陸戦では地形の戦力化が行われることがある。海軍力・空軍力と比較して、陸軍力は地形の影響を多大に受ける。陸地には高低起伏・地表面土質・水系・植生・人工物など多様な性格があり、しかも気候・時間によって逐次変化していく。これらは陸上作戦において有利にも不利にもなり、地形は部隊の位置的な優位・視界・射界・偽装・隠蔽・掩蔽などに影響する。したがって地形を戦力に取り込むことができ、特に築城はこの効果を高める。
陸戦では、作戦地域が拡大するほど作戦線が伸長して戦力の密度が下がり、兵站の負担は増し、指揮統率はより困難になる。特に敵地へ侵攻する場合にこの性質が顕著となる。作戦線の伸長に伴う戦力逓減と逆の場合の戦力逓増の原則はカール・フォン・クラウゼヴィッツが「頂点の思想」で述べており、また「山は兵を飲む」と古来より戦訓として伝えられている。
陸上作戦は後方支援に基づいて展開し、かつ後方支援は道路・鉄道・水路・都市などに基づいて行うため、作戦は固定的な性質を持つ。また後方支援は厳密な計画に沿って業務を進めるため、簡単には変更できない。
海軍力・空軍力に比較して、陸軍力は指揮統制に限界がある。作戦地域の各地で同時多発的に戦闘が起こり、同時進行で事態が進み、また現場指揮官は自己の判断に基づいて行動するためである。大規模な陸戦になればなるほどこの性質は高まり、全体の戦闘をすべて一元的に完全掌握するのは不可能である。
陸軍力の最小単位は一人の人間であり、一人ひとりの判断の蓄積で戦闘行動は進行する。これらすべては把握できないので、個々の現場指揮官とその指揮下にある兵士たちの高度な士気、強固な意思、各員のチームワークと各級指揮官のリーダーシップが重要となる。
ハーグ陸戦条約のような国際条約によって、事前に各国で陸戦における禁止事項を同意しておき、紛争の当事者全てが望まない事態の予防を図る方法もある。
脚注^ デジタル大辞泉
^ 防衛学会『国防用語辞典』朝雲新聞社305頁
^ クラウゼヴィッツ『新訳 戦争論 隣の大国をどう斬り伏せるか』兵頭二十八訳 PHP研究所
参考文献
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