陸軍中将
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1962年以前は統合幕僚会議議長は統合幕僚会議議長章[注釈 14]を、他の三幕僚長は幕僚長章を左胸に着けるのみで、もともとは他の将と同じく桜星 (おうせいと読む) 3つの階級章[注釈 15]を佩用していた。これは日本軍の大将と同じである一方で同盟国である米国では3つ星は中将の階級章だった。1962年(昭和37年)12月1日、「自衛隊法施行規則の一部を政正する総理府令」(昭和37年総理府令第67号)[38]により、統合幕僚会議議長たる陸将、海将、または空将、陸上幕僚長たる陸将海上幕僚長たる海将、および航空幕僚長たる空将の4名の階級章が桜星4つに変更、他の将と区別され、同時に幕僚長章は廃止された。また英語では、幕僚長たる陸将・空将はGeneral、海将はAdmiralと称しており、英語圏では日本には米国の大将相当の階級(four star rank)があると認識されている。ただしこれらは諸外国軍の大将相当者との均衡を取るための措置であり、日本の法令上は幕僚長たる将もその他の将も同一の階級である。幕僚長の階級章の変更については源田実が海外視察の際に桜星3つでは中将扱いされるため、勝手に4つに増やしたことが報道されて問題になり、対応を求められた航空幕僚監部の担当者が色々調べた結果、海上保安庁長官の階級章が違うことを見つけ、何とか変更にこぎつけたという逸話がある[39]

自衛隊における階級(法令上)として最上級であるが、細かく分類すると俸給表・役職により同じ将の階級でもランクが存在する。例えば陸上自衛隊では中将扱いとなる階級章が3つ桜の同じ将の中でも最高ランクは陸上総隊司令官で、次いで方面総監となる。なお、方面総監は内規により序列が規定されている(5名の方面総監の序列は東部中部西部北部東北の順[注釈 16])。また、海上自衛隊の地方総監にも俸給による序列がされている(横須賀・佐世保、呉、舞鶴・大湊の順である)。なお、航空自衛隊の航空方面隊司令官については序列はないが、この上位に航空支援集団司令官及び航空自衛隊補給本部長が並ぶ。

陸将は、陸上総隊司令官方面総監師団長等に充てられる。

海将は、自衛艦隊司令官護衛艦隊司令官、潜水艦隊司令官、航空集団司令官、教育航空集団司令官、地方総監等に充てられる。

空将は、航空総隊司令官航空方面隊司令官、航空支援集団司令官、航空教育集団司令官、航空開発実験集団司令官等に充てられる。

他に3幕共通のポストとして、統合幕僚副長、統合幕僚監部運用部長、統合幕僚学校長、情報本部長、等がある。

また、実際には上記の他、外国との人事バランスに対応した措置が取られており、4スターランクである幕僚長が大将相当、方面総監等やそれに同位あるいは準じた要職にある将は中将相当、師団長や防大幹事等とそれと同位あるいは準じる職にある将は少将の扱いを受ける。

2023年12月に近藤奈津枝が海将に昇任し、自衛隊史上初めて中将級の女性将官が誕生した[40]
アメリカ合衆国詳細は「中将 (アメリカ軍)」および「en:Vice_admiral (United States)」を参照
総説・呼称について

アメリカでは現在、国防総省の管轄下にある陸軍海軍空軍海兵隊の主要四軍、および国土安全保障省管轄下の準軍事組織である沿岸警備隊[注釈 17]では中将の階級が恒常的に存在・運用されている。また、成立・活動内容の都合上、構成員を武官(ただし士官のみ)としている公衆衛生局士官部隊[注釈 18]海洋大気庁士官部隊[注釈 19]にも同様に中将の階級が存在する。ただし、前述の「五軍」においては中将の階級は恒常的に存在・運用されており、複数人の将官が中将に任じられているのに対し、公衆衛生局士官部隊で中将の階級をもって充てることとされているのは長(司令官)である公衆衛生局長官1人だけである。また、海洋大気局士官部隊に至っては、最高位である長官(司令官)は少将(Rear Admiral upper half)の階級をもって充てられており、過去には中将に昇る者があったものの、現在では事実上廃止(In-active)された階級となっている。

