集団免疫
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ワクチンには普及すればするほど、その病気の危険性を見聞きする機会が減り、必要性を感じにくくなるという逆説があり、集団内の接種率が低下すると、予防接種で防ぐことができる病気の流行が起こりやすくなる[89][19][90][1]。ワクチンを受けるかどうかの自己決定は、感染とワクチンによるリスクの比較、個人の利益、他者への利益など幾つかの要因によって行われるが、予防接種率が十分に高い場合、感染症に罹患するリスクが減少し、ワクチンを受ける動機が低下する[19][1][64][55][91][92][93]。「ワクチン忌避」および「副反応」も参照
予防接種の安全性評価システム

アメリカやイギリス、北欧諸国、香港や台湾、韓国などの国には、ビッグデータを用いたモニタリングシステムがあり、ワクチン接種後の病気の発生率と、非接種者の病気の自然発生率を比較することで、ワクチン接種と死亡との因果関係を検証している[94][95][96]。これにより、接種後に偶然同時に発生した症状と実際の有害事象との区別ができる[97][98]。日本には、こうした公的なモニタリングシステムがないことが課題になっていたが、2022年に九州大学のグループがシステムを開発した[96][99][100]
COVID-19

COVID-19に関しては、2020年当初、起源株に2つのmRNAワクチンが94 - 95%の発症予防効果を示し、基本再生産数(R0)は2.9(1-1/2.9=集団免疫閾値65%)[101]であったため、70%の接種や感染で集団免疫に達し、免疫のない30%が守られると試算された[102][103]。しかしその後、ウイルスの次々と変異する感染力が強い性質や(免疫逃避)、感染やワクチンによる免疫の経時的な減少で、集団免疫の獲得は困難とされた[102][104]。ただし、獲得免疫液性免疫抗体)による感染予防効果が低下しても、細胞性免疫は変異株に対しても有効であり、重症化や死亡[105][106]、後遺症[107]等の予防効果は保たれる[108][109][110]。しかし、その効果も時間とともに低下するため、追加接種の重要性が強調されている[108][111][112]

COVID-19ワクチン接種は、多くの国では病人と接する医療者や重症化する可能性が高い高齢者、基礎疾患のある人を優先して始まった[113]。一方でインドネシアでは感染を広げず活発に行動できるよう、若い労働者(18 - 59歳)の接種を優先した[114][115]。デルタ期とオミクロン期の研究では、両親のワクチン接種状況は、5歳未満の子どものCOVID-19による入院リスクの低下と関連していた[116]。両波において、幼児の感染は家族から起きていると推測されたが、オミクロン期では学校や保育所、兄弟姉妹からの感染が増えており、親からの感染はデルタ期よりも少なかった[116][117]。オミクロン株の流行後、COVID-19は子どもの間で広がる感染症に変化してきたが、子どもを感染から守るためには、依然として周囲の大人(親や小児に関わる業務従事者)への適切な回数(3 - 4回目)の接種が推奨されている[116][118]
メカニズム基本再生産数( R 0 {\displaystyle R_{0}} )は、1人が感染させる平均人数である。 R 0 {\displaystyle R_{0}} が2の場合は感染した1人は平均して2人に感染させ、1→2→4人と増えていく。 R 0 {\displaystyle R_{0}} が4の場合は平均して4人に感染させ、1→4→16人と増えていく。

ある病気に対して感染や予防接種で免疫を獲得した個人は、病気の伝播における障壁として働き、他の人への病気の感染を遅らせたり防いだりする[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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