離婚
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協議離婚という制度そのものは1804年のフランス民法典のほか現在では中国、台湾、韓国などでも採用されているが[25]、日本法における協議離婚は多くの国でとられるような公権による当事者意思の確認手続を有しておらず、離婚手続としては当事者の合意と届出のみで成立する点で世界的にみても最も簡単なもので特異な法制であるとされる[25][9][53]。日本では離婚のほぼ90%が協議離婚である[25][9]。さらに、協議離婚では、離婚届に理由を書く必要が無いため、日本では離婚原因の全体的な把握が難しくなっている[54]
協議離婚の成立

協議離婚は戸籍法の定めるところにより届け出ることを要する(764条・739条1項)。この届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で又はこれらの者から口頭でしなければならない(764条・739条2項)。

離婚の届出は、その要式性に関する規定(739条2項)及び親権者の決定の規定(819条1項)その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない(765条1項)。ただし、離婚の届出がこの規定に違反して誤って受理されたときであっても離婚の効力は失われない(765条2項)。

届出がない場合には法律上の離婚の効果は生じないが(協議離婚における届出は創設的届出である)[15]、事実上の離婚としてその法律関係の扱いについては問題となる[55]

離婚は当事者が離婚意思をもって合意すること要する(通説・判例)[56]。戸籍実務では夫婦の一方が他方に離婚意思がない(翻意した場合を含む)にもかかわらず離婚の届出が行われるのを防ぐため、当事者の一方が離婚の届出について不受理とするよう申し出る制度として離婚届不受理申出制度が設けられている(昭51・1・23民事2第900号民事局長通達)[57][58][59]
協議離婚の無効・取消し

協議離婚の無効
協議離婚には離婚意思が必要とされ、この離婚意思の内容については実質的意思説(当事者間において真に離婚をするという実質的意思を要するとする説。実体的意思説。通説)と形式的意思説(離婚の届出をするという形式的意思で足りるとする説。判例として大判昭16・2・3民集20巻70頁、最判昭38・11・28民集17巻11号1469頁)が対立する
[60][61][62]。ただし、無効な協議離婚も慎重な判断の下に追認しうる[14][63]

協議離婚の取消し
詐欺又は強迫によって離婚をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる(764条・747条1項)。ただし、この取消権は当事者が詐欺を発見し若しくは強迫を免れた後3ヶ月を経過し、又は追認をしたときは消滅するとされる(764条・747条2項)。なお、離婚の取消しは婚姻の取消しとは異なり遡及効があり、離婚は取消しによって遡及的に無効となり婚姻が継続していたこととなる[64]
調停離婚

家庭裁判所調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、これを調書に記載したときは、離婚の確定判決と同一の効力(ここでは、いわゆる広義の執行力)を有する(家事事件手続法268条)。離婚の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(同法244、257条)。これを調停前置主義という。

離婚調停成立後、調停申立人は10日以内に離婚の届出をしなければならない(戸籍法77条。協議離婚の届出とは異なり報告的届出となる)[15]
審判離婚

調停が成立しない場合においても、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で離婚の審判をすることができ(家事事件手続法284条)、2週間以内に家庭裁判所に対する異議の申立てがなければ、その審判は、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法287条)。

2週間以内に異議申立てがあれば審判は効力を失うため実際あまり利用されていない[65]
裁判離婚
裁判離婚の意義

協議離婚、調停離婚が成立せず、審判離婚が成されない時に、判決によって離婚すること。裁判離婚の成立は離婚総数の1%程度である。

離婚の訴えは、家庭裁判所の管轄専属する(人事訴訟法4条1項、2条1号)。つまり、家庭裁判所に訴えを提起する必要があり、地方裁判所での審理を希望することは不可能である(もっとも、家裁と地裁は同じ場所に同じ数建っているし、地裁である必要性は現在は全くないことを付記しておく)。

なお、裁判は公開されている。よって第三者や利害関係人に家庭の事情を知られてしまうことは知っておかねばならない。

離婚の訴えに係る訴訟において、離婚をなす旨の和解が成立し、又は請求の認諾がなされ、これを調書に記載したときは、離婚の確定判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法37条、民事訴訟法267条)。
離婚原因

裁判上の離婚には民法第770条に定められている離婚原因が存在しなければならず、夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる(民法第770条1項)。もっとも、離婚事由に該当するときであっても、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続が相当であると認めるときには、離婚の請求を棄却することができる(770条2項)。

配偶者に不貞な行為(不貞行為)があったとき(770条1項1号)
詳細は「不貞行為」を参照判例は民法第770条1項1号の不貞行為の意味について「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであって、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わないものと解するのが相当である」とする(最判昭48・11・15民集27巻10号1323頁)。

なお、"同性同士の場合は不貞行為に該当しない"。そもそも法律による規定が存在しない(法律が定められた時点で、同性間の不貞行為が想定されていなかった為)。したがって、不貞行為と認定されるのは異性間のみである。ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する。

配偶者から悪意遺棄されたとき(770条1項2号)
具体的には同居・協力・扶助義務(民法第752条)の不履行をいい、婚姻関係の放棄ないし廃絶を企図あるいは認容するものとみられるような程度のものでなければならないとされる[66][67][68]。別居が合意によるものである場合や正当な理由があるとき(病気療養、出稼ぎ、配偶者からの暴力など相手方配偶者に責任を帰すべき事由がある場合)は「悪意」とはいえず「遺棄」にもあたらない(通説・判例、判例として最判昭39・9・17民集18巻7号1461頁)[68][67]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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