大都市の歓楽街の古いビルに多く、一般的な企業の事務所(オフィス)よりも、小規模な飲食店、金融業、風俗業などが集まる。特に風俗業の看板はビル全体に覆いかぶさり、強烈な文言と刺激的な映像で通行人の興味を引く。あまりに大きいので非常出口を兼ねた窓をもふさぐことから、内部は昼でも薄暗く、通路も狭い場合が多い。
飲食店も酒類の提供が中心である。金融業も違法金利営業(闇金融)が多い。異業種同士が利益をかけて結束する形態も常態化し、表面上は別経営であるが、実際はひとつの経営主体(暴力団などの非合法集団)であり、結果ビル全体が一つの支配下にある場合もある。
「雑居」と呼ばれることに建物権利者は不快感を持つ。しかし営業形態が公然にできない業種の賃借人(店子)が多く、他者の関与を嫌う。通常の賃貸ビルなら貸主店子相互が一定の親睦友誼を図っているが、それができない以上「雑居」と称して他者の介入を拒んでいる。これがオフィスビルとの相違である。また違法営業について司法からの追及を逃れるために、自らの関与を否定することを狙い「雑居」と称しているものもある。 雑居ビルでは、ビルオーナーが利益を最優先する傾向があるため、入居させるテナントを選ばないことが多い。一定の利益を上げるとビルオーナーが建物を転売し、所有者が一定しないケースがしばしばある。非公然業種が入居したビルに通常の入居者の入居は難しく、貸主もこうした借主と関係を持つことを忌避するからである。閉鎖的な業種が多くなるので、犯罪の温床となりやすく、建築物構造そのものや管理体制の面で、消防法に違反するものも多い。また、町並みの景観を壊す元凶ともなっている。
問題点
特に消防法の違反事例は、非常階段に荷物・倉庫を置くなど雑居ビル火災時の避難を阻害しており、それにより、たびたび惨事を招いている。
常軌を逸した営業同様、建物設備についても供給事業者(電気、ガス、水道など)に無断で改造しており、改修するにも設備図面自体がない。
極端な改造により建物の老朽化を早めてしまう場合がある。外装だけ看板で擬装した老朽ビルが今なお営業している。
階数が5階以下だとエレベーターが設置されていない場合が多い(設置の義務がない)上、階段と通路が狭い。
階数が6階以上であっても1974年(昭和49年)5月31日以前に建てられた既存不適格の雑居ビルだとエレベーターは設置されていても階段は1箇所しかなく、階段と通路が狭い。
雑居ビル火災「雑居ビル火災」も参照
1972年5月13日 千日デパート火災。大阪市南区(現:中央区)難波千日前のデパート火災。デパートの3階の衣料品売り場で発生した火災による煙が7階のキャバレーに侵入し、118名が死亡した[5]。
2001年9月1日 歌舞伎町ビル火災。東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生。44名が死亡した。
大規模雑居ビルの事例
ニュー新橋ビル
東京交通会館ビル
大阪駅前ビル
世界貿易センタービル
関連項目
税金対策
建築基準法
消防法
既存不適格
防火対象物
サラ金ビル
空中店舗
脚注^ 複合用途防火対象物(フクゴウヨウトボウカタイショウブツ)とは
^ ⇒立入検査標準マニュアル 消防庁予防課作成
^ “ ⇒小規模雑居ビル等の防火安全対策”. 総務省消防庁. 2010年5月20日閲覧。
^ 田幸和歌子 (2007年5月28日). “ニュースでよく見る「雑居ビル」ってどんなビル?