閏秒
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もし、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである[29][30]。ただし、仮に1967年時点で9 192 631 997周期にしていたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さを長く定義し直すことになり、1967年までに蓄積されていた様々な物理定数の値を変更する問題が生じていたはずである。

地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなる(LODが大きくなる)のは事実[31]であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日 程度の変化[32](USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日 程度の変化としている[33])の極めて小さなものである[34]。1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである[35][注釈 1]

協定世界時の歴史詳細は「協定世界時#歴史」を参照

旧・協定世界時は、基本的に世界時 (UT1) の補正版である世界時 (UT2) を採用し[20]、現在とは異なる秒の定義を用いており、1971年まで使用された。

国際原子時 (TAI) が1958年1月1日0時(世界時での時刻)に開始されたときはTAI=世界時 (UT2) と起点を定めた[20]。その後1967年に1の定義がセシウム133原子を用いた現行の定義へ変更された[2][20]

1972年1月1日0時に現行の協定世界時 (UTC) が、TAIと同じくSI秒の定義を用い、UTC = TAI - 10秒として開始された[2]。その後、1972年7月1日実施の第1回から2017年1月1日実施の第27回まで、いずれも正の閏秒(1秒追加)による調整が実施され、現在はUTC = TAI - 37秒となっている[3]
閏秒による協定世界時調整の仕組み

以下の記述では、特に断らない限り、日本標準時における時刻表示である。

調整実施日(日本標準時の午前9時直前に実施)年1月1日7月1日
1972年0+1秒
1973年+1秒0
1974年+1秒0
1975年+1秒0
1976年+1秒0
1977年+1秒0
1978年+1秒0
1979年+1秒0
1980年+1秒0
1981年0+1秒
1982年0+1秒
1983年0+1秒
1984年00
1985年0+1秒
1986年00
1987年00
1988年+1秒0
1989年00
1990年+1秒0
1991年+1秒0
1992年0+1秒
1993年0+1秒
1994年0+1秒
1995年00
1996年+1秒0
1997年0+1秒
1998年00
1999年+1秒0
2000年00
2001年00
2002年00
2003年00
2004年00
2005年00
2006年+1秒0
2007年00
2008年00
2009年+1秒0
2010年00
2011年00
2012年0+1秒
2013年00
2014年00
2015年[36]0+1秒
2016年00
2017年[37]+1秒0
2018年00
2019年00
2020年00
2021年00
2022年00
2023年00
計16秒11秒
27秒
TAI?UTC
37秒
日本標準時 (JST) の実施日付。
すべて正の閏秒による調整である[3]
実施時刻はすべて当日の午前8時59分59秒(日本標準時)の直後である。

UTCとUT1とのズレ。
垂直な緑の線は閏秒が追加されたことを表す。赤の線は予測。

基準とタイミング

UTCとUT1との差(DUT1)を±0.9秒以内に保つよう[1]、閏秒による調整が実施される。これまでの実際の運用では、調整はすべて正の閏秒(後述)で、典型的にはUT1-UTCが-0.5秒程度のとき挿入され、そのためにUT1-UTCが+0.5秒程度にジャンプする。差が-0.2秒台で早々と挿入されて+0.7秒台にジャンプすることも、-0.6秒台になってからようやく挿入され+0.3秒台にジャンプすることもあった。しかし、差の絶対値が最大0.7秒台となることはあっても(1972年の導入直後の初期状態を例外として)0.8秒台にはならないように運用されてきている ⇒[18]。これはDUT1が0.8秒を超えないようにするというCCIR勧告460-2[38](現 ITU-R勧告TF.460-6[39])とも合致している。

この調整は、国際地球回転・基準系事業(IERS。国際観測を実施)が決定する[40]。実施日は日本標準時の月の1日とされ、年12回の可能性があるが、第一優先が1月1日又は7月1日、第二優先が4月1日又は10月1日で[41][42][43]、これまでの実際の運用では第一優先の1月1日又は7月1日だけで間に合っている。実施日の8時59分59秒の後に1秒が追加または8時59分59秒が削除される[44]

現行の協定世界時 (UTC) が始まった1972年当時は、世界時 (UT1) との差を±0.7秒以内に保つように調整することとされていたが、1975年1月1日から基準が緩和され、調整を実施しうる日も増やされた[45][46]
正の閏秒

今までに計27回実施された閏秒調整はいずれも、追加される1秒(正の閏秒、: positive leap second[44])による調整で、日本時間の1月1日または7月1日に1秒が追加された[3]

実施日の8時59分59秒の直後に、通常であれば存在しない8時59分60秒を追加して[44]、時間を1秒だけ遅らせる仕組みである。

実施例[3]→ウィキニュース

2006年1月1日8時59分59秒の1秒後が、

2006年1月1日8時59分60秒、ここで1秒追加されて次が

2006年1月1日9時0分0秒となった。


負の閏秒

2019年5月までに実施例は一度もないが[3]、削除される1秒(負の閏秒、: negative leap second[44])による調整方法も次のように定められている。

実施日の8時59分58秒の1秒後に通常なら毎日存在する8時59分59秒が削除され、9時0分0秒とされる[44]。つまりは8時59分59秒を飛ばして、時間を1秒だけ進める仕組みである。
時刻情報サービスでの対応
協定世界時と日本標準時

日本では、総務省が所管する(担当部局課は国際戦略局技術政策課)[47]国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT) 電磁波計測研究所の時空標準研究室が協定世界時 (UTC) を高精度で生成し ("UTC (NICT)")、これに9時間を加えたものを日本標準時 (JST) として提供している[48][49]

日本標準時では、閏秒による調整のタイミングは、実施日の8時台の最後(午前8時59分)となる。


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