雇用
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多くの国では、賃労働の設計はCEO・専門的労働者・専門エージェントという階級制度と結びついているため、「賃労働」は非熟練労働者・肉体労働者が担うものとみなされている。
ワーキングプア詳細は「ワーキングプア」を参照

雇用につくことで貧困を回避できるいう保障はなく、国際労働機関(ILO)は世界の40%の労働者が貧困状態にあり、一日あたり2ドルの絶対貧困線以下では家族を養うのに必要な収入を得られていないとしている[7]。例えばインドでは、慢性的貧困人口の多くは正規雇用により賃金を得ているが、それらの仕事は安全でなく収入が低いため、リスクを避けて富を蓄積できる機会がない[7]

この問題は、雇用機会と労働生産性について、ふたつとも上昇させるのが困難である点に起因しているとされる[7]。国連社会開発研究所(UNRISD)によれば労働生産性の向上は雇用創出に負の影響を与えるという。労働者あたり1%の生産性向上による雇用喪失は、1960年代では-0.07%であったが、今世紀初頭には-0.54%に増大した[7]。雇用創出と生産性向上(長期的に高賃金に繋がるような)のふたつが、貧困解決の道である。生産性向上なしの雇用増加はワーキングプア人口の増加に繋がるため、そのため一部の専門家らは労働市場政策での「量ではなく質の創出」を訴えている[7]。それは高い生産性が東アジアの貧困を減らすことに貢献した点に着目したものであるが、その負の側面も現れ始めてきた[7]。例えばベトナムでは、生産性向上が続いている間も、雇用創出は低調であった[7]。このように生産性向上は常に賃金向上をもたらすとは限らず、アメリカ合衆国では1980年代から生産性と賃金のギャップが開き続けている[7]

英国のシンクタンク海外開発研究所(en:Overseas Development Institute)は、雇用創出による貧困削減について経済セクター別の違いのデータを示した[7]。その中では24の事例が示されており、そのうち18で貧困を削減できている。この研究では、失業削減において他の業種(製造業など)の状況が重要になってくると示された[7]。生産性向上によって最も雇用創造をもたらす業種は、サービス業であった。農業部門については、他の業種が苦境に至っているときの雇用的・経済的バッファーとしてのセーフティネットになっていた[7]

成長と雇用と貧困(Growth, employment and poverty)[7]
事例数農業部門での雇用増加工業部門での雇用増加サービス業での雇用増加
貧困率が減少している成長事例1861015
貧困率が減少していない成長事例6231

ベーシックインカム

将来的に人工知能ロボットの発達と普及により、世界の労働人口は減少し失業者が急増する事態が予想される。欧米ではすでにこの事態に対処するために、賃金を落とさずに仕事をシェアする試み(スウェーデン)を始め、アメリカスイスなどで全国民に毎月一定額を国が支給する最低生活保障制度(ベーシックインカム)の導入が検討され始めた[1]
労働力の獲得/雇用

雇用主が労働者を見つけ、労働者が雇用主を見つける主な方法は、新聞(求人広告)とオンライン(ジョブ・ボードとも呼ばれる)の求人情報である[8][9]。 また、雇用主と求職者は、適切な求職者の発掘、スクリーニング、選定を行い、雇用主から手数料を受け取るプロの人材コンサルタントを通じてお互いを見つけることも多い[10]。 採用プロセスにおける重要なステップのひとつが雇用確認で、人事部門が候補者の職歴をチェックし、正確性と法規制への準拠を確認する[11][12]。 さまざまな従業員を評価するのは非常に時間がかかるが、さまざまな方法で従業員のスキルを分析し、評価を通じて特定の分野における従業員の才能を測定するのが最善である。 雇用主と従業員は通常、面接の過程でお互いを知るために特別なステップを踏む。
報酬

時間給、出来高払い、年俸、チップ(後者は他の給与形態と組み合わされることが多い)など、従業員への支払い方法はさまざまである[13]。 営業職や不動産職の場合、従業員にはコミッション(販売した商品やサービスの価格の一定割合)が支払われることがある。 一部の分野や職種(管理職など)では、従業員が一定の目標を達成した場合、ボーナスの対象となることがある。 役員や従業員のなかには、株式やストック・オプションで報酬を受け取る者もいる。このような報酬の受け取り方は、会社の立場からすると、報酬を受け取る人の利益と会社の業績の整合性を保つのに役立つという利点がある[14]
日本の法令.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

日本の雇用者
(総務省統計局、2019年度労働力調査[15]雇用形態万人
役員335
期間の定めのない労働契約3,728
1年以上の有期契約451
1か月?1年未満の有期契約(臨時雇)763
1か月未満の有期契約(日雇い)15
期間がわからない239

日本民法では典型契約の一種とされる。日本の民法では「雇傭」の字句が用いられてきたが、平成16年民法改正による民法現代語化の際に「雇用」に改められた。なお、従属的労働関係に着目した「労働契約」という概念が存在するが、委任契約や請負契約が「労働契約」と評価されることもあり、「労働契約」と「雇用」とは異なる観点から類型化されている[16][17]労働契約#労働契約の意義も参照)。
雇用の意義

雇用は労働者が使用者に対して労働に従事することを約し、使用者が労働者の労働に対して報酬を与えることを約することを内容とするもので、その法的性質は諾成・有償・双務契約である(民法第623条)。

雇用契約は請負委任と同様に他人の役務を利用することを内容とする労務型契約(労務供給契約)の一種である[18][16]

伝統的には一定の事務処理を目的として相手方の判断に委ねるものが委任であり、雇用は労務そのものが目的となっている点で両者は異なるとされたが、出来高払制の労働のように区別が困難な場合もあるとされる[16][17]

そもそも労務供給契約は第一に雇用の機会という点では企業側にイニシアチブがあり(労働市場における経済的従属性)、第二に企業組織の下では個々の労働は使用者の指揮命令と管理によって他律的に決定され(人的従属性)、第三に企業の組織化の進展により個々の労働関係は集団的・画一的に処理されるとともに様々な企業秩序による拘束がある(組織的従属性)など従属的地位に立つとされる[19]。このようなことから近時の学説では労働の従属性という観点を捉え、雇用・委任・請負とは異なる観点から、従属的労働関係たる「労働契約」という契約類型が別個に構成されるに至っている[16][17]

なお、経済学においては雇用(賃労働)は労働力の売買であると観念されるが、法学においては独立した存在の物を客体とする契約としての売買や交換とは異なり、雇用は労働者の人格と不可分に結びついている契約であるという点が特に重視される[20]#労働法による修正も参照)。


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