階乗
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代数学に現れる階乗にはいくつも理由があるが、既述の如く二項展開の係数として現れたり、ある種の演算の対称化(英語版) において置換による平均化を行うなど、組合せ論的な理由で現れるものもある。

微分積分学においても階乗は例えばテイラー級数の分母として現れるが、これは冪函数 xn の n 階導函数が n ! であることを補正する定数である。確率論でも階乗は用いられる。

階乗は数式操作にも有効である。例えば n の k-順列の総数を n k _ = n ! ( n − k ) ! {\displaystyle n^{\underline {k}}={\frac {n!}{(n-k)!}}}

と書けば、(この数値を計算することを考えれば効率が悪くなるが)二項係数の対称性 ( n k ) = n k _ k ! = n ! ( n − k ) ! k ! = n n − k _ ( n − k ) ! = ( n n − k ) {\displaystyle {\binom {n}{k}}={\frac {n^{\underline {k}}}{k!}}={\frac {n!}{(n-k)!k!}}={\frac {n^{\underline {n-k}}}{(n-k)!}}={\binom {n}{n-k}}}

を見るには都合がよい。
数論における階乗

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階乗は数論にも多くの応用を持つ。特に n ! は n 以下の全ての素数で整除されねばならない。このことの帰結として、n ≥ 5 が合成数となる必要十分条件は ( n − 1 ) ! ≡ 0 ( mod n ) {\displaystyle (n-1)!\equiv 0{\pmod {n}}}

が満たされることである。より強い結果としてウィルソンの定理は ( p − 1 ) ! ≡ − 1 ( mod p ) {\displaystyle (p-1)!\equiv -1{\pmod {p}}}

が p が素数であるための必要十分条件であることを述べる。

ルジャンドルの公式は n ! の素因数分解に現れる p の重複度が ∑ i = 1 ⌊ log p ⁡ n ⌋ ⌊ n p i ⌋ {\displaystyle \textstyle \sum \limits _{i=1}^{\lfloor \log _{p}n\rfloor }\left\lfloor {\dfrac {n}{p^{i}}}\right\rfloor }

であることを示す。これは n − s p ( n ) p − 1 {\displaystyle {\frac {n-s_{p}(n)}{p-1}}}

に等しくなる。ただし、sp(n) は n の p進展開の係数の和である。

n ! が素数となる n は 2 のみである。n! ± 1 の形の素数は階乗素数と呼ばれる。

1! より大きな階乗は全て偶数である(これらは明らかに因数 2 を持ち、2 の倍数である)。同様に、5! より後の階乗は 10 の倍数(2 と 5 を因数に持つ)であり、十進展開の末尾には 0 が並ぶ(英語版)。
ブロカールの問題詳細は「ブロカールの問題」を参照

ブロカールの問題とは、 n ! + 1 = m 2 {\displaystyle n!+1=m^{2}}

を満たす n, m は存在するか、という問題である。2015年9月現在、これを満たす (n, m) の組[注釈 2]は(4, 5), (5, 11), (7, 71)

しか見つかっていない。ABC予想が真であれば、解は有限個しかないことが、Marius Overholt により示されている。
階乗の解析学
階乗の逆数和

階乗の逆数の総和は収束級数 ∑ n = 0 ∞ 1 n ! = 1 1 + 1 1 + 1 2 + 1 6 + 1 24 + 1 120 + ⋯ = e {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{n!}}={\frac {1}{1}}+{\frac {1}{1}}+{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{6}}+{\frac {1}{24}}+{\frac {1}{120}}+\dotsb =e}

を与える(ネイピア数を参照)。この和は無理数となるけれども、階乗に適当な正整数を掛けて和が有理数となるようにすることができる。例えば、 ∑ n = 0 ∞ 1 ( n + 2 ) n ! = 1 2 + 1 3 + 1 8 + 1 30 + 1 144 + ⋯ = 1. {\displaystyle \sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{\left(n+2\right)n!}}={\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{8}}+{\frac {1}{30}}+{\frac {1}{144}}+\dotsb =1.}

この級数の値が 1 となることを見るには、その部分和が 1 − 1/(n+2)! であることを確認すればよい。したがって、階乗数の全体は無理列(英語版)を成さない[4]
階乗の増大度「スターリングの近似」も参照階乗の自然対数 f(n) = log(n!) のグラフをプロットしたもの。このグラフは一見して適当に選び出した n に対する一次函数で近似できそうにも思えるが、そのような直観は誤りである。

n が増えるにつれて、階乗 n ! は n を変数とする任意の多項式函数あるいは指数函数よりも早く増加する(ただし、二重指数関数よりは遅い)。

n ! の近似式の多くは自然対数 log ⁡ n ! = ∑ x = 1 n log ⁡ x {\displaystyle \log n!=\textstyle \sum \limits _{x=1}^{n}\log x}

であることを利用する。最も単純に得られる log(n!) の近似値を評価する式は、上記の式と以下の積分: ∫ 1 n log ⁡ x d x ≤ ∑ x = 1 n log ⁡ x ≤ ∫ 0 n log ⁡ ( x + 1 ) d x {\displaystyle \int _{1}^{n}\log x\,dx\leq \textstyle \sum \limits _{x=1}^{n}\log x\leq \int _{0}^{n}\log(x+1)\,dx}

によって与えられる。積分を評価すれば n log ⁡ ( n e ) + 1 ≤ log ⁡ n ! ≤ ( n + 1 ) log ⁡ ( n + 1 e ) + 1 {\displaystyle n\log \left({\frac {n}{e}}\right)+1\leq \log n!\leq \left(n+1\right)\log \left({\frac {n+1}{e}}\right)+1}

を得る。これは、ランダウの記号を用いれば log(n!) のオーダーは Θ(n log n) であることを言っているのであり、この結果はソートアルゴリズム計算量を測るのに重要な役割を果たす。さて上記の log(n!) の評価から e ( n e ) n ≤ n ! ≤ e ( n + 1 e ) n + 1 {\displaystyle e\left({\frac {n}{e}}\right)^{n}\leq n!\leq e\left({\frac {n+1}{e}}\right)^{n+1}}

が分かる。実用上はより弱い結果だがより評価のしやすいものを用いることもある。上記の式から簡単な評価をしてみると、任意の n に対して (n/3)n < n! であり、また n ? 6 のとき n! < (n/2)n であることなどが分かる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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