集団免疫
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したがって病気の根絶は、感染症の拡大をコントロールする公衆衛生の取り組みの、最終的な影響または結果であると考えることができる[13][8]

根絶の利点には「病気の罹患率と死亡率をなくすことができる」「個人や医療提供者、政府にとって経済的な節約になる」「病気のコントロールに使われていたリソースを他の物事に充てることができるようになる」ことが挙げられる[13]。これまでに、感染と予防接種の集団免疫により根絶された病気は、牛疫天然痘の2つである[1][8][50]。現在、ポリオに対しても集団免疫による根絶の取り組みが行われているが、市民の現代医療に対する不安や不信が根絶を困難にしている[1][51]。予防接種する人が少ない場合、予防接種の義務化は撲滅活動にとって有益である可能性がある[52][53][54][55]
議論
集団免疫と個人の利益集団免疫は、 健康上の理由で予防接種を受けられな人を保護する。

予防接種には、「自分自身を守る(個人防衛)」と「周囲の人を守る(集団免疫、社会防衛)」の2つの目的がある[6][56][57][58][59]。医学的な理由でワクチン接種を受けられない人やワクチンが効かない人々は病気にかかりやすく、周囲の人々が協力して病気を伝染させないことで、彼らを守ることができる[6][14]

この集団免疫の意義を強調する人と、個人の権利やリスクを重視する人との対立は、安全性の高いワクチンの開発と、行政機関による副反応への補償制度を生み出してきた[6][60][61][62]。また医療従事者の対応が副反応を悪化させるとの報告もあり、医療従事者による丁寧な情報提供を受けた上での 自己決定と、接種後のフォロー体制の整備が求められている[63][64][60][17]

日本には、定期接種を対象にした「予防接種健康被害救済制度」という、国が健康被害を救済するための制度があるが、この制度は、集団免疫による「病気のまん延を予防する」という必要性を背景にしたものであり、「自分のためだけではなく、他の人のために」接種した予防接種に対する、公衆衛生の貢献に対する補償である[65][66][67]。この定期接種に対し任意接種は、その意義が変わらないにもかかわらず医薬品医療機器総合機構 (PMDA)からの給付で、補償額が少ないという区別があり、同等の補償を行うべきという議論がある[68][69]。アメリカには、定期接種と任意接種の区別はなく、有害事象の被害者を迅速に救済する「国家ワクチン健康被害補償プログラム(VICP)」により、ワクチン毎に保険者が約75セント支払う税金を財源とし、要件を満たす場合は因果関係不明でも迅速に補償される[70][71]。VICPは、ワクチンメーカー(不適切な設計など)や医療提供者(不十分なリスク説明など)の過失を問わない無過失損害賠償制度であり、製薬会社と医療者を訴訟から保護することで、ワクチンの提供をためらわずに行うことができる制度になっている[72]。以前はアメリカにも無過失損害賠償制度がなく、訴訟の度に接種が中断されて公衆衛生が脅かされる事態が起きていた[73][74][75][60]。「予防接種#予防接種健康被害救済制度」および「COVID-19ワクチン#賠償責任」も参照
義務化と個人の自由「ワクチン忌避#義務化と個人の自由」も参照

接種者を増やすために、いくつかの国では義務化政策や、動機づけのために特典を付けるなどの取り組みを行っている[76][77]。しかし、このような強制的なワクチンの接種は、市民の自由を侵害するというワクチンへの反対感情を引き起こしている[78][79]


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