集団免疫
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HIV/AIDSリンパ腫白血病骨髄がん脾臓の機能不全、化学療法放射線療法などによって免疫不全状態にある人は、以前に持っていた免疫を失っている可能性があり、また免疫不全のためにワクチンも役に立たない可能性がある[11][23][25][26]。一般に、ワクチンの効果は100%ではなく、予防接種を受けた人の一部は、免疫応答による長期的な免疫を獲得できない場合がある[1][27][28]。これらの人々は、免疫がないことに加え、その健康状態から感染による合併症を発症するリスクが高いが、集団内の十分な割合が免疫を獲得していれば保護される可能性がある[11][23][28][29]
病種

ある年齢集団で高い水準の免疫があると、他の年齢集団に対しても集団免疫を作ることができる[8]
肺炎球菌の予防接種を受けた子どもは、予防接種を受けていない年下の兄弟の肺炎球菌感染症の発生率を低下させる[30]。子どもたちに肺炎球菌とロタウイルスの予防接種をすると、予防接種していない年長児と成人の肺炎球菌とロタウイルスの感染による入院を減らす効果がある[30][31][32]インフルエンザは若年層よりも高齢者の方が重症となる傾向があるが、加齢によって免疫系が衰えるため、この層のインフルエンザワクチンの発症予防効果は34 - 55%と報告されている[8][33][34]。しかし、学齢期の児童に予防接種を優先的に行うことで、高齢者の感染と死亡率を減らすことができる[8][33]

百日咳の予防接種を乳幼児の周囲にいる人が受けると、その個人の健康を守るだけでなく、百日咳による合併症のリスクが最も高い、ワクチンを接種するには幼すぎる乳幼児の百日咳が減少する[35][36]。乳幼児への伝染の大部分は身近な家族から起こるため、このことは特に重要である[8][28]。加えて母親が妊娠中に百日咳の予防接種を受けることで、生後2カ月でワクチンを接種できるようになるまで、母体移行抗体により赤ちゃんに短期的な保護を与えることができる[14][37]

風疹は、妊婦が罹ると赤ちゃんに深刻な障害が起こるが、周囲の人が予防接種を受けると、その人が風疹に罹ることを防ぐと共に集団免疫が高まり、妊婦の感染を予防できる[15][38]。日本では成人男性(1962年4月 - 1979年4月に生まれ)に感染や予防接種による免疫がなく、流行が繰り返し起きている[38][10]。2018年12月より、この世代への追加接種が始まったが、新型コロナの流行もあり、接種率は伸びていない[39][40][38]

HPVワクチン定期接種は、日本では女性のみだが、免疫のない女性を守る集団免疫の効果や、男性自身の病気も防げるため、世界保健機構(WHO)やアメリカ疾病管理予防センター(CDC)は男女共に予防接種を奨励している[41][42]HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんや、中咽頭がん肛門がん陰茎がんの原因になり、子宮頸がんの95%、中咽頭がんの75%がHPVが原因だと言われている[43][44]。男性の子宮頸以外のHPVに関連する癌は、女性の接種率が高ければある程度減少するが、男女へのワクチン接種がより効果的である[45][46]。そのため、海外では男性も無料接種の対象にする国が増えており、日本でも男性の定期接種化を求める活動が行われている[44][47][48][49]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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