同じ英語圏であるイギリスと比較すると、陸軍中将・海兵隊中将は“Lieutenant General”、海軍中将は“Vice Admiral”と呼ばれるなど共通点がある一方で、空軍中将に関してイギリス空軍では“Air Marshal”と呼称されるのに対し、アメリカ空軍では陸軍・海兵隊と同じ“Lieutenant General”と呼ばれるなど相違点もある。中将の階級が存在する七武官組織における中将位の呼称は以下の通りとなっている。

陸軍:Lieutenant General

陸軍において実質上のナンバー3である作戦企画担当陸軍参謀副長は中将があてられる。慣例的にこのポストについた中将のほとんどが大将に昇進している。


海軍:Vice Admiral

空軍:Lieutenant General

海兵隊:Lieutenant General

沿岸警備隊:Vice Admiral

公衆衛生局士官部隊:Vice Admiral

海洋大気庁士官部隊:Vice Admiral

ちなみに、1866年まで中将位は無く、少将から大将(当時の呼称はGeneral in chief)に昇任していた。アメリカ独立戦争で植民地軍を率いた総司令官であり、アメリカ合衆国建国後はその初代大統領となったジョージ・ワシントンの最高階級は大将である。

これは、当時のアメリカには、平時には少将を最高位とする規定が存在したため、ワシントンに対しては前述の通り、当時、中将位が無く、それを超える「破格の待遇」として大将の階級をもって遇したものである。しかし時代が進むにつれて、中将や大将の階級が常設され、さらには元帥がされるようになると、ワシントンを階級的には追い越してしまう軍人が続出する事態が生じた。これを憂慮したアメリカ政府と軍は、1976年にワシントンに大元帥(5つ星を超える6つ星相当)を追贈して、彼が永久的にアメリカ合衆国の歴史上最高位の将官であるとする規定を定めたのである。
現在のアメリカ軍における中将位と任務

現在のアメリカ軍では、中将クラスの将官をもって充てることとされているポストは、以下のようなものが挙げられる。他国の軍隊に比して規模が大きいアメリカ軍では、同じレベル・単位の部隊であっても、指揮官にはより上位の階級の将官をもって充てているケースが見られる。

統合軍に代表される統合任務分野では、統合参謀本部事務局長(Director of the Joint Staff)や国防長官付上級軍事補佐官(Senior Military Assistant to the Secretary of Defense)、統合参謀本部議長付補佐官(Assistant to the Chairman of the Joint Chiefs o Staff)などに代表される上級レベルの参謀・補佐官職、実働部隊における統合軍の副司令官(deputy commander)のように、大将級ポストを補佐するナンバー2の役割を担う役職に中将が充てられていることが多い。また、国防情報局(DIA)長官やミサイル防衛局(MDA)長官のように、軍と密接な関係にある国防総省部局の長官職も中将をもって充てられているケースがある。

各軍については以下のようになっている。

陸軍では、陸軍参謀本部の事務局長(Director of the Army Staff)や各陸軍参謀次長(Deputy Chief of Staff)には中将が充てられている。これは後述する海軍作戦本部や空軍参謀本部、海兵隊総司令部でも同様である。また、各統合軍隷下の陸軍部隊(クラス、例えば中央軍隷下の第3軍など)や軍団(例えば第1軍団など)クラスの部隊司令官には中将が充てられている。また、陸軍州兵局長(Director of the Army National Guard)や陸軍予備役司令官といった非現役部隊の司令官、あるいは陸軍法務部長(Judge Advocate General of the United States Army)、陸軍医務総監(Surgeon General of the United States Army)など主要な後方支援部隊の司令官も、役割の重要性増加などにより中将をもって充てられている。

イギリス

英語では、陸軍中将は"lieutenant general"である。"lieutenant"は代理者を意味するから、陸軍大将(general)の1つ下の階級として、("lieutenant"という名詞の形容詞的用法として)このようなネーミングになっているかのようにも思えるが、沿革的には、ここでいう"general"は名詞(「大将」「将軍」の意味)ではなく後置修飾としての形容詞(「総?」の意味)であった。

陸軍:Lieutenant General


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