航路として使える海面の幅は最狭部で約500メートルに過ぎず、S字に屈曲して見通しが悪いうえに潮流が速く、岩礁や暗礁も多い。遭難は絶えないが、古来、本州と九州および日本とアジア大陸を結ぶ重要航路であり続けてきた。漁業も行われている[7]。近現代においても、工業地帯の集中する瀬戸内海沿岸と、東シナ海を挟んで中国や韓国などとの往来には、近傍に適当な海路がないことから関門海峡の通過が不可欠であるなど、重要な航路の一つとなっている。1日に行き交う船は約1千隻で、後述のように関門海峡海上交通センター(北九州市)が管制している。国土交通省九州地方整備局の推計によると、日本の港湾から輸出される年間貨物総量の13%(約3600万トン)が関門海峡を通る[7]。
海峡の狭さ、潮流の速さ・向き(潮の干満により1日4回潮流の向きが変わる)、船舶通航量の多さ、航路の複雑さ(関門航路は筆記体の「V」の字)から、日本国内に7箇所設置されている海上交通センター「関門マーチス」が置かれている。なお、海峡を通過する船舶は水先案内人(パイロット)の同乗が義務づけられている。さらに、潮流放送(ひのやました)、潮流信号所
(部埼、火ノ山下、台場鼻)、自動船舶識別装置(AIS)が設置されており、潮流による事故を防止するための情報提供がされている。関門海峡を含む全長約50kmの区間が、全国に15箇所ある開発保全航路の一つ「関門航路」に指定されており、国土交通省九州地方整備局が整備を行なっている。2016年時点の航路の水深は12mで、船舶の大型化に対応するため2034年完了予定で水深14m化事業が行われている[10]。浚渫(航行に支障になる堆積物の除去)と(事故等による)油回収に機動的に対応するために、専用の船舶である「海翔丸」が九州地方整備局関門航路事務所に配備されている。
海峡を横断する航路は、本州と九州を結ぶ陸上交通(トンネルおよび橋)が無い頃は主要な交通機関であったが、それらが供用されたのちは両岸を結ぶ限定的な交通として機能している。また、遊覧目的の観光利用も見られる。 海峡の狭さが故に、比較的早い段階から海底トンネルや橋が整備され、現在、海底トンネル3本、橋1本の合わせて4本のトンネルと橋梁が本州と九州をつないでいる。そのはしりと言える1942年の鉄道トンネル開通、1958年の国道2号のトンネル開通に伴って、鉄道や自動車により頻繁に往来が行われるようになった。以降、海峡両岸は強力に結びつけられ、下関市と北九州市ならびに両市の周辺地域は、海峡を跨いだ「関門都市圏」と呼ばれる一つの都市圏を形成している。 一方、九州への鉄道や道路は関門海峡以外にないため、一度災害や大事故が発生し、鉄道や道路交通が海峡間で使用不能になると、その影響は計り知れない[注釈 1]。そのため下関北九州道路の建設計画がある。 海峡が狭く潮流も速いため、タンカーや貨物船などの事故が発生し、他の船舶の運航に支障をきたすことがある。
陸上交通
関門トンネル
関門国道トンネル - 一般国道(国道2号、歩行者用トンネルも設置)
関門鉄道トンネル - 在来線(山陽本線)
新関門トンネル - 新幹線(山陽新幹線)
関門橋 - 関門自動車道(高速自動車国道)
事故