑走路を同時に離着陸に使用する場合は、インターセクション・デパーチャーにする必要がある。

離陸許可が出ている場合、滑走路端で止まらずにそのまま離陸する(ローリングテイクオフ)場合と、いったん停止して、ある程度エンジン出力を出してからブレーキを離し離陸する(スタティックテイクオフ、またはスタンディングテイクオフ)場合があり、それぞれにメリット、デメリットがある。混雑する空港では、先に離陸した航空機が十分に安全な距離まで離れていき、かつ、その後方乱気流が収まるまで、次の離陸機は待たなくてはならない。そのため、次の離陸機は滑走路に入ることはできても、所定の時間(2分程度)が経過するまで離陸できず、滑走路上で待つことになる。このため、必然的にスタティックテイクオフになる[2]。一方で、騒音問題に配慮しなくてはならないような空港では、地上の滑走路上で停止してエンジンをふかすことはせず、速やかに離陸する(ローリングテイクオフ)[3]
滑走開始

スラストレバー(一般的な旅客機では2席ある操縦席の間にあるケースが多い)を操作して、動力源を定められた離陸推力まで上げ、機首上げ速度 (VR) まで加速する。このとき揚力増加と抗力増加のバランスによっては、フラップ(補助翼)を少し降ろしていることが多い(航空機の種類で定められている)。

後述のとおり、離陸はオートパイロットは利用できないが、推力を自動制御するオートスロットルを利用することはある。まず、滑走路上にてギアブレーキをかけた状態で、パイロットが手動で6?7割程度にエンジンの推力を上げ、エンジンの動作に異常がないことを確認する。それから、ギアのブレーキを解除したうえでオートスロットルのスイッチを入れる[4]。オートスロットルが作動すると、スラストレバーが自動的に動き、エンジン出力が離陸に適した推力まで自動的に上昇し、離陸滑走を開始する。このとき、PF(操縦を担当するパイロット)は機首上げに備えて片手で操縦桿を持ち、万一の離陸中止(RTO)に備えて他方の手をスラストレバー上部に添える[5]。同時にPM(操縦以外を担当するパイロット)がスラストレバー下部を支える場合もある。

航空機の種類や条件(重量・気温など)と滑走路の長さによっては、その速度から・その速度に達する位置から残りの滑走路を使って離陸中止できる離陸決心速度V1がVRより低く先に到達することがある。V1を超えての停止操作は危険であるため、V1を超えたらいかなる事態(エンジン片発故障など)でも離陸操作を継続しなければならない(反射的に停止操作をしないようにV1とともに、先に述べたスラストレバーから手を離す決まりがある場合もある)。

整備された空港の滑走路のセンターラインには滑走路中心線灯が埋め込まれており、これによりわずかに滑走路表面に凹凸がある。離陸滑走を行うにあたって、このライトを踏むと航空機の揺れの原因となる。そのため、風などの気象条件や滑走路の路面状態がよいときにおいて、熟練したパイロットは、わざと滑走路のセンターラインを外して、ライトを踏まないように離陸滑走して、揺れの少ない乗り心地のよい離陸を行うことがある。この行為については、センターラインを外すため滑走路から逸脱する可能性があり、危険であるからと行わないパイロットもいる[6]
離陸・上昇

VRを超えたら操縦桿を引き、機首を上げる。機首上げ動作に大きな力が必要ないように、このときまでにエレベータトリムはやや下がり気味(離陸位置)にしてある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:32 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef