集団免疫
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自然感染して治癒した場合も、個人の免疫は獲得できるが、自然感染は重篤な症状や後遺症、死亡のリスクを伴い、集団免疫が成立するまでに多大な犠牲が生じる[6][7]。ワクチンは病気のリスクを回避して免疫を得るために開発され、ワクチンにより作られた集団免疫は、麻疹風疹ポリオ百日咳水痘などワクチンで予防できる病気の減少に貢献している[6][8][9][10]
概説麻疹の発生数は、予防接種が導入されると急激に低下した[6]

個人の免疫は、感染症からの回復や予防接種によって獲得される[5]。一部の人々は医学的理由により免疫を獲得することができず、集団免疫はこれらの人々に対する重要な保護手段となる[11][12]。免疫を持つ人々の割合が一定の値に達すると、集団免疫によって病気が徐々に集団から排除されるようになる[12]。この排除が世界中で達成されれば感染の数は永続的にゼロまで減少する可能性があり、この状態が撲滅または根絶と呼ばれる[13]。この感染の拡大と予防接種による集団免疫で天然痘は1977年に根絶され、他の感染症についても地域的な排除が行われている[8]。集団免疫は全ての感染症に適用されるわけでなく、伝染、つまりある人から他の人へうつる疾患のみに適用される[12]。例えば、破傷風は感染症であるが伝染しないため、集団免疫は適用されない[11]

予防接種は個人を感染から守ると共に、集団全体の免疫率を上げることで流行を防ぐ壁となる[14][15]。これは感染症に弱い人を、繭(cocoon)のように周囲の人たちが守るという意味で、コクーニング(cocooning)と呼ばれる[14][10]。現在、ワクチンで予防できる病気は、ジフテリアや破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹など30種類以上ある[9][16][17]世界保健機関(WHO)は、予防接種は最も費用対効果の高い病気を回避する方法であり、世界中で毎年200 - 300万人の死亡を防ぎ、世界全体の予防接種率が向上すれば、更に150万人の死亡を回避できるとしている[9][18]。それにもかかわらず、ワクチンへのためらい反ワクチン運動が起きており、これは集団免疫の課題となっている[19]。特に予防接種率が不十分な社会・コミュニティでは、集団免疫が低下したり消失したりしており、ワクチンで予防可能な病気が根強く残ったり、再流行が起きたりしている[19][20][21]
効果
免疫を持たない人々の保護シャーロット・クレバリー=ビスマンは、髄膜炎菌感染症により、生後7ヶ月で四肢の一部を切断した[22]。周囲の多くの人たちが予防接種をして流行を防げば、彼女のように予防接種できない幼い子どもや弱い人たちを病気からを守ることができる[1]

予防接種を受けても免疫を取得できない人や、高齢者など免疫が減弱した人、病気の治療などにより接種できない人は、予防接種により感染を予防することができない[11][23][24]。新生児は、安全上の理由や母親から移行する受動免疫でワクチンの効果が無効になるため、多くのワクチンを受けることができない[25]HIV/AIDSリンパ腫白血病骨髄がん脾臓の機能不全、化学療法放射線療法などによって免疫不全状態にある人は、以前に持っていた免疫を失っている可能性があり、また免疫不全のためにワクチンも役に立たない可能性がある[11][23][25][26]。一般に、ワクチンの効果は100%ではなく、予防接種を受けた人の一部は、免疫応答による長期的な免疫を獲得できない場合がある[1][27][28]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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