集団免疫
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

予防接種は個人を感染から守ると共に、集団全体の免疫率を上げることで流行を防ぐ壁となる[14][15]。これは感染症に弱い人を、繭(cocoon)のように周囲の人たちが守るという意味で、コクーニング(cocooning)と呼ばれる[14][10]。現在、ワクチンで予防できる病気は、ジフテリアや破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹など30種類以上ある[9][16][17]世界保健機関(WHO)は、予防接種は最も費用対効果の高い病気を回避する方法であり、世界中で毎年200 - 300万人の死亡を防ぎ、世界全体の予防接種率が向上すれば、更に150万人の死亡を回避できるとしている[9][18]。それにもかかわらず、ワクチンへのためらい反ワクチン運動が起きており、これは集団免疫の課題となっている[19]。特に予防接種率が不十分な社会・コミュニティでは、集団免疫が低下したり消失したりしており、ワクチンで予防可能な病気が根強く残ったり、再流行が起きたりしている[19][20][21]
効果
免疫を持たない人々の保護シャーロット・クレバリー=ビスマンは、髄膜炎菌感染症により、生後7ヶ月で四肢の一部を切断した[22]。周囲の多くの人たちが予防接種をして流行を防げば、彼女のように予防接種できない幼い子どもや弱い人たちを病気からを守ることができる[1]

予防接種を受けても免疫を取得できない人や、高齢者など免疫が減弱した人、病気の治療などにより接種できない人は、予防接種により感染を予防することができない[11][23][24]。新生児は、安全上の理由や母親から移行する受動免疫でワクチンの効果が無効になるため、多くのワクチンを受けることができない[25]HIV/AIDSリンパ腫白血病骨髄がん脾臓の機能不全、化学療法放射線療法などによって免疫不全状態にある人は、以前に持っていた免疫を失っている可能性があり、また免疫不全のためにワクチンも役に立たない可能性がある[11][23][25][26]。一般に、ワクチンの効果は100%ではなく、予防接種を受けた人の一部は、免疫応答による長期的な免疫を獲得できない場合がある[1][27][28]。これらの人々は、免疫がないことに加え、その健康状態から感染による合併症を発症するリスクが高いが、集団内の十分な割合が免疫を獲得していれば保護される可能性がある[11][23][28][29]
病種

ある年齢集団で高い水準の免疫があると、他の年齢集団に対しても集団免疫を作ることができる[8]
肺炎球菌の予防接種を受けた子どもは、予防接種を受けていない年下の兄弟の肺炎球菌感染症の発生率を低下させる[30]。子どもたちに肺炎球菌とロタウイルスの予防接種をすると、予防接種していない年長児と成人の肺炎球菌とロタウイルスの感染による入院を減らす効果がある[30][31][32]インフルエンザは若年層よりも高齢者の方が重症となる傾向があるが、加齢によって免疫系が衰えるため、この層のインフルエンザワクチンの発症予防効果は34 - 55%と報告されている[8][33][34]。しかし、学齢期の児童に予防接種を優先的に行うことで、高齢者の感染と死亡率を減らすことができる[8][33]

百日咳の予防接種を乳幼児の周囲にいる人が受けると、その個人の健康を守るだけでなく、百日咳による合併症のリスクが最も高い、ワクチンを接種するには幼すぎる乳幼児の百日咳が減少する[35][36]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:195 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